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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

ドラゴン退治の最大の障害は……バカ?

作者: 海影
掲載日:2016/07/03

9月から連載にします。

よろしければ、お読みいただけるよう、お待ちしております。

こちらは異世界モノ、ファンタジーです。

 アークライト国北部。火山地帯をめざして俺たちは一角獣うまを走らせていた。この調子なら、日暮れ前には次の町に着きそうだ。


「アイリス、疲れてない?」

「大丈夫、です。時々回復をしていますから。ゼオこそ、大丈夫なのですか?」

「平気。俺は頑丈だから」

「クスッ。そうですね」

 彼女はアイリス・アークライト。俺の幼馴染み兼護衛対象。その名のとおり、アークライト国の王女である。

 俺たちが単騎でこんなところにいるのには訳がある。


 そう、あれは2週間ほど前……。北部の火山地帯にドラゴンが舞い降りたという報告があった。高い知性をもつ古代竜ならともかく、下位のドラゴンが火山に居座ると、火山活動が活発になり、非常に危険だ。あの辺りはいい温泉がわくので、湯治の場としても有名だし、火山の辺りは良質な鉱石も採れる。

 そのため、交渉または退治のためにふたりで向かっているところだ。古代竜相手の場合、王族がいないと聞く耳がないからな。

 ちなみに、魔力主義のこの世界では、王族とは最高ランクの魔力を持つことが絶対条件だったりする。

 アイリスはそのなかでも群を抜いた魔力を保持しているため、こういう時に駆り出される。

 そして俺は魔力ゼロという別の意味で稀少存在なので、ドラゴン退治は俺たちふたりで十分なのだ。



 そうしてしばらく進み、森を抜ければ町に着く、というころ。俺たちは一角獣を停めて周りを見回す。


「……」

「……」


 ふたりで顔を見合わせたあと、俺は声をあげた。


「隠れているのはわかっている。出てこい」


 特に声を張り上げずとも、俺の声は響いていく。そしてガサッという音と共に、身なりのいい、20歳(はたち)くらいの男と、その護衛騎士らしい連中が出てきた。……なお、彼らも軽装である。

 その理由はこの世界の防具にある。魔力の結晶である魔石に防護の紋様を刻むことで、持ち主を守護する結界を張るのだ。魔石もそこらの魔物を倒すだけで手にはいるし。まあ質の良いものは、魔力集積場でできたものじゃないとダメだし、そっちはかなりの高額になる。それでも、重い防具を着けるよりよっぽどいいし。なにより蒸れないし。

 ーー話がずれた。まあ、騎士たちは軽装っていっても、騎士の制服だからいい。問題はあの男。たしか、ディオード伯爵家の嫡男のオルクト、だったか? あいつ、こんな場所に貴族の正装できてる。窮屈だってのになに考えてんだか。俺もアイリスも思いっきりあきれた。


「それで、伯爵家の坊っちゃんが何のようだ?」

「きさま! 魔力ゼロのくせに、なにを威張ってる!」


 威張ってるんじゃなくって、馬鹿にしてんだけど。


「ディオード伯爵子息。何か私たちに御用ですか?」

「はい! アイリス王女殿下!」


 ……あいつ、アイリスの名前を呼んでるぞ。下位の位のものは、上の位の方の名を許可なく呼ぶことは許されない。そして、あいつはその許可を貰っていない。え、俺? 俺は許可を持ってる。アイリスも、その兄妹も。アイリスと同じく幼馴染みだし。兄の方は親友だし。


「……私はあなたに名を呼ぶ許可を与えていません。どのようなつもりですか?」


 静かに怒気を込める。見た目が穏やかな分、怒ると怖いタイプ。


「で、殿下、わ、わたくしは殿下の夫となるものです。名を呼ぶのは、当然でしょう! 殿下のとなりに並ぶのは、そんな男はふさわしくない!」

「「はあ!?」」


 ……なに言ってんだこいつ? 頭大丈夫か? 俺とアイリスは顔を見合わせる。そしてあいつを見て、また顔を見合わせて、異口同音に口を開く。


「「……バカ?」」

「は?」


 ほっとになに考えてんだ?


