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白黒昼迄夢現  作者: 朝霞ちさめ
第一章 積み重ねるべきは
24/125

24 - 冒険者たちの基礎知識

 冒険者、と言う存在について、意外と僕は無知である。

 ゲーム的な解釈……にも限界があるしな。

 というわけで、今日はお母さんの許しをもらってお店のお手伝いをお休み。

 町の酒場へとやって来ていた。

「いらっしゃい……って、リバーさんの所の倅か」

「はい。こんにちは」

「ああ、こんにちは」

 いつぞやの馬車を予約する場所を聞くときにも挨拶はしていたのだが、まあ、二回目である。

 ていうか、リバーさんの所の倅って。もしかして名前認識されてないのだろうか。

「僕はカナエです。カナエ・リバー」

「っと、そうか。ありがとう。それで、カナエ。今日はどうしたんだ? また馬車についての質問か?」

「いえ。ちょっと興味があって、色々と教えてもらいたいなって」

「ふうん……? こっち来い」

 はい、と頷き、僕はカウンターに寄って行く。

 例によってちょっとお客さんから睨まれているような感じがする……。警戒されてるのかな?

 いや、単純に僕が場違いなだけか。

「で、何に興味があるんだ。酒か? 女か?」

「お酒は、お店で取り扱ってない事も無いですけど……、僕、まだ呑めませんよ、あんなもの」

「じゃあ、女?」

「女って?」

 女の子は女の子だし、女性は女性だよね?

 それに興味ってどういう意味だろう。

 異性的な好き、とかの興味だろうか。

 考えて見れば渡来佳苗としての僕も、カナエ・リバーとしての僕も、初恋らしい初恋がなかったりする。

 いや、覚えてないだけでしてたのかもしれないけど……。

「……カナエだっけ? お前、いろいろとここに来るの早すぎるんじゃねえの?」

「?」

 何でだろう。

「えっと……、どういうことですか?」

「……えーと……」

 …………?

「いや、説明してやりたいのは山々なんだけどな。……その、うかつなことを教えて、お前さんのご両親に襲撃されたらたまらん」

「襲撃って……お父さんはそんなことしませんよ」

「お母さんは?」

「…………」

 まあ、騎士団の駐屯地を更地にした事が三回もあるんだよね、お母さん。

 うん、襲撃してもおかしくないかもしれない。

「理解したようだな」

「……いやでも。実は僕、あんまりお母さんの事も知らないんですよ。過去三回くらい、駐屯地を更地にしたみたいな、都市伝説は聞いたことがありますけど」

「残念だが事実だ。まあ、一度は騎士の要請でやった、と言う事だが」

「なんでですか?」

「建て直し」

 ああ、なるほど。

 …………。

「残る二回は?」

「お前のお父さんが馬鹿にされたから、爆破したのが一回目。その報復として騎士がお前のお母さんの店を取り囲んだんだが、それに対する更なる報復として爆破したのが二回目」

「一回目も大概ですけど、二回目に至っては完全にお母さんが悪いじゃないですか」

「そう思うならお前さんからも言ってやれ」

「それは、それです」

 誰しも保身を優先するのは仕方が無いことである。

 でも今度、騎士の人たちには謝りに行こう。

「まあ良い。それで、酒でもなければ女でもないんだな? 何が知りたくてここに来たんだ。まさか男と言うわけでもあるまい」

「男? って?」

「……いや、忘れてくれ。あと、絶対にお母さんには言うな。うん。この店が物理的に無くなりかねん」

「はあ、そうですか……」

 まあ、それはそれで面白そうだけど、やめておくとしよう。でもさっきから女とか男とか、どんな意味だろう?

 それはそれで知りたい気もしてきた。まあ、今日は良いや。

「僕が聞きたいのは、冒険者さんについてです」

「うん……?」

「僕……に限った事じゃないと思うんですけど、子供って冒険者について、かなり疎いんですよ。なんか武器を持って街中を歩いてる人たちとか、たまに戦ってる凄い人とか、その程度の知識しかないんです。で、この前、お母さんの店にロードさんという人が来まして」

「ロード……って、まさか『大盾のロード』か?」

「そう。その人です。でも、僕は冒険者さんのことを全然知らなかったので、すごいなれなれしくしちゃったんですよ。盾だけで何するんですか? とか。そういう無知が、今後足を引っ張ったら困るので、一般的な『冒険者』という人たちの事が知りたいんです。もちろん、必要ならば情報料もお支払いします」

「ふうん……勉強熱心だなあ、お前さんは」

 まあいいや、と店主さんは言うと、僕の前、カウンターの上にジュースの入ったグラスを置いて微かに笑った。

「少し長くなる。座れ」

「ありがとうございます」

 で、このジュースいくらだろう。


「冒険者、と一言に言っても、大きく三つの種類に分類できる。数が多い順に『基本型冒険者』『専門型冒険者』『主従型冒険者』の三種だ」

 ふむ。

「『基本型冒険者』ってのは、『冒険者』と言った時に真っ先に思い浮かぶようなタイプだな。酒場や冒険者専門の斡旋所で仕事(クエスト)を請けることで生計を立てている。これは一般論だが、この基本型が最も汎用性が極めて高い。大抵の事は何でもできる、万能タイプと言っても良いだろう」

