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白黒昼迄夢現  作者: 朝霞ちさめ
第一章 積み重ねるべきは
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05 - 駆け出し錬金その結果

「カナエ! 今の音……」

 さすがに音に気付いたようで、お母さんは店を放置して部屋へと移動してくる。

 僕はそんなお母さんに、ガラスの容器に入った液体を差し出した。

「なんか、できた!」

「……驚いたわ。それは……何かしら?」

「さあ。一応、毒消し薬のつもりで作ったから、そうだとは思うけど……」

 どうなんだろう。

「私がもらっても良いかしら?」

「うん」

 僕は容器ごと液体を渡すと、お母さんは容器のふたを開けて手の甲に垂らし匂いを嗅いだ。

 すると、お母さんの目がすうっと細まり、次いで笑顔が浮かんでゆく。

「この、果物のような匂い。ええ、確かに毒消し薬として出来ているかもしれないわ。ちょっと試してみましょう」

「試すって……毒を飲む、とか?」

「流石にそれはリスキーよ」

 うん、よかった。

 じゃあどうするんだろうと思ったら、お母さんは棚から灰色の人形を一つ取り出した。

 人形……といっても、なんか可愛くはないな。大雑把に人の形はしているけれど。

「それは?」

「これは試験人形と言ってね。私の師匠が作って、私が譲り受けたものよ。その名前の通り、薬の効果を計ってくれる便利な人形なの」

「へええ」

 そんな便利道具があるなら最初から貸してほしかったんだけど。

 お母さんはその人形の頭に液体を垂らすと、液体に濡れた所を中心に急激に色が変わり、すぐにそれは周りに広がってゆき、遂には真っ白な人形になった。

 でも可愛くはない。

「凄いわね……。白。白か」

「凄いの?」

「ええ、凄いわ。というか、凄過ぎだわ」

 僕には他の例を見たことが無いのでわからないのだけど……。

「この人形は最初、灰色だったでしょう。そこに薬品を垂らした時、その薬品が人体に益……つまり傷を癒すだとか、毒を消すだとか、病を晴らすだとかの場合は、明るい色になるわ。傷薬のポーションは空色、毒消し薬は薄い黄色、病を晴らす薬は薄緑色って感じね。逆に害のある場合、毒とかならば、暗い色に染まるの。色が濃くなればなるほど、害が強くなる。真っ黒になれば超強力な毒薬ってわけ」

 なるほど、リトマス試験紙の便利版みたいな感じか。

「で、この人形に複数の薬品を垂らした時、最初の灰色と比べて色が明るければ、トータルで毒に打ち勝てる薬と言う事よ。逆に暗ければ、まだ薬としての効能が足りないってわけね」

 あ、比較もしてくれるのか。ならばリトマス試験紙より超絶便利だ。

「じゃあ、白はどうなの?」

「そうねえ。私も白く染まったこの人形を見た事は正直、一度もないし……」

 白って、色的には明るいけど、色が無いようなもんだしなあ。

 微妙なところだ。

「まあ、毒薬を垂らしてみてっと」

 お母さんはどこからか取りだしてきた毒薬を、白くなった人形の頭に垂らす。

 すると、毒薬に濡れた場所を中心に色が……、あ、ちょっと変わった。真っ白から、パステルカラーな薄い青緑(エメラルド)色。

「この色は……なるほど。カナエ。もう一度、毒消し薬を作ってみてくれるかしら?」

「うん」

 材料はまだまだたくさんある。

 僕は錬金鍋の中に薬草と毒薬を入れて、マテリアルを足し算、っと。

 ふぁんっ、とまた音がして、そこには先程と同じものが。

 最初の一回が大変だったけど、最初の一回を乗り越えれば簡単だな。

「はい」

 取りだして渡すと、お母さんは先程の人形を水の入った桶に入れる。見る見る間に色が変わって、灰色に。

 どうやら洗濯で元に戻せるようだ。

 で、灰色に戻った人形に新しい方の毒消し薬を垂らすと、みるみる間に真っ白に。

「驚いたわね……。カナエ、あなたが作ったこの毒消し薬、二連続で最高品質よ」

「そうなの?」

「ええ。このまま商品にできるくらい」

 ふむ。

「いくらくらいで売れるかな」

 薬草は銀貨十七枚、毒薬は銀貨三十枚。原価は銀貨四十七枚だから、それをある程度超えるなら商品化をしても良さそうだし。

「試験人形を真っ白に染めるくらいだから、そうねえ……私が作る毒消し薬が銀貨七十枚だから、この品質だと……」

「だと?」

「金貨十四枚くらいかしら?」

 え?

