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ドリームダイバーズ  作者: は〜げん
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第四話 狂気の娘ソンジュ

寒くて泣きそうです

前回までのあらすじ

……ん?あぁ。もう私か。私の名前はカナエだ。

前回は…………あー面倒だな。私はこんな作品を読んでる暇人とは違って忙しいんだ。もし気になるならもう一度読んでくれ……あぁ、まぁ、なんから感想を残してくれても……いや、なんでない


「ふふふ〜ん♪」


楽しそうな女の子の声が部屋の中に響く。周りには窓など一切なく光など一つも入ってこなかった。


そんな女の子の声と同時にチャキ・・・と刃物がなる音がなる。そして、おそらくそれを降る音も聞こえた。それをするたびにその女の子は楽しそうな鼻歌をさらに口ずさんだ。


「ジャッカジャンジャンジャン♪」


すると、その鼻歌をやめ突然前奏みたいな音を口ずさんだ。そしておそらく持ってる刃物を振りかざし何かに向かって振り下ろした。それをしながら何かの曲を歌い始めた。


「一つ鼻を切り落とし〜♪

二つ目玉をくりぬいて〜♪

三つあえて爪を剥ぎ〜♪

四つ四肢を切り落とし〜♪

最後にバラバラコッナゴナ〜♪」


そう歌った後、またジャンジャンと楽しそうに言った。すると突然電気がぱちっとついた。あたり一面が途端に明るくなり、女の子の姿が見れた。


青いショートの髪に、また青を基調としたドレスを着用していた。子供のような無邪気な顔とは不釣り合いなほど、とても大きなハサミを手に握っていた。そして近くにはばらばらになった人間の人形があたり一面に散らばっていた。


「んんん〜♪もしかしてお姉様?夜の営みを〜♪って、あら?あなたはしつじくんかしら♪」


扉のあたりを見ながらそう言うと、そこには紫色の髪の毛を目と鼻が隠れるほど伸ばしていて、青いタキシードに身を包んだ少年が立っていた。彼の名前はしつじくんという。本名は誰も知らない。


「まったく・・・妹様。またそのような野蛮な遊びを・・・もう少し、おとなしくしていただきたいものです。ほら、レーヴお嬢様を見習ってください。彼女はとても上品で、そんな遊びなどしませんよ」

「あらぁそうなの〜♪でも、ベッドの上だと上品というよりか下品に暴れるわよ♪」


そんなことを言いながらその女の子は楽しそうにくるくる回った。そんな彼女の名前はソンジュという。レーヴの妹であり、そして二つなとして


「あははは♪うふふふ♪」


狂気の娘ソンジュと呼ばれてたりした。しかし、こう無邪気に笑ってる姿を見たら、どうもそうは見えなかった。


「はぁ・・・ま、いいです。妹様。お嬢様から通達がございます」


そう言われると、ソンジュはピタリと止まり、続けて♪と一言言った。それを聞いてしつじくんはポケットから綺麗に畳んだ紙を取り出した。そして読もうと開くが、その時ヒュンと風を切る音が聞こえたかと思うとその手にはもう紙がなかった。代わりにしつじくんの後ろで紙を目で読んでいるソンジュがいた。


「ふんふん、わかったわ〜♪とりあえず適当なやつを無限睡眠症候群にするしかないわね〜♪さってはやく誰か寝ないかしら〜♪じゃ、人間でいう夜になったら教えてねぇ♪それまで私はここにある人形をもっとぐちゃぐちゃのベチャベチャにしちゃう♪」


そう言うとソンジュはへやのおくに行っていく。そして先ほどばらばらにした人形の残骸を拾い上げてまるで遊び相手を見つけた子供のようにニコッと笑う。


それを見た後しつじくんは部屋から出て行く。そして扉をきつくしめて、外にあるボタンを押して部屋の電気を消す。ソンジュは暗いところが好きらしく、明かりを消してといつも言ってくるのだ。


