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白黒昼迄夢現  作者: 朝霞ちさめ
第一章 積み重ねるべきは
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06 - 法則と謎

 初めて錬金術に成功させて以来、何度も何度も錬金術を実践し、僕はいくつかの法則を見つけていた。

 まず一つ目。比率が同じでも、材料にしたマテリアルの量によって品質が変わる。

 これは、『コップに一杯の水と薬草一つ』と『コップに三杯の水と薬草三つ』とかだ。

 前者の場合は僕がやると六級品がほとんどで、たまに五級品。後者で作ると六級品がほとんどで、七級品が混ざる。一度に作れる量は前者はポーション一つで、後者はポーション三つだから、一気に沢山作ろうとすると、品質が落ちる傾向にあるようだ。

 次、二つ目。完成品の量は、マテリアルの中でも特に重要なものの量に依存する、っぽい。

 毒消し薬やポーションの場合は薬草。

 これはつまり、『コップ半分の水と薬草一つ』で錬金をしても、一つのポーションが出来ると言う事だ。品質はかなり落ちて、八級品だったけどね。

 で、これはどこが限界なのかなと思ったら、コップに二割ほどの水があれば、とりあえず薬草一つと合わせてポーションが完成する。

 完成してしまう。

 いや、さすがに九級品だから、ポーションとしての役割はほとんどないんだけど、問題は水としての堆積だ。

 薬草一つで完成するポーションは、マテリアルとした水の寮に関わらず、コップに注ぐとなんと四割分くらいの液体になるのだ。

 うん、すごい増えてる。

 あと、六級品以上のポーションはなんか液体の風邪薬みたいな嫌な味がするんだけど、七級品はちょっと甘い程度、八級品は僅かに苦みを感じるだけで、九級品は全く味がしない。

 つまり、水として使えるのだ。飲んでも大丈夫だし料理にも使えるだろう。

 この事をお母さんに話したら、

『着眼点は良いけれど……えっと、カナエ。あなた、それで水を増やして何の意味があるのかしら?』

 と言われた。

 水が足りないときとかに使える大発見だ、と思ったのだけど、

『薬草一個で銀貨十七枚よ。コップに二割分の水を手に入れるために銀貨十七枚はちょっと高くないかな……』

 と指摘された。

 言われてみれば、確かに……。

 気を取り直して、三つ目。マテリアルは余分なモノを追加しても、錬金術自体は成功する。

 毒消し薬の場合は薬草と毒薬で錬金するのが一番なのだけれど、たとえばここに雑草とかを入れても、毒消し薬として完成するわけだ。

 流石に関係のないものを入れたりすると品質が下がることが大半だけど、薬草と水で作るポーションにニンジンを入れてみたら、六級品と五級品の比率が半々くらいになった。

 普段は六級品がほとんどでたまに五級品だった事を考えると、かなり跳ね上げていることになる。

 で、これについてもお母さんに話したら、

『ニンジン……? え? なんでそれを錬金して見ようと思ったのかしら?』

 と呆れられた。

 が、

『とはいえ、凄いわね。そうよ、錬金術は余計なマテリアルを追加することで、品質が大概は下がるのだけれど、たまに上がることがあるの。これを使って完成品の品質をある程度制御出来るようになると、もう一人前ね』

 と褒めてくれた。

 ちなみにお母さんもニンジンをポーションに使う事は考えた事が無かったようで、その場でお母さんは錬金を試してみていた。

 普段は三級品から二級品が作れるレシピだそうなのだが、結果はほぼ全てが二級品、希に一級品も混ざっているらしい。

 一体ニンジンの何が作用しているのかは解らないが、ともかくニンジンを混ぜることでポーションの場合は品質が上がるようだ。

 さて、四つ目。マテリアルとしては余分なモノを追加した場合でも、それが特定のレシピに成り得る場合、かつ完成品を曖昧にでも連想できる場合、別のものが完成する事がある。

