12話 凶星
凶星っていうタイトル、これも伏線です。
「アルセイド、うどんあるか?」
「うど…なんだそれは?」
「知らないならいい。」
そんな訳の分からない会話をしながら俺達は雪に塗れた山を登る。時折襲いかかるミミックベアを跳ね除け、俺達は山頂付近を目指す。
「あー…あったかいうどんが食べたい…何故この世界にはうどんがないんだ。いっそ作るか?」
さて、俺の特製うどんに欠かせない白だしはあるだろうか。
「ん?なんだアイツ?」
「竜星虫だ、竜の体に住む寄生虫、竜に寄生する代わりに一部が外に出て竜を守る。」
「そんなのいるのか。よし、行くぞ!!」
「待て!竜星虫は…」
アルセイドが止めるが無視だ。今の俺のステータスはアルセイドを超えている。
鞘から抜くと、絶雪は雪と太陽の光で煌めき、蒼白い光から蒼に近い光を放つ。
そしてその刃先が竜星虫に触れた瞬間!!全身の肌を黒煙が焦がす。けたたましい音と共に。
「大丈夫か!!」
「自爆系かよ…厄介だな。」
俺は探求者先生の魔法を起動し、遠距離から攻撃する事にする。
「アイスボール」
俺の言葉に反応して、小さなスーパーボール程の氷の塊が無数に浮かび上がる。
「そんな小さなアイスボールで、何をするつもりだ?」
「まあ見てろって。」
俺は氷の一粒一粒を別々の竜星虫に狙い撃つ。そして氷の塊は竜星虫を…
貫通した。
「え?」
次の瞬間、全ての竜星虫が爆発したことにより大爆発が起こる。
「本当はこんなに強かったのか?」
「いや、三日で強くなった。」
「…私なら毎日ミミックベアを狩り続けたとして、半年でレベルが1上がるか上がらないかだ。」
…マジか。幸運と経験値アップ混ぜたら素晴らしい効果があるのか。
「ま、そこは強さの秘訣って所か?コツがあるんだよ。言わねえけど。」
「…そうか。」
深追いはしないらしい。
「んじゃ、さっさと竜の所まで行こうぜ。明後日までしか時間が無い。」
「明後日…成程な。」
アルセイドがフッと鼻で笑った。あーこいつ気づきやがった。そんでなんか失礼な事考えやがった。
「…。」
俺は結局何も言えず、無言で山を登る。竜のねぐらまで、遠回しにロリコンだといじられ続けた。
「…んで、ここか。この奥か。獣くせぇな…おえぇ…」
「気を引き締めろ。竜は手強いぞ?」
「分かってる。」
俺達は真っ暗な洞窟に向かって踏み出した。
「ライト!!」
俺の手元に光るオーブが現れる。
「便利だな。君は使い道が多そうだ。」
「やめて!?俺人間だか…ら…ん?人間なのか?俺。」
暇魔神だったわ、忘れかけてた。
つーか種族暇魔神のボーナスとか無いのかね?ステータスはもしかして暇魔神のボーナスとか…?
「…見ろ。」
「…ん?」
突然、アルセイドが立ち止まる。行き止まりだ。
「引き返すか。」
「待て!竜のねぐらは一本道だ!!今竜は留守と言う事…つまり…!!」
何だ?何なんだ?と思っていたが、俺はすぐに理解する。
「なんだこの地響き!!」
「くっ、追い込まれた!!逃げ場が無いぞ!」
この部屋の唯一の出口から、翼を持った竜が現れる。
「マジかよ。」
「構えろ!!」
アルセイドと俺が構えると同時に、ドラゴンがこの狭い部屋で咆哮を響かせる。さあ、戦闘開始だ。
絶雪を抜かないまま飛び上がり、竜の顔の前に浮く。といっても、すぐ落ちるけど。
落ちる前に絶雪を抜き、迫る竜の牙を斬り裂く。
「居合、絶雪牙!!」
絶雪牙は居合斬りではなく、居合突きだ。鞘から刀を引き抜く勢いを殺さず、前への推進力に変える。絶雪と竜の牙がぶつかり、火花を散らした。
しかし、竜の牙は絶雪に対抗している。なんて硬度だろう。
俺と竜は互いに弾かれ、体格差で俺は吹き飛んだ。そして竜を弾いた隙を狙ってアルセイドが飛び込む。
「セイクリッドソード!!」
アルセイドの剣は竜の首と胸関節部分辺りに命中し、血が吹き出す。お、凄いな。10メートル位離れてても血吸うんだ。竜の血は絶雪に吸い込まれていく。
「…魔剣か?」
「惜しい、妖刀だ。」
アルセイドばかりにいい所を取られてたまるか。俺は岩壁にめり込んだ体を引き剥がし、絶雪を構えて竜に向かって走り出す。
「てやぁーっ!!壱ノ太刀ッ!!」
俺の斬撃を竜は爪で受ける。しかし、龍の血を吸った絶雪は強化されており、竜の爪を切り落としてしまった。あ、深爪したなこいつ。
「弐ノ太刀!!」
この隙を逃すまいと俺は畳み掛ける。竜の胴体に何十本も赤い横縞が出来上がる。竜が怯んだ今、トドメを刺す。
「絶雪牙!!」
絶雪は豆腐でも刺すかのようにあっさりと竜の首に入っていく。そして…
「参ノ太刀ィ!!」
俺はその状態から横向きに絶雪を振り、大回転斬りを繰り出した。竜の首を切り落とすまではいかないまでも、首筋はぱっくり裂けて血が吹き出す。
しかし、竜は倒れず、まだ腕を振り上げる。え、マジで?
「セイクリッドスラッシュ!!」
突如飛来した斬撃で竜の頭部が切り裂かれ、竜は絶命した。俺は後ろを振り返る。
「君にだけいい顔はさせられない。」
俺はつい、アルセイドを睨みつけた。この野郎。