部屋の中からソンジュの笑い声が聞こえる中、しつじくんは安堵の息をついた。彼女の扱いはいつも困る。戦闘能力もさる事ながら、彼女自身が狂ってるというかなんというか。いつか殺されてしまいそうで、正直恐ろしい。


「おや?しつじくんじゃないか。ソンジュ様とお話ししてたのかい?お疲れ様」


ふと後ろを見ると、重そうな重りを足につけそれを引きずりながら歩いてくる紫髪の長身の男性がいた。


「あぁ?なんだテメェ、動き回れる立場だと思ってんのか?」


そう先ほどとは打って変わりとても粗悪な言葉遣いになるしつじくん。ハキーカは怖い怖いと言いながらいつものような笑顔を崩さずしつじくんに近づいていく。


「怖いねぇ、僕様は君のことが大好きだけど、君は僕様の事嫌いらしいね?ふふふ・・・なんでかな?」


そう言いながらしつじくんの頭の上に手を置いてワシャワシャと撫でる。しつじくんはちっと、舌打ちをしてその手を払いのける。


「それは簡単だ、テメェが人間で、テメェの腹の中が見えねぇからだ・・・テメェ、なに企んでやがる?」


そうしつじくんが睨みながら言うとハキーカはその張り付いた笑顔を崩さずにまた笑い続ける。まるで、笑うことしかできなくなったように。


「さぁ、なんでかな?ま、腹の中が見えないって言っても、まさか直接見るわけには・・・」

「じゃ、見てもらうか」


そうしつじくんが言ったかと思うと、ソンジュがいる部屋の扉を開けてその中にハキーカを放り込んで、鍵を閉める。


扉の奥で焦って扉をどんどんと叩き続ける音と、新しいおもちゃを見つけたような女の子声が聞こえたかと思うと、男性の悲痛な声が聞こえてきた。


「・・・いったい、レーヴお嬢様はなにを考えてるんかねぇ・・・」


そう言いながらしつじくんは歩いていく。後ろの方で聞こえる助けを求める声と楽しそうに笑う声を聞き流しながら。



◇◇◇◇◇



「・・・ってな具合だ。わかったか?なのは」

「は、はい。大体は・・・」


小さな公園のベンチに座り二人の少女が話していた。大和田マコトと大沢なのはである。二人は今、前回教えてもらえなかった(正確には一切わからなかった)ので、マコトにもう一度教えてもらっていた。


「よし、一応まとめるぞ

一つ、無限睡眠症候群の原因はわかってない。ゆえに奇病と呼ばれてる

二つ、それを治すために活動してるのなオレらドリームダイバー

三つ、そしてオレらの敵ナイトメアってのは目を覚ましたくない奴らの気持ちの表れ。基本、そいつが見ている夢をモチーフとしたやつになる。

四つ、そんで、そいつを倒せば夢は醒める。

五つ、後噂だが・・・ナイトメアたちに指揮をする奴がいるらしい。そいつらは、きっと普通のナイトメアより強い・・・っと、わかったか?」

「・・・・・はい!バッチリです!!」


そう言ってなのははメモ帳をポケットにいれる。失礼な話だが、カナエの説明の何倍もわかりやすかった。カナエの説明は堅苦しかったが、マコトの説明はわかりやすい言葉を選んでいた。