「私はすでにアルフォードお兄様との婚約が決まっております。そもそもあなたとは初対面のはず。いったいなにを考えて、そのような発言をなさったのですか?」

「こ、婚約って、兄妹で、結婚はできません!」

「そりゃ、血縁の場合だろ? そもそも王家の人間はほとんど全員、血は繋がっていないだろうが」

「は!?」

「……」


 おい、まわりの騎士たち(お守り)もなんか言えよ。って、聴かないふりしてよそ見てるし。


ここで、この世界の仕組みについて簡単に説明をしよう。まずは身分。王を頂点に貴族階級、騎士階級、一般階級に別れる。そしてこれは魔力順に別れる。ここで重要なのは、魔力の量は、()()()()()()()()()ということ。つまり、王の子供が、魔力少量の一般階級だったり、逆に一般階級から王族が生まれることもある。子供は生まれて一年たつと養育所に集められ、そこで平等に育てられる。そして5歳の誕生月の翌月に魔力検査をして階級が決められる。たいていその階級に実の親がいると、そこに引き取られるが、いない、もしくは引き取ることを拒否する場合は、他の里親に引き取られる。血筋については戸籍でしっかりと管理されているので、近親での婚姻はない。王族は当然のことながら人数が少ないので、血縁がいることの方がまれだったりする。なので、王は自分の血の繋がった子供を育てることは滅多にない。まあ貴族階級にいると、頻繁に会うことはできたりするけどね。


 ということを、説明した。あー、バカみたいに口をポカンと開けてるし。……そういや、あいつはさらに例外だったか。

 あいつの魔力は一般階級のもの。それでもあいつの親がどうしても育てたいっていうんで、もとの両親に引き取られたんだったな。結婚に身分は関係ないから、王家の年頃のアイリスと結婚させてやろうとか思ったんかね。跡継ぎは、あいつの弟(血縁関係なし)だし。


「そういうわけだから。わるいけど急いでるんで、道開けてくんない?」

「……るさい……」


 ……これは、まずいパターンかな?


「うるさい、うるさい、うるさい!! お前はわたくしのような高貴な身分のものとは話す資格などない! さあ、殿下! わたくしとともに!」

「……お断りします」

「な!?」


 ……当然だろうが。


「ゼオの言った通り、私たちは急いでいるんです。道を開けてください」

「……わたくしに従わないのなら仕方がない。おい、殿下を捕まえろ! そいつはどうなっても構わん!」

「あーあ」


 騎士たちはしぶしぶといった感じで剣を抜く。俺はアイリスを下がらせると一角獣から降りて同じく剣を抜く。騎士たちの一部は魔法を放つために詠唱を始めた。

 ……ちなみに魔法の行使に詠唱は必ず必要と言うものではない。ただ、イメージが重要なので、その助けとして唱えるものが多い。まあ、その詠唱でどの魔法が発すると自己暗示を掛けているようなものだな。

 俺は魔法を唱える騎士たちを無視して、剣を構えた方に突っ込む。

 とっさに防御のために剣を立てたが遅い! 途中でスピードをあげて懐に飛び込み、剣の柄で鳩尾を打つ。気絶させると次に向かう。その途中、魔法が完成して俺の方に放たれたが無視する。……なにしろ、魔力ゼロの俺には、魔法はまったく効果を発しないからな。同じように、防護の結界も意味をなさないし、身体能力はとんでもないから、対人で負ける気は、体力がつきない限りはないな。

