20話 アーカルム93世またの名を…
「よし着いたぞ、王都だ」
「んん…ご主人様、到着ですか?」
ミーナが俺の腕の中で目を擦る。今は朝だからな。俺達はあれから飯時以外はずっと馬車を走らせ続け、俺は四天王に回復魔法をかけるために栄養ドリンク改を飲んで徹夜、ミーナは俺の圧倒的安定感に眠ってしまった。
そして颯太、アイツは寝るどころじゃなかった。朝まで転がり続け、今は疲労で死にかけている。
因みに栄養ドリンク改だが、疲労回復とMP回復の効果があった。HPの方は減ってないので分からないが、回復すると思う。
「美輝ぃ…お前いつか殺す…」
「わはは、時間短縮できて良かったじゃないか」
「やめろキ○ト君」
「まあまあ、ハイヒール」
「お、お前回復魔法とか使えるのか」
「よし、着いたからじゃあな」
俺は颯太を放り出した。
「っておい!!」
「四天王!!」
「「「「ヒヒーン!!」」」」
ズドドドド…俺達は王都へ走っていった…がしかし、ヴォルーシャに乗った…?纏った?颯太に追いつかれた。
「おいちょ待てよ」
「ブッ、やめぇやw」
不意打ちだ、笑ってしまった俺を責めないでくれ。
「いいだろ一緒に行っても」
「いやだ、面倒事の予感しかしない」
「…ちっ」
そんなこんなでやっと颯太と別れることができた。
「よしよしミーナ、もうすぐ着くぞ」
「ご主人様、撫でてください…」
「よしよし」
これがもう少しするといつもの毒舌少女か…少し、かなり少し、とても少し残念だ。
そしてミーナを愛撫(意味浅)していると、王都の門に着いた。
「止まれ!名を名乗られよ!」
「ゴールドランク冒険者のミキ・オオシタだ、王の命によりここへ来た。身分証明はこれでいいか?」
俺は金色のギルドカードを見せる。
「通ってよし!」
門がゆっくりと開いたので、馬車を歩いて入らせる。そしてその中には…
王宮に近づくにつれて高くなる、扇形の街があった。どこも活気に溢れ、ここが王都であることが分かる。
さてとまずは…
「ここに家を建てるか!」
「…ふえ?」
ミーナが間の抜けた声を上げた。
そして馬車を預けてしばらく奥へ行くと…ん?あれおっかしいな…見知った看板があるぞ?中に入ってみると…
「いらっしゃいまs…美輝じゃねえか」
また同じ台詞か…お前はNPCか!!そこにはフカセ商会会長、深瀬大輝がいた。こいつ、マジ何の能力だよ…
「…何でここにいる、俺は馬を全力で走らせてきたんだぞ?」
「ああ、俺のスキルだ」
やはりスキルらしい。
「何のスキルだよ…」
「それは言ってもいいな、建築スキルだ。それで車?みたいなカラクリつくって、それで来た」
「この店もそのスキルで建てたと」
なるほど、それなら5日かそこらで店を建てれた理由も納得だ。
…ん?もしかしてこれ、俺のステータスのLUCが生きてるのか?すげえいいタイミングじゃないか?
「なあ、俺達にも家建ててくれないか?ここに家を建てようと思う」
「あー…確かにここなら北大陸の中心だしな」
え、知らなかった。どうやら大輝は商人になるために大分勉強したらしい。
「分かった、適当な所に建てとくわ。金の方は…」
「大金貨20枚だ」
「おう…一回払いか?」
「おう、いいぞ」
「2億クランの豪邸か…郊外になるかもだけど、いいか?」
「おう、いいぞ」
さて、後は特に無いな。家がいつ出来るか楽しみだ。
「じゃあ楽しみに待っとくわ、俺は王に呼ばれてるから王の城行ってくる」
「分かった。はぁ…ホントに王道チートしてるのかよ…夕方ここに来いよ。それまでに仕上げとくから」
うおマジか、早すぎるだろ。
「分かった、じゃあ行ってくる」
俺はフカセ商会を後にした。
そして王城である。
「止まれ!何用だ!」
「国王に呼び出されたミキ・オオシタというんだが…」
「失礼した、通っていいぞ」
ギルドカードを見せたらあっさり通してくれた。偽造とかないんだろうか?対策してあるのかもな。
そして真っ直ぐ進むと大きな扉があり、その奥の部屋には王が座っていた。
「おお、お前があの竜を倒した新人冒険者か!んー思ったより冴えない顔だな…って美輝じゃん!?」
何でだよ…本当に、これは予想外過ぎて苦笑いしか出てこない。
「俺はアーカルム93世、またの名を大村皐月だ!!」
ズビシッ!!
「いてぇ!!な、俺王様だぞ!?今は!!」
「ご主人様!国王に何を…」
「あー大丈夫だミーナ、コイツ俺の知り合いだから、前世の」
周囲にどよめきが起こる中、俺は皐月に話しかける。
「んで、何でお前がこんな所で王様やってるんだ?」
「いや、お前が滝に落ちてくのを助けようとしたら俺が後ろで滑って蒼太と絢香と3人で落ちて…気がついたら生まれ変わってた」
「アホかてめえは!!」
颯太がいたのはコイツのせいか!!
…にしても、何で皐月だけ何の特典も無しに転生したんだ?それも一から…何でだろう。
「取り敢えず、お前が王だというのは分かった、話って何だ?」
「あ、そうだ、冒険者ミキよ、この度は北の竜を倒すという偉業、大儀であった」
うわ、全然似合わねえ。猿が演説してるぐらいの違和感はあるな。
「よし、本題を言え」
「魔王倒してくんね?」
「嫌だ」
「デスヨネー」
流れる様に会話が終わった。
「ま、いいや。あ、因みに魔王って13人いるから多分どっかで出会うし、気が向いたら倒してくれると助かる」
「嫌だって言ったよな!?」
「マジかよ…そんでここから一番近い魔王はデゼスプワールって言って…」
「分かったよ!!やればいいんだろ!?」
「おう、ありがとな!!」
皐月はニカッと笑った。俺がこの世界で会いたくないやつトップ3に二人も会ってしまった。ホントに、だからこいつは嫌なんだよ…こういう時絶対譲らねえし…
「話は以上ですね、帰らせていただきます」
「ん?いや話はまだ…」
「本日はありがとうございました」
「え、ちょ、ま…えぇ……」
俺は皐月を放置して城を後にした。ああ、新しい家で今日はゆっくり寝よう。
家に帰って寝る…( ゜д゜)ハッ!これはやはり…あの展開しかないな…




