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現実主義な男子高校生の異世界生活  作者: MONSTER
第1章  エルフ編
3/30

2話   他人がどう思っているなんて自分には分からない

今回は彼女の視点でお送りします。

弓を持っている女、エミリア・リンドバーグは焦っていた。目の前にはゴブリンが6体、しかも全員棍棒を持っている。

この時点でも、1対6。さらに、彼女の得意武器である弓は対多数戦に向かない。さらに、腰にやっかいな邪魔者がひっついて離れない、おまけ付き。

「ちょっと!離れなさい!」と、彼女は叫ぶが。

「誰が離すか!離した瞬間に見捨てる気だろう!これだから、亜人は信用できんのだ!」と、聞きやしない。

「このままじゃ、見捨てる云々の前にとも倒れしちゃうわよ!いいから離しなさい、逃げやしないわよ!」

そうして、言い争っている間にもゴブリン達が徐々に迫ってきている。

陣形も前方4体、後方2体と面倒な布陣だ。

本当にマズイ、と思わず冷や汗が出る。さっきはうまいこと1体で突っ込んできてくれたが、そんなこと何度も起こるようなことじゃない。集団で襲い掛かられれば一巻の終わりだ。反撃もままならい。こんなことなら、この男を助けなければよかった。この商人がゴブリンに襲われているところを見て、正義感からか思わず助けに入ってしまったのである。

颯爽と助けに入ったのはいいが、この腰抜け商人は腰にしがみついて離れないし、弓を放とうとすると絶妙な力加減で体を揺らしてくるのである。おかげで、全然当たらない。


「ギャ、ギャ」

「ギギャ」

「ギャー、ギャ」


完璧に舐められている。そう感じた。悔しい、普段ならこんなことはありえない。この男を気絶させてもいいが、後でどうせ文句を言われるのだろう。最悪の場合、暴力を受けたと言われ金銭を要求されるかもしれない。迷っている間にも、ゴブリン達は迫ってきている。

・・決めた。

この男を気絶させよう、文句を言われても逃げてしまえばいい。決めたら迅速に作業する。まずは、この男を気絶させて・・・・と、腕を振り上げようとした時。

ガサガサ、とゴブリン達のいる左後方の草むらで音がした。

新手?と感じ、警戒をする。ゴブリンなら対処はまだできるが、別の敵だった場合厄介だ。


ガサガサガサ!!


さらに大きな音がした。さすがに後方にいたゴブリン2体は、後方を見る。前方の4体は前進してくる。

ゴブリン達の陣形に隙間ができた。

その時だった、その隙間の間の草むらから見慣れない服装をした男が急にゴブリン達の間に飛び込んできたのだ。


「なっ?!」

「ギャギャ?」


と、双方がとっさのことで固まっている間に男は素早く左後方の近くにいたゴブリンの頭を白い何かで、殴りつけた。

ゴスッ!、ギャッ!!鈍い音と悲鳴がして、ゴブリンは地に伏せる。男はわずかに顔をしかめたが、すぐに右後方にいたゴブリンに襲いかかった。ゴブリンもすぐに反応し男に襲いかかった。が、男が振るう武器?の方がリーチが長く瞬く間にもう1体も倒されてしまう。

ここにきて、形勢が逆転した。4対2、数こそ不利だがはさみ打ちの状態になっている。

いける。私はそう確信した。が、男はゴブリン達を見てからこちらを一瞥すると、目を見開きすぐに近くの草むらに逃げてしまった。

あまりにも、一瞬すぎて何も反応できなかった。


は??何で???ここは、はさみ打ちで敵を仕留める場面じゃないの???


・・・・少しの混乱の後、私は理解した。彼は私が”亜人”だから助けるのをやめたんだ。

亜人は化け物だから、人間の形をした化け物だから、人間の真似事をしている化け物だから。


だから見捨てられた。


「ふっっっっざけんなーーー!!!!」と、私は怒りに任せて叫ぶ。

助けられて置いて虫のいい話だが、雑魚モンスターのゴブリンに舐められたり、腰抜け商人には信用されずに腰にひっつかれたまま離さないし、挙げ句の果てにはこちらが亜人だからといって逃げ出す奴にも会ってしまったのだ。

彼女も限界だった。俗に言う、堪忍袋の尾が切れたというやつである。

私は、腰にまだしがみついている奴の顔面に全力で肘をぶち当てた。


「フンッ!!」

「ごっへぇ」


商人は有無を言わさず気絶した。少しスッキリした。

私は目の前でオロオロしているゴブリン達を見る。

ゴブリン達の大きな目に私が映る。あまり人前には出せない顔をしていた。

矢を構える。


「私は!」矢を放つ、命中。

「化け物なんかじゃない!」矢を放つ、命中。

「あんな奴らと!」矢を放つ、命中。

「一緒にすんな!!」矢を放つ、命中。


全滅、わずか数秒の出来事だった。全てが終わって、私は地面に座り込む。

「ぐすっ、ぐすっ、うぅぅぅーーー」

急に涙がでてきた。悔しかった。亜人だからというだけで馬鹿にされて、化け物呼ばわりされるのも、きみがわるいと言われるのも、逃げ出されるのも、誰かを助けようとしても結局そうなる。うまくいかない。姉や里のみんなが言っていた通りだ。


彼女が一人で泣いていると急に後ろから、ゴスッ!、ギャッ!!っと妙な音が聞こえた。

慌てて後ろを向くと、そこには見慣れない服装をし、草むらに逃げ出したあの男が立っていた。

男は開口一番にこう言った。


「ここは一体どこの国なんだ?」っと。


その直後、男は顔を青くして草むらに行き吐いた。

主人公より早く名前が分かるヒロイン(予定)

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