 そうして、あっという間に蹴散らして、残るはバカ貴族だけになった。


「……な、な、な……」


 まあ、言いたいことはわかるって言うか。


「いっとくが、別にアイリスは不貞を疑われることもしていないぞ」


 このバカに一応いっておいた方がいいだろうから。


「俺は、アイリスの双子の兄だから。つまり、正真正銘の血縁だから」

「なあーー!!!」


 さすがにこれは驚いたみたいだな。ちなみに俺は父親似。アイリスは母親似。なんで全然似てない。とはいっても、ちょっと目敏ければすぐに気付くんだけどな。


「そういうわけだから」

「失礼します」


 俺とアイリスは軽く手を降って、あいつを置き去りにして次の町に向かった。ま、手加減しといたし、一時間もすりゃ、騎士連中も目を覚ますだろ。



 なんとか日暮れと同時に町にはついた。……今日は無駄に疲れたし、さっさと宿をとって休もう。ちなみに身分がばれないように、普通の旅人が泊まるような宿を選んでる。


「……疲れたな」

「……本当ですね。……あの人は常識をどこに置き忘れてこられたのでしょうか……」

「まったく」


はぁ。ふたりしてため息ついて、今日はくっついてきたってもう休むことにした。



 ーー数日後。俺たちは火山の近くに来ていた。先に地元の領主が調べといてくれてて、開いては下位のドラゴンだと判明。さっさとぶちのめすことになった。


「あの、おふたりで大丈夫ですか……?」


 おっと、ここの領主はいい人だ。場合によっては俺を囮にって言ってくるのもいるしな。


「大丈夫です。下位なら、何度かひとりで退治してますから」

「は⁉」


 俺とアイリスは、苦笑を浮かべつつ山に向かった。



 山を登り、頂上近く。小型(といっても、体長十メートルほど)の青竜がいた。ちなみに色=属性というわけでもなく、直接やりあわないと属性は不明なので、あくまで人間が色分けで区別してるだけだけど。

 まあ、今回は火山にいるってことで、火属性の可能性が高いとは思うけど。


「間違いなく、火属性のようですね」

「火っていうか、マグマ飲んでるから、土属性か、混合属性かも?」


 水のようにゴクゴク飲んでるよ。いや、確かに竜ってやつは直接体内に元素を取り込んでエネルギーにするもんだけど。


「まあ、何でもいいや。さっさと終らせよっか」

「そうですね。私が魔法を撃って、ゼオが止めですね」

「おう。よろしく」


 俺はアイリスに頼むと、剣を抜きつつ竜に走り寄る。

 俺に気付いて、ブレスを吐く体勢になった竜の口へ、アイリスが魔法を撃つ。氷の矢の魔法……というか、槍? が放たれ、竜の口へ吸い込まれるように当たる。その隙に、一気に竜の首の上に跳躍して、柔らかい目に剣を突き刺す。痛みに起き上がったところを下にまわり、鱗の隙間から心臓に向けて剣を突き刺す。心臓を貫かれてはさすがにドラゴンも息絶えた。

 ま、これで今回の仕事は終了だな。

 収納鞄にドラゴン放りこんで、俺とアイリスは山を降りていった。



「これで今回のお仕事は終わりですね」

「古代竜じゃなくて良かったよ」


 相手が古代竜の場合は、交渉が必要になる。古代竜って偏屈なのが多いんだよね。それよりは下位のドラゴン退治の方がよっぽどラク。


「で、このドラゴンはここの領主に任せていいかな?」

「そうですね。きちんと手配してくれるでしょうから」


 一部の連中は、こういう資源を自分のものとして横領しちゃうんだよな。ここの領主はそれはなさどうだけど。まあ、貴族がダメそうなら別のところにまわすだけ、だけど。


「それじゃ、帰るか」

「はい。急いで帰りましょう!」


 思いっきり意気込むアイリスと、来たときよりも短時間で城に戻って……。

 いちゃつきまくるアイリスと王子に、砂糖を吐きまくったのだった。

 あ、ちなみにドラゴンは、領主がきちっと処理して、民間に還元されたとさ。

魔法などの設定については少々甘めになっています。(短編ではのせきれません)

裏設定ですが、ゼオとアイリスは現王の実の子供だというのもあったり。

今回は関係ありませんが、実はゼオは転生者だったり。

連載になる場合は、子供の時から書く予定です。

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