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現実主義な男子高校生の異世界生活  作者: MONSTER
第1章  エルフ編
6/30

5話   人間、時には夢を見たり現実逃避することも必要である

まどろみの中、おそらく夢を見ているだろうということがわかった。なぜなら、学校にいるからだ。

俺は学校で居眠りはしない。

状況を確認していると、隣にいる奴から声をかけられる。

声をかけてきたのは、例のクラスメートの川上駿一。サッカー部所属のキーパーだ。ちなみに、オタクと呼ばれる人種。

こんな性格の俺を友達だと言ってくれる数少ない奴だ。

アニメやゲームにあまり興味のない俺が、こいつに絡まれている理由は、


俺に  ”二次元の良さを伝えたい”  だそうだ。


おかげで、アニメを見たりゲームをやったりしたことがないのに、他人に大まかな概要を説明できるぐらいまでになった。


『龍一、見ろよこれ』


と言って差し出してきたのは、漫画だった。表紙を見る限り、ファンタジー物。


『なんだこれ?』

『異世界に転生して、主人公がハーレム作ったり、無双したり、内政したりする話、登場するヒロインがめちゃ可愛くてなー』

『そういうことを聞いているんじゃないんだが・・』

『俺のオススメのヒロインはな・・』

『・・・お前がそういう奴なのは知ってたよ・・』


いい奴なのは確かなんだが、こいつは基本的に人の話を聞かない。


『・・これ!』


と言って見せてきたのは、耳が長く、金髪でパッと見外国人のような見た目の少女だった。


『これは?』

『エルフのロムちゃん』

『エルフ?北欧神話に出てくるあの?』

『おいおい、龍一君。ここで元ネタを出すのはNGだぜ。』

『・・・・』

『睨むなよ、相変わらず冗談通じねぇな、お前』

『余計なお世話だ』


と言って会話を切る。


『そう言わずにな、貸すから読んでくれよ』


と言って川上は漫画を俺のリュックにねじ込む。


『おい、やめろ。お前が前に貸してくれた本、まだ10ページしか読んでないんだぞ』

『遅!?貸したの1週間前だよな!?』


川上は驚愕した顔をする。


『すまんな時間がなくて』

『そんなペースじゃいつ読み終わるんだよ?』

『読んだことがないジャンルだから予測がつかん』

『貸したの漫画だよな』

『そうだが』

『漫画読んだことない?』

『貸すときにそう言ったはずだが?』

『冗談だと思った』


俺はガックリと肩を落として、。


「大体、お前はいつもいつも・・・」

「あ、起きた?」


その声の聞いた瞬間、飛び起きた。

暗い、夜だ。辺りを見渡す、焚き火、こちらに注意を向けるために手を振るエミリア、他に周囲に人影もない、周辺には木が生えている。俺が倒れた場所とは違う、つまり彼女か何者かが俺を運んだということだ。

・・・なるほど。


「また助けられたみたいだな、ありがとう」

「また?」と、首をかしげるエミリア。

「水の事だ」

「・・ああ!そういうこと」と、言って腕組みして頷く。


いちいち、リアクションが大げさな奴だ。


「ねぇ、さっきは毒とかを受けてないのになんで気絶しちゃったの?」


その言葉を聞いて思い出した。今、俺はとんでもなく非現実的な状況にあるということを。

とにかく、この状況を打開するには情報がいる。目の前にある情報源を利用しない手はない。

そのためにも、友好的に接しなければ・・


「・・・人はあまりに大きな精神的負荷がかけられると、外部からの情報を遮断し、己の精神を守ろうとするんだ」

「??」

「・・・簡単に言えば、現実逃避をしただけだ」

「現実逃避で気絶しちゃうの?」

「規模が大きければな」

「???」


分からないのか・・まあ良い。それより、こっちからも質問だ。


「ここは?」

「ネブの森よ、エルフの隠れ里に向かっているの」


また知らない・・・隠れ里?


「おい、なんで行き先が決まっている。俺は家に帰りたいんだ。」

「え?どこよ?」

「だから日本だって」

「だから知らないって」

「それは知っているんだよ、ここは地球か?」

「地球?」


・・・やっぱり、地球を知らないか。


「・・この星の名前は?」

「星?」

「そうだ」

「知らない」

「・・・じゃあ、この大陸は?この大陸はなんと呼ばれている?」

「え?えーと、ゴンド大陸?あれ?アッガード大陸だっけ?」


認めたくないが、ユーラシアやアメリカという単語が出ないあたり、本当に異世界らしい。


「・・・わかった、もう大丈夫だ」

「ち、違うわよ。ド忘れしただけなんだから、本当は知っているんだからね!」

「勘違いしているみたいだが、別に呆れたからってわけじゃない」

「じゃあ、何よ」

「・・エミリア」


と言って俺は精一杯の真剣な声で言う


「異世界、もしくは平行世界という言葉に聞き覚えは?」


ーーーーーーーーー


聞きなれない言葉が目の前にいる男から出る。


「異世界?平行世界?何それ??」

「簡単に言えば、こことは違う別の世界があるという話だ」

「そんなものがあるの!?」


初耳だった。


「証明されてはいないがな」


と何だかうつむいてガッカリしたように言っている。

・・・もしかして


「あんた・・別の世界から来たの?」


すると、彼は目にも止まらぬ速さで顔を上げ興奮したように言った


「分かるのか!?」

「え、ええ。精霊が遠いところから来たって」

「また、不確定なものが・・」


と言って彼は再び考え込む。この人間はよく黙り込んで、思考を巡らす。


「・・・精霊とは?」

「精霊は精霊よ」

「いや、そうじゃなくて・・・・もっとこう、どういった存在なのかって」

「精霊は神の使いよ」

「今度は、神様かよ・・・」


彼はげんなりした表情で言う。


「ちょっと、精霊や神様を馬鹿にするなんて許さないわよ」

「馬鹿にはしていない、信じられないだけだ」

「あんた、精霊や神様を信じてないの!?精霊に興味を持たれているのに!?信じられない!?」


興奮して、立ち上がり彼に詰め寄る。


「おい、近い近い。そう興奮するな。第一、俺は別の世界から来たってお前が言っていたじゃないか」

「あ、ごめん」


そうだ、国が違えば信じるものも違う。精霊神教のリンガ王国の隣にある、ガルシア帝国は


”信じられるのは己のみ”


がモットーの国家だ。


「落ち着いたか?」

「うん」

「よし、じゃあ情報交換をしようじゃないか」


そう言った彼の顔は疲労困憊だった。

意外と難産でした。

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