「……いや、さすがにそれは売れないんじゃない?」

 金貨十四枚って……銀貨千四百枚だよね。

 普通の毒消し薬の二十倍じゃん。誰も買わないよ、そんなの。

「そうね。普段からこれが売れるシーンは私にも思いつかないわ。けれど、これほど強力な毒消し薬はそうそう市場にも出回らないし、月に一本くらいならば売れるかもしれない……」

 そんなものか……。

「最初の錬金術とは思えない大成功品よ。それが二度も続いてる。その感覚、忘れないようにしなさい」

「はい!」

「良い返事ね。じゃ、次はポーション作ってみましょうか。材料は水と薬草よ」

 ふむ。

「これはあくまで私の感覚だから、あなたの場合は違うかもしれないけれど。大体コップ一杯くらいの水に対して、薬草を一つ使えば、概ね一般的な品質のポーションが作れるわ」

「お母さんが作るやつは、品質が結構高いんだよね?」

「そうね。私が作ってるのは二級品から三級品が多いわ」

「それって、どのくらい高いの?」

 なんとなく二級とか三級って駄目なイメージがあるんだけど……。

 いや、カナエ的にはそうでも無いのか。

 佳苗的にはすごい駄目っぽいけど。三級なんとか、ってかなりへりくだった感じだし。

「一番下は、九級。一番上は特級だけど、例外だから、一級ね。商品にできるのは七級からかしら」

 なるほど、となれば三級は結構上の方だ。

「それって、階級を調べる方法あるの?」

「ええ。表しの指輪って道具があるわ。ちょっと待ってね」

 お母さんは部屋の隅の棚へと向かうと、一番下、鍵付きの引き出しを開けた。

 中には色々な輝くものが入っていた。たぶん、貴重品入れなのだろう。引き出しから取り出したのは青い石の付いた指輪と、金色のネックレスだった。

 引き出しを閉めてから、お母さんはネックレスを指輪に通して、はい、と僕に渡してくる。

「指のサイズが合わないでしょうから、ネックレスに通しておきましょう。その指輪が表しの指輪よ、あなたにあげるわ」

「いいの?」

「ええ。私は作れるから」

 ああ、これも錬金術で作れるのか。

 材料が解れば僕にもいつかは作れるようになるかもしれない。

 とりあえずネックレスを首から下げてみた。考えて見ればアクセサリーを付けるのは始めてかも。

「使い方を説明するわね。といっても、簡単よ。ポーションを一滴、その指輪に垂らすだけで、その石の中に数字が浮かぶわ。それが階級よ」

 便利だな。どうせなら毒消し薬とかにも使えればいいのに。

 せっかくなので言ってみると、お母さんは笑った。

「そうね、私もそう思うわ。けれど、それじゃあ難しいでしょうね……少なくとも錬金術だけでは厳しいわ。魔法を重ねれば、あるいはできるかもしれないけれど」

 そんなものか。

「まあ、今日は沢山ポーションを作ってみなさい。駆け出しの錬金術師ならば、まずは七級品が目標ね」

「はーい」

「じゃ、私は店番。頑張りなさい」

 うん、と頷き、お母さんを見送る。

 さて、ポーションの材料は水と薬草か。

 毒消し薬と同じように、材料を入れつつマテリアルとして考えて、足し算……。鍋に入れると、ふぁんっ、と完成。

 うーん。

 僕が今錬金鍋に入れたのは薬草とコップから水を注いだだけなのに、なんで容器まで出来てるんだろう。

 謎すぎるぞ、錬金術。

 まあ良いけど。

 容器のふたを開けて、表しの指輪に一滴だけ垂らしてみる。

 と、表しの指輪、の青い石の中に、『6』、と数字が表示された。

 6……六級品?

 最初でこれって、思ったより簡単なのかな。

 いや、お母さんがヒントくれたからか。

 それに、お母さんが言っていた一般的な品質、は多分五級か四級だし、それと比べればいくつかランクが落ちている。

 ここから先は工夫って事だね。

 これはこれで大変だけど、何にも起きない、と鍋とにらめっこをしていた二日間と比べればどう考えてもこっちのほうが気楽だし、良いね。

 なんだか楽しくなってきたや。

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