 具体例としては、水と薬草と毒薬で錬金をする場合。

 水と薬草でポーション、その場合は毒薬が余る。薬草と毒薬で毒消し薬、その場合は水が余る。

 じゃあこれ、何が出来るのか? と思ったら、毒消しポーションだった。

 ポーションとしては六級品なんだけど、軽度の毒なら消せるらしい。

 例によってお母さんに報告すると、

『へえ。複合ポーション……え? 作れたの?』

 と驚かれた。

 割合を聞かれたので素直に答えると、お母さんもそのレシピで錬金、再現。

 お母さんが作ったらポーションとしては四級品に、代わりに毒消し効果はかなり薄くなっていた。

 要するに、錬金術におけるマテリアルの理想的な比率は、錬金術を使う人によって多少違うってことなんだろう。

 ゲーム的に考えるとレシピが同じなら結果も同じなんだろうけど、どっちかと言うと料理だな。

 ほら、同じ食材、同じ機材を使っても、全く同じ味にはならない、みたいな。

 で、それは逆に、お母さんにとってのベストの比率が、僕にとってのベストとは違う可能性が高い……という意味でもあって。

 自分で研究をしなきゃいけないようだ。

 というわけで、最後、五つ目。材料となるマテリアルは、『替え』が利く場合がある。

 そもそも錬金術において必要なのは、『主材料としてのマテリアル』『補助材料としてのマテリアル』『完成品のイメージ』の三つ、なんだと思う。

 ここではまたまたポーションを例に出すと、ポーションは『主材料:薬草』足す『補助材料:水』で『ポーション』が完成する。

 この時、主材料である薬草を変更する事は出来ないけれど、補助材料は若干違っても、似たようなものならば大丈夫、というわけである。

 具体的はジュースで試してみたんだけど、結果は普通のポーションと変わらなかった。味も含めてだ。

 そう考えると、液体なら何でも大丈夫なのかもしれない。試してみる気は無いけど、それこそおし……いや、止そう。なんかそれは考えるのも駄目な気がした。

 あ、でも味付きのポーション自体はいくつかの方法で作れる。

 一番簡単なのは錬金術を使わない方法で、例えばジュースにポーションを混ぜてしまえばいい。その分、ポーションは薄まるけど、ちゃんと全部飲めばポーション一つ分の効果は得られるし、品質は変わらない。

 一方で錬金術を使う場合は、ポーションを材料に、付けたい味の元になるものをマテリアルにする方法がある。こっちの場合はポーションが薄まらない……つまり、量は変わらないんだけど、ポーションの品質が落ちる。

 もちろんお母さんに報告したのだが、

『カナエ。あなたって結構、気が散るタイプなのね』

 と呆れられた。

 いやあ。だって気になるじゃん。やってみたくなるじゃん。

 やってみて成功したら楽しいし、失敗しても学べるし。うん、自分で言ってて子供の理論だな。ちょっと反省。

 尚、これらの法則のようなものを見出した後でも、未だに容器が突然出現する謎は解明できていない。

 便利だから良いんだけど……。

 あ、空になった容器を錬金したらどうなるかな?

 いやでも、錬金するにしても完成品が思いつかないよな。

 とりあえず試飲した八級品のポーション、の容器を鍋に入れる。

 何と錬金しよう。……薬草?

 とりあえず薬草も入れてみた。あとは……思いつかないな。

 いいや、錬金。

 何が出来るかな。瓶詰めの薬草……?

 ふぁんっ。

 錬金成功の音にも慣れたけど、あれ? 今完成品は思い浮かべてなかったんだけど、錬金できたんだ。

 何が出来たかな、と鍋の中を見ると、瓶が一つ。中には粉が入っている。コショウみたいだな。

 鍋から取りだし蓋を開けて、恐る恐る匂いを嗅いでみる。

 匂いは……特にしないかな?

 触っても大丈夫だよね?

 小さな匙を使ってほんの少量を取り出し、手の甲に載せてみた。

 特に変化なし。

 でもこれ、砂では無いんだよな。舐めてみれば解るかもしれないけど、何かも解らないものを舐めるのはちょっと。

 お母さんに聞いてみるか。

 お店の方に移動すると、丁度お客さんがお店を出て行った所だった。

「お母さん、良い?」

「ええ。……あら、それは?」

「僕も分かんなくて。お母さんなら知ってるかなって」

 瓶を差し出すと、お母さんは瓶を軽く振り、そのまま光にかざした。

 それで何かが解るのだろうか?

「これは……、何かしら。特に毒性は無いみたいだけど、薬性も無さそうだし。害はないけど益もない。なんていうか……良くわからない粉末ね」

 ふむ。

「じゃあ、失敗作みたいなものか」

「ええ。……ちなみに、これは何を錬金したのかしら」

「ポーションの空き瓶と、薬草だけど」

「ふうん。私はその組み合わせだと、瓶詰めの薬草になるのよね」

 あれ?

 それは……むしろそれが、僕の想像していたやつ、だよね。

 ってことは、僕の想像とは違うものが出来たってこと?

 どういうことだろう。

初日掲載分はここまで。

明日からの連載、よろしくお願いします。

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