26話 人ならざるを切り伏せて
今回も結構ギリギリです。
何という悲劇、丁度終わった所で、まさかの魔王乱入である。しかも魔王は20歳位の女性である。意外。そして何より、俺達は武器も防具も持っていない、なんせ下着姿だ、防御力も攻撃力も無い。
「あう…ご主人様…」
ミーナは俺の背後に隠れてしまう。はぁ、こんな格好で戦えるか!!俺は取り敢えず魔力錬金で俺とミーナの上着を創り出す。服とか着てる暇無いし、羽織れる上着で十分だ。
「はぁ、まず魔王が時空魔法使えるとか聞いてねえし…」
「そもそも時空魔法でこんな事をするんじゃないわよ!!」
何だか魔王はご立腹の様だ。ん?側近の男は…ロリコンか、殺すわ。
「なあ、その男殺していいか?」
「はぁ?あんたなんかに魔族を倒せるわけないでしょ?しかも武器も無いのに」
「へぇ…武器もない相手にビビって逃げるのが魔族か…」
「上等よ!!ネロス、やってやりなさい!!」
え、チョッロ。すげえ扱いやすいなこいつ。魔王の言葉に、ネロスと呼ばれたロリコンが歩み出て構える。ん?武器使わねえのか?
「お前その剣使わねえの?」
「年配者に対してその口調は無いのでは?」
「流された…orz」
と言いながらも俺は手にヒヒイロカネ辺りでできた刀を創り出す。
「これなら対等だろ?」
「…いいでしょう」
ネロスは腰に差した剣を抜く。見るからにヤバい魔剣だ。
「うわぁお…良く切れそうな剣…」
「この剣は魔剣エクスターミナル、我が主より頂いた魔剣です」
「ご主人様、大丈夫ですか?」
ミーナが心配そうな表情で見つめてくる。あれ?MPが回復した。
「安心しろ、お前のご主人様は強いからな」
「…自らの力量も測れぬようではデゼスプワール様は勿論、私を倒すことすら叶いませんよ」
言うが早いか、ネロスは一瞬で視界から消え、背後に突如気配が現れる。俺は時空魔法でミーナを部屋から宿屋へと戻し、ネロスの剣の一撃を食らった。
「いってえな!!俺怪我したことあんまりねえんだよ!!斬るな!!」
理不尽な事を叫びながら俺は新しい刀をもう片方の手に創り出す。
「…刀の数を増やしても、使いこなせなければ意味が無いッ!!」
俺はネロスの攻撃を右手の刀で受けるが、刀ごと切り裂かれる。うっわいてえな。
「だから痛てぇだろうが!!」
俺は左手の刀を投げつけるが、いとも容易く弾かれる。
「この程度ですか」
俺の喉元に魔剣の切っ先が向けられた。
「興醒めですね」
「おいおい、相手を倒してから言えよ…まだ勝ちは決まってないだろ?」
「…そうですね」
剣が突き立てられ、喉からは血が吹き出す。ああ、これで終わりか…悪いことしたな、ミーナ…皐月のやつ、来世で絶対殺してやる…
俺の人生はそこで途切れた。
「…と思うじゃん?」
俺はネロスの背後から絶雪牙を繰り出した。絶雪の蒼白い刀身が魔族の肉体を貫き、赤く染まる。その様子に、デゼスプワールとネロスが同時に叫んだ。
「「なっ、貴様、何故生きている!?」」
「答えは簡単、そもそも死んでねぇんだよ」
俺はネロスを斬り裂いた。
「ぐぶぅ…そんな、何故…」
「感覚操作ってスキル知ってる?」
種明かしをしよう、まず俺がカジノで手に入れたアレ、正体はなんと媚や…もうわかるな?アレでミーナを相手に感覚操作スキルのレベル上げをしていた。実はあのスキル、レベル一では効果がない。よってレベルが上がらなかったのだが、媚や…コホン。を使った事でレベルが大幅に上がったのだ。
そしてそれを使ってネロスとデゼスプワールの五感を操作、俺の幻覚と戦っている間に俺はミーナと一緒に宿屋へと戻り、ミーナは待機させて俺は絶雪と漆黒のマントを装備して来たという訳だ。
「お前らが俺より強いのは分かるけどさ、ステータスだけで勝てる相手ってそんな居ないと思うんだよね」
「そんな!?ネロス!!」
「申し訳ございません…デゼスプワール様…」
そう言ってネロスは倒れた。HPは残っているので死んではいないはずだ。がしかし、デゼスプワールの目にはそうは映らなかったらしい。
「よくもネロスを…!!」
「ちょタンマタンマ、死んでねぇよ!?」
「ここまでしておいて白々しい!」
デゼスプワールがレイピアを抜き放ち、鋭い突きが俺をかする。痛てぇ…あ、心頭滅却すればいけるわ。痛くなくなってきた。
「俺魔王様と戦うような戦闘力無いけどな」
「ふざけるな!!真剣に戦え!!」
俺はデゼスプワールの突きを避け続ける。まともに戦って勝てるビジョンが浮かばない…仕方ない、アレをやるか…どれを試すかな〜
「これにしよう、狂い死せる色欲の嬌声よ、咎人の罪に罰を与えて無欲を与えよ…大罪魔法『色欲』」
詠唱が終わると同時に紫とピンクの中間辺りの色の靄が漂い、デゼスプワールを包み込む。
「何を…はぁぅ!?」
「お、やっぱりそっち系か…これって実は最大の拷問だったりするんだよな…って聞いたことがある」
「な、何したのよ…」
デゼスプワールは上気した顔でこちらを見上げる。俺が賢者タイムじゃなかったら籠絡されていたかもしれないな。
「んー…殺すのも可哀想だし…かといってまた敵対されるのも面倒だから、その部屋で勝手に反省しといてね」
「ま、待って!質問に答えなさい!!」
声を無視して部屋を出ていった…瞬間、嬌声が響いた。
「ご主人様…何をなさったんですか…?」
「ん?あー拷問の一種?」
「…ご主人様?」
ミーナが満面の笑みで睨んでくる。あー…これはマズイかもしれない…
「ミーナ?これは正攻法では叶わないと思ったから仕方なく」
「ご主人様の変態!!」
俺の絶叫が夜の宿屋に、いや、バレリアの夜空に響き渡った。
やりすぎました。




