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現実主義な男子高校生の異世界生活  作者: MONSTER
第1章  エルフ編
4/30

3話   なけなしの勇気が現状を変えることもある

投稿した後、自分の文章をスマホで確認していると妙に恥ずかしくなってくる今日この頃。

問1・・手に近接武器を持っている人を安全に無力化するにはどうすれば良いか?


回答1・・遠距離武器、または相手よりもリーチが長い近接武器で対処する。


問2・・問1の相手が、回答1で答えたそれらの行動を予測していたら?


回答2・・奇襲する。


以上、単純だ。今、俺は謎の生物のいるすぐ脇の草むらに身を潜めている。奴らに気付かれないようにUの字回りをして、この地点にいるが、今思えば草むらで他の生物に遭遇する可能性もあった。かといってあの状況で最短ルートでここに近づくには、これぐらいのリスクは仕方ない。

さて、ここからどうするのか。この状況での模範回答は、


1、俺が後ろから飛び出て奴らの注意を引いている間に倒してもらう。

かなり危険ではあるが、彼女の弓の腕前なら十分に可能だろう。俺という餌がある以上奴らも無視はできないはずだ。


2、わざと音を立てて、敵の気をそらす。

奴らがどのくらい音に反応するかいまいち分からんが、仮に成功した場合。俺はほぼノーリスクで彼らを助けられる。失敗した場合、即座に撤退や最終手段も考えなくてはいけないが。


3、俺が奴らを攻撃する。

除外。


こんなものだろう。ただし、実行できるのどれか一つだけだ。時間的猶予はないし、何よりここに潜伏しているのがバレるのが一番やってはいけないことだからだ。

俺は素早く2を選択し、このまま音を立ててもいいが念のため、今日の授業で使った裁縫箱を取り出す。そこから糸を取り出して、近くの草に結んで2、3周巻きつける。そして俺は、効果のほどを見るため奴らの近くまで移動する。余談ではあるが、この作業をしている間にも奴らは徐々に彼女らに近づいており、思ったよりも後方で音を鳴らすことになってしまった。

そして、糸を引っ張る。


ガサガサ


成功だ。効果を確認する。が、予想外のことが起きた。

なんと、弓を持っている彼女の方が音の出た後方を気にしだしたのである。

(あいつ、目の前に敵が迫っているのに後方に注意をそらすなんて、バカなのか!?)

思わず叫びそうになるが、冷静に考えれば、当然ちゃ当然である。敵の新手かもしれないのだから。

そのことにすぐ気づき、必死になって今後の展開を予想する。


陽動にひっかかったのは、敵ではなく本来なら援護するはずだった味方。

彼女はただえさえ、腰にハンデがあり、陽動のおかげで更に眼前の敵に集中できない。

間違えなく殺られる。目の前で。


躊躇うな、最終手段だ。この戦いは奇襲しなければ勝ち目はない。彼女が奇襲できない今、俺が肩代わりするしかない。靴下を脱ぎ、手頃な石を詰める。即席の近接武器の完成。


目の前の生物を見る。奴らを殺さなくてはいけない。緊張で手が震える、呼吸が荒くなっていく。当然だ、2時間ぐらい前まで普通の高校生だったんだから。それじゃなくても、普段の俺ならこんなリスクのある行動はしない。

故に俺はこんな経験をすることは慣れていないのだ。


だが、ここで彼女達を失うことがあったらそれこそ終わりだ。こんな見知らぬ土地で日本語を話せるやつはそう多くはない。

ギリッ、と口を噛み締める。恐怖を捨てろ。感情を押し殺せ。何かをするには何かを犠牲にするしかないのだ。

目を閉じて深呼吸をする、1回。2回。3回。

目を開ける。意を決して、力一杯糸を引く。


ガサガサガサ!


奴らの内後方の2体が後ろを向く、致命的な隙。死角が生まれた。俺は何も考えずに、その死角に向かって飛び出した。後方の2体が気づいてこちらを向く、だが遅い。俺は近くにいた奴の頭頂部めがけて石入り靴下を振り下ろした。

ゴスッ!と嫌な音がした。

その時の感触を俺は生涯忘れることはないだろう。よく、人の頭を割る描写をスイカやザクロなどと表現するが、まさしくそんな感じだった。しばらく、スイカ割りはしたくないというか、見たくない。

罪の意識はなかった、野生動物を殺してしまった感覚だ。

すぐに、意識を戻しもう一方を見る。そいつは襲いかかってくる寸前だった。

何も考えずに腕を振り上げる。うまいこと靴下は顎をクリーンヒットし、倒れる。

両方とも・・・・動かない。運がいい、最高だ。気分は最悪だが。

よし、クリアだ。初めての血と殴打の感触に吐きそうだが、最低限のことはできた。あとは、俺がこのまま後ろで弓の射線に入らないように隠れて威嚇していればいいだけ。実に簡単だ。

俺は、謎の生物たちを見た後、彼女を一瞥する。正確にはその後ろだったが。


奴がいた。


あの謎の生物が1匹いた。挟まれたと気付いた瞬間に俺は行動を開始した。すぐさま、草むらに飛び込む。

理由は簡単、


1、彼女の武器の射線に入る可能性があった事。

言わずもがな、危険であるから。ここからはスピード勝負、あの生物に包囲されている彼女が負ければ死ぬ。


2、彼女の後ろにいる生物に奇襲をかけるため。

最初に使ったUの字で回りこむ作戦をもう一度するためだ。武器も勇気も貧弱な俺は奇襲戦法でしか、奴には勝てない。後ろに出るのが、ベストだ。


草むらに入った俺はすぐに行動を開始した。この際多少謎の生物に追いかけられてもいい、とにかく彼女の後方の安全だけでも確保しなければ。間違えなく殺られてしまう。そもそもこの陽動作戦は、彼女の弓で奴らを殲滅することが、最終的な目標となるはずだ。

彼女の腰にしがみついている奴は相変わらず動かない。あてにしないほうがいい。

草むらに入って、目標地点を目指している俺に、彼女の怒号が聞こえてきた。どうも、見捨てられたと思われているらしい。誤解させて申し訳ないが、彼女には眼前の奴らに集中して欲しかったため、あえて後ろにいる脅威を伝えなかった。

まあ、やってしまったもんは仕方がない。後で生きていたら、説教でも文句でもなんでも聞いてやる。


俺が草むらからゆっくり出て馬車の方を見た時、ちょうど奴の背中が見えた。その先には弓を持っている彼女がいる。なぜか座り込んでいるが。傍らには先ほどまで彼女の腰にしがみついていた男、そのさらに先には先ほど彼女を襲っていた4匹が全て矢が刺さった状態で倒れていた。


素晴らしい。彼女はきちんと眼前の脅威を排除したのだ。ならば、あとは最後の詰めだけ。俺は忍び足で近づくと、両手で靴下を持ち奴に向かって一気に振り下ろした。

あの感触がまた手に伝わってきた。また吐き気が込みが上げてくる。

彼女が慌ててこちらを向く。

俺は一言、


「ここは一体どこの国なんだ?」


と言った瞬間に吐き気が限界を訪れた。

主人公の名前は次回明かされます。

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