8話 他人を心から信頼するのは人間には困難である
新キャラ登場します。
皆さんが楽しんで見られているのか、心配になってきた。文章力皆無だし。
「で、どうやって助けに行くの?みんなの居場所も分からないのに」
「それは、エミリアの答え次第だな」
「私の?」
「ああ、精霊の事と、この土地のことだな」
「?」
エミリアは分からないらしいので、丁寧に説明しよう。胸ポケットからメモ帳と鉛筆を取り出す。
「じゃあ、まずは精霊の事だな」
「うん」
「質問1、精霊には共通して苦手なものはあるか?」
「共通して?」
「そうだ」
「うーん・・・・ない・・と思う」
「個人個人では?」
「それはあるよ、私の相棒は辛いものが苦手」
「なるほど」
これはハズレ。次だ。
「質問2、精霊に天敵はいるか?」
「いないわ、精霊は絶対よ。誰にもその存在を脅かされることはないわ」
これも違う。
「質問3、精霊が災いを起こせない存在はいるか?」
「・・・神様とか?」
「それ以外で」
「うーん・・・・ううーん?」
これでもないか・・
「質も・・」
「待って!」
「どうした?」
「あったわ、えーっと・・そう、精霊王よ!」
「精霊王?なんだそれは?昨日の話にはなかったぞ」
なんだか嫌な予感がする。
「精霊の王よ、全ての精霊は王のもとより生まれるの。つまり精霊のお母さんね。精霊たちはみんな精霊王が大好きなの」
「・・・」
ビンゴだ。ビンゴなんだが、
「おい・・」
「何龍一?って、ヒィィィ!?顔怖!!どうしたの!?」
「どうしたも、こうしたもあるか!なんでそんな超重要情報を言わねーんだよ!!」
「?なんで精霊王が関係あるの?」
こ、こいつ、マジで言ってんのか?精霊の親だなんて万が一、人質にでもされたら精霊なんぞ気にせずにやりたい放題できるんだぞ。分かってないのか?
「・・・精霊王が人質になっていたら?」
「そんなことありえないわ」
「もしもの話でいい。精霊王が人質になっていだ場合、精霊は犯人を攻撃するか?」
「・・・・・しないんじゃない?」
この事件の全貌が見えてくる。十中八九間違えないんだが、あと少し気になる点を聞く。
「質問4、お前らは里の外に出るのか?」
「あ、続けるんだ」
「いいから答えろ」
「うん。えーっと、出るよ狩りの時とか、物を売りに行く時とか」
「それはどこだ?」
「近くにある街のお店、そこの店主さんしか買取手がいないの」
「街の名前は?」
「アグーダの街」
次が最後の質問だ。
「質問5、この付近で、国に属さない何かはあるか?」
「・・・何かって?」
「何でもいい。組織団体、宗教。人がいる、できるだけ大きなものだ」
「えー?わかんないよー」
「国から独立している、何かでもいい」
「だから、わからない・・・あれ?独立?」
「どうした?」
「独立・・・独立・・・・・・・そうか、わかった!!独立都市アグーダよ!!」
「独立都市?」
”独立都市アグーダ”
通称アグーダの街。それは王国と帝国の国境に作られた都市で両国の平和の証とされており、互いの国の商人が行き交うとても賑やかな街だが、水面下で互いが互いを牽制するがために、結構町中でもいざこざが多い。そのため、割りかし狭いアグーダの街の治安部隊は荒くれで腕っ節が強く人数が多い。
ここまで聞いた俺は確信した。ここだ、間違えない。
「エミリア、アグーダだ。ここにみんないるはずだ、間違えない。」
「なんで?なんでわかるの?」
俺は襲撃者の特徴を話した。よく訓練されている事、人数が多い事、腕っ節が強い事。そして、
「私たちを知っている?」
「正確には里の位置をだがな」
「そんな事、外では言わないわ」
「お前がそうでも、他人がそうだとは限らない」
「ええ!?そんな事をしたら私たちが危険になるのに!?」
何を驚いているのやら、人の口に戸は立てられない。
この世から、うっかりやここだけの話などという言葉がなくならない限り、秘密を隠し通すのは無理だろう。
「この世は、お前が思っているほど優しくはないぞ」
「えー」
「とにかく、アグーダだ。間違えない」
「わかったわ。で?」
「で?とはなんだ?」
「作戦は?」
「そんなものあるわけないだろう」
「ちょっと!?さっき、思いついたって言ったじゃない!?」
「今から考える」
エミリアからさらに不満が出るが、無視して思考の海に沈む。
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「ちょっと!・・・もう!」
龍一はまた黙り込んでしまう。考え事している時の癖なのか、顎に手を当てている。彼は1度考え事をしだすと長いし、全然気づかない。さっき抱きしめられた時だって、4回ぐらい叫んでようやく解放してもらったし・・・。そのことを思い出し、少し顔が熱くなる。
「バーカ・・・」
頭を撫でられていた時、私は姉のことを思い出していた。姉もよく私の頭を撫でていた。
私には両親はいない、幼い頃に死んでしまった。それ以来、姉が親代わりだ。姉はいつもニコニコしていて、優しくて、料理もおいしい。それに妹である私を守ってここまで育ててくれた。精霊にも好かれてたし・・・。
「お姉ちゃん、無事かな・・」
と、ぼやいていると、
ガサリ
と茂みで音がした。私は反射的にナイフを手にする。
「誰だ!!」
もしかして、敵?私は、ちらりと龍一を見る。相変わらず微動だにしない、すごい集中力。
って感心している場合じゃない。
「龍一」
「・・・」
「龍一!」
「・・・」
もう、なんで気づかないの!信じられない!