 基本が万能……なのか。ちょっと意外。

「『専門型冒険者』はというと、何らかの分野を専門にしている冒険者だ。洞窟や迷宮の探索、地図の作成、物品の調達、護衛。そういった物に対する専門家……大抵の場合、『専門型冒険者』は特定の拠点を持たずに、依頼がある所を伝手で探して、そこを目指す。お前が会ったって言う『大盾のロード』がまさにこれだな。あいつは迷宮探索の専門家だ」

 専門が特化。これは解りやすい。

「『主従型冒険者』はちと特殊でな。特定の人物や組織に対して主従契約を結んだ冒険者を指す……ことが大半だ。その性質上、拠点は通常固定される。国の貴族やお偉いさんと契約してる奴も居れば、大きな商会と契約してる奴らも居るから、一概にどんな冒険者科とは言えねえ。雇い主によっては万能な冒険者を求める事もあれば、専門な冒険者を何人か用意しておくこともある」

 主従は契約……ふむ?

「質問です。主従型のその説明は『大半』と言ってましたけど、たまに違うのもあるんですか?」

「ああ。緊急回避的な意味で、実質はともあれ、名目上はそうなる例がある」

 緊急回避?

「具体的にはお前みたいなガキが冒険者にならざるをえない状況で、酒場なり冒険者専門の斡旋所なりがそのガキを拾うんだよ。常識的に考えて、ガキに冒険者は務まらない。そもそも依頼を受ける段階にすらいけねえし、行けたとしても生還率が低すぎて、心証が悪い。だから、酒場なり斡旋所なりが『主従型冒険者』って名目でガキを拾って、実際には裏方作業を手伝うってわけだ」

「…………、子供が冒険者にならざるを得ない……というと、孤児とか?」

「ああ。大概はな。他にも、親から捨てられたとか、虐待されて逃げ出した……とか、まあ、色々と事情はある」

 ふむ……。

 駆け込み寺……とは違うけど、まあ、そんな感じなのかもしれない。

「ま、お前さんが聞きたいのはそっち方面じゃねえだろ?」

「それもそうです」

「うん。で、冒険者はそういう一部の例外を除けば、今度は得意な事……役割と言っても良いな、役割が大体決まる」

 役割……か。

「役割はもっと細分化できるんだが、話を単純にするためにも『盾枠』、『物理近接枠』、『物理遠隔枠』、『魔法枠』、『便利枠』の五種類があると思えば良い」

「便利枠、が浮いてますね。他はなんとなく解りますけど……ああ、でも盾枠がちょっとわからないかも」

「盾枠は基本的に攻撃をしない。攻撃をせずに、魔物からの攻撃を一手に引き受ける……そういう身体的な耐久力が要求される枠だ。分厚い鎧に盾を構えるスタイルが一般的だが、希に回避型と呼ばれる奴もいるな。まあ、希だが」

 なるほど。

「物理近接枠は解りやすい、剣や斧、鎚を使った攻撃を行う連中だな。最も一般的で、かつ最も死者が多い枠としても有名だ」

「母数が多いからですか」

「その通り。ま、やることが解りやすいからな。『とりあえず』でそれになって、そのまま死ぬ奴が多いな」

 ううむ、結構冒険者という生き様は厳しいようだ。

「物理遠隔枠は弓を用いることが大半だな。希に投擲系も居るが、まあ、弓矢での攻撃を行いつつ、リーダーとしての役割を背負う事も多い」

「……弓、だと、どうしても専門的になりそうですけど。数、足りるんですか?」

「ああ。お察しの通り、結構足りねえ。だからこの枠が居ないパーティも多いな。その場合は盾枠がリーダーを務める場合が多い」

 ふうん……、弓矢にせよ投擲にせよ、残弾数に限りはある。その管理をしながらパーティの指揮か。そりゃ足りなくなるよ。

 で、リーダー枠というのもなんとなく察しは付いた。だから弓を背負ってる人が買い物に来るんだ。

「次、魔法枠。もちろん名前の通り、魔法を使う奴のことだ。もっとも、魔法使いで使いものになる奴はそこまで多くないから、専門的な魔法枠というのは結構少ない。大概は近接枠か遠隔枠がそれを兼ねるな」

 遠隔枠ならば弾数管理が大分楽になるし、近接枠でも遠隔攻撃の手段を手に入れられる、と。なるほど。

「最後に便利枠。これは大分珍しい枠だな。戦闘面ではあまり期待されない代わりに、非戦闘面を担当する枠だ」

「錬金術師みたいな?」

「そうだな。錬金術師の中にはお前のお母さんのように戦闘面を苦手としない奴もいるが、錬金術の本分はそれ以外の部分にある。現地で薬品を作ったり、道具を直したり、設営をしたり。ま、そういった便利な技能持ちがこの枠だ」

「なるほど」

「で、これらの枠と、さっき説明した冒険者としての型の分だけ種類がある。とりあえずはこの程度を知っておけば、一般的に恥はかかねえだろ」

 うん、と僕は頷く。

「ありがとうございます」

「おうさ」

「あ、最後にもう一つ」

「うん?」

「冒険者さんの男女比ってどのくらいですか?」

「半々」

 ああ、うん。

 そうだよな。

 結局、僕は情報料代わりに銀貨を五十枚ほど置いた。

 そしたら泣かれて、四十枚ほど付き返された。

 お母さん……どんだけ畏れられてるんだろう……。

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