そうしている間にも、茂みの音が大きくなっていく。
そして、
「エミリアお姉ちゃん!」
「グフッ」
突然だった、茂みから飛び出したものはすごい勢いで私にぶつかってくる。何か硬いものが鳩尾を直撃し、倒れてしまう。
「い、痛い」
「エミリアお姉ちゃん!無事だったんだね!」
「え?この声、まさか、サキ!?」
「そうだよ!」
サキは里で最年少のエルフで長老のひ孫だ。1人っ子で、私の家の隣で両親と住んでいる、元気盛りの女の子。
私とウマが合うらしく、よくなついている。
よくサキの両親はサキのことを落ち着きがないと言っていたが、この歳の子供なんてこんなものだと思う。
「無事なのは当たり前でしょ、私は里の外に居たんだから」
「あ、そっかぁ」
「はぁ、相変わらずねサキ」
私はサキを立ち上がらせ、土を払う。ついでに私も。改めてサキを見る。生きている里の人を見て少し嬉しくなる。
そうだ、サキに里の事件について聞かなければ。
「ねぇねぇ、エミリアお姉ちゃん」
「どうしたの?」
「人間がいる」
「え?あ!!」
サキは龍一の事を見ていた。いや、睨みつけていると言っていいほどだ。マズイ、もし襲撃者が龍一の予想通りアグーダの街の人たちなら、今サキの人間への好感度は最悪と言っていいだろう。龍一は関係ないことをサキに伝えなくては。
「サ、サキ!」
「どうしたのエミリアお姉ちゃん?」
「そこの人間はいい人間よ」
「・・・うそだよ」
「嘘じゃないわ」
「人間は悪い奴だって、みんな言ってるよ」
「それは・・」
確かに、私たち亜人は人間達から迫害されている。それはまぎれもない事実だ。
だが、彼は違う。
異世界から来た人間で、私を見ても蔑んだりしなかった。
私が異世界のことで質問したことには、なんでも答えてくれた。
私が落ち込んでしまった時には、気遣ってくれた。
何より、彼は精霊によって保障されている。
そのことを説明したが、信じてもらえない。そもそも、異世界から来たというところでもうダメだった。異世界の存在を知らない相手に、見たことも聞いたことのない所を説明をしろというのが、土台無理な話だった。
私たちは、いつの間にか意地の張り合いになり、言い争いになっていた。
「エミリアお姉ちゃんのバカ!!もう知らない!!」
「あ、ちょっと!サキ!戻って!」
サキは走り出し、森に入ってしまった。サキは子供であるが、少し頑固な部分もある。1度こうすると、決めた時の行動力は凄まじく、誰が何を言っても止まることはない。これに関しては、遺伝的にそうなのだろう。彼女の両親も似たような性格なのだから。
なので機嫌が悪くなると、それがとことん長引く、ひどい時には機嫌が直るのに丸4日かかったこともある。
こういう時はほっとくに限る、一人になれば頭も冷えるだろう。
ふと、隣を見る。
「・・・・まだ、考え事してるし」
そこには最後に見た時と全く同じ姿勢で、葛城龍一は立っていた。
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「こんなものか・・・」
救出作戦はほとんど完成した。この作戦の重要な点は精霊王の存在だ。そいつを助けることができれば、この事件は万事解決する。顔を上げると、エミリアはいなかった。どこへ行った?
「おーい、エミリアー?」
しばらく歩いていると、エミリアを見つけた。どうやら穴を掘っているらしい。掘っていると言っても、魔法を使って
地面に穴を作っていると言った方が正しい。
「魔法はそんなこともできるんだな」
「あ、ようやく終わったの」
「ああ、大まかな作戦だが」
「聞かせて、聞かせて」
俺はエミリアに作戦の大まかな流れを説明する。
「なんか、私の仕事多くない?」
「当たり前だ。今回の作戦は、戦闘は避けられない。お前は前衛、俺は後衛だ。前衛の仕事が多いのは当然だろう」
「そうだけどさー」
「お前みたいに魔法が使える奴がもう1人いれば少しは違うがな」
「え?いるよ」
「・・・・は?」
え・・もしかして、生き残り?ここで?・・・・・いや、よく考えたらラッキーだ。ここでエミリアのような魔法の使い手が増えるのは嬉しい、作戦の成功率が上がる。一刻も早く合流して戦力になるか知りたい。てか、いつエミリアは生き残りを見つけた?
「よし、会わせろ」
「ゴメン、どこ行ったかわからない」
「・・・どうして?」
「ケンカしちゃって」
「アホかーー!!」
なんで!?なんでケンカした!?
「だって、龍一の事悪い人間だっていうんだもん!確かに人間は悪い奴が多いけど、龍一は違うって事伝えたかったのに・・」
「いや、それは・・・」
エミリアの気持ちはありがたいが、会った事もない奴をいきなり信用してくれ、と説得するのは無理だ。
信用というのは気持ちだ。気持ちというものは、その人の、会話、態度、意識など様々な事があって生まれてくるものであり、他人がどうこう言って変わるものでもない。
ウマが合えば、お友達。会わなければ、他人。
所詮、自分の主観でしかないのだから、そんなもんだ。
「とにかく、合流をしよう。まだ、近くに襲撃者達の残党がいないとも限らない」
「嘘!?」
「嘘じゃない、そいつはどこにいった?」
「え、えっと森の中に入っていったんだけど」
「・・広すぎるな、もっと絞らないと」
「・・・もしかして湖かも」
「湖?」
「あの子が好きな湖」
なるほど、手がかりがないよりマシだ。
「行くぞ、案内してくれ」
「う、うん」
俺はエミリアに連いていき森の中に入っていった。