「よっ、話は終わったかい?」


突然声をかけられてびくりと二人が後ろを向くと、三月パンと書かれたエプロンをきた女性が立っていた。名前は確か西園寺あかねだったか。


「えっと・・・なのはちゃんと・・・?」

「あぁ、オレの名前は大和田マコトっす」


マコトはそう言って頭をぺこりと下げ、それを見たあかねはニコリと笑う。そして、なのはたちの隣にストンと座った。


「ほれ、なんか難しそうな話してるあんたらにお姉さんからの差し入れだ。ありがたくうけとってありがたく広めてくれ」


そう言いながら渡された袋の中にはクロワッサンが六つ入っていた。それを見たなのはとマコトは顔をあわせる。


「お姉さんも、五年ぐらい前に友人たちと話してた時、こんな風にパンをくれた人がいてな・・・ははは」

「おーい!あかねちゃーん遊びに来たよ〜ってあれ?この子たちは?」


すると、スーツ姿の女性が手を振りながら小走りでやってきた。それを見たあかねは喜んでか知らないが、がたりと立ち上がりその女性のもとに歩いていく。


「ん?お!千鶴じゃんか!なんだ、もう仕事終わったのか?」

「ううん、昼休みだよ〜」


そう言ってスーツ姿の女性、千鶴はあかねとハイタッチをする。パシンといい音がして聞こえた。この感じからして、二人はとても仲がいいのだろう。


「ん・・・?あの女の人、見たことあるような・・・?」


そう言ってなのはは彼女のことを懸命に思い出そうとする。すると、千鶴という女性はなのはに気づいて、親しげに近づいてきた。


「なのはちゃんこんにちは〜大沢さんに、いつもお世話になってます〜って、伝えといてくれない?」

「あぁ!お母さんの会社の人でたまに遊びに来た人だ!」


そうなのはは言うのを見た千鶴は微笑んで頭を優しく撫でる。なのははなんとなく顔を赤らめてしまうが、不思議と嫌ではなかった。


「・・・ん?おい、なのは。お呼びが来たぜ、っと」


そう言ってマコトはベンチから降り、なのはを手招きする。それを見たなのはは二人に頭をぺこりと下げてマコトについていった。


「・・・あの子達さ、もしかして・・・」

「言うな、わかってる。多分あたしたちじゃ止めれないことに足を突っ込んでるさ。でも、悪いことじゃない。あいつらは二人ともいい子だ。ま、悟がなんとかしてくれるさ・・・あいつは隠してるつもりらしいが」


そう言って大きくあかねは伸びをし、それを見た千鶴はクスリと笑う。そして背中をパシンと叩く。


「いって!おいなにすんだ!!」

「べっつにー?ただ、変わってないなーって」


そして千鶴はえへへと笑う。そんな顔されて、怒れるわけもなく、あかねはため息を大きくついて、店に戻っていった。


千鶴はまた微笑んだあと腕時計に目を落とし、やばい!と言って公園から出て行った。あかねは、そんな後ろ姿を見てポロリと言葉をこぼした。


「変わってねぇのは、あんたもだな・・・」



◇◇◇◇◇



「あら、遅かったザマスね」


マコトとなのはは大急ぎで研究所に戻ると、そこには体格が良い濃い化粧をした裕福そうなおばさんと慌ててるような顔のDr.トーマスと、悟。そして助けを求めるようにマコトたちを見るカナエの姿があった。


「えっと・・・あんたは・・・?

「あらま、口の利き方がなっ女の子ザマスね。ま、私は今回の依頼者ザマス。治して欲しいのは太郎くんザマス」


そう言ってそのおばさんはベッドのカーテンをシャっと開ける。そこには何か影が寝転んでおり、口から幸せそうな寝息を立てていた。しかし、これはどう見ても・・・


「い、犬・・・ですか?」

「あらま!あなた、私の家族である太郎くんを!犬って!!犬というザマスか!!なんてこザマス!!」


そう怒鳴られて、なのはは思わず頭を下げて謝ろうとする。しかし、マコトがそれをやめろと耳元で言って、なのはを太郎のところまで引っ張る。


「さて、早速やるぞ。おっちゃん、ドリームコネクターを速く・・・」


そう言うと、Dr.トーマスが頭をかきながら目をそらす。マコトは頭にハテナを浮かべたような顔になるが、その疑問はおばさんの怒鳴り声で消えていく。


「だーかーらー!!太郎くんの治療をこんな子供に任せるわけいかないザマス!!速く他の人を連れてくるザマス!!」


おばさんは、マコトたちを信用してない。まぁ、確かに子供だ。頼りないのはよくわかるだろう。しかし・・・


「で、でも!私達は正規のドリームダイバーですよ!!私はまだまだですが、マコト先輩はすごい人です!!」

「はーっ!!何言ってるザマス!あんた達がすごいはずないザマス!!もういいザマス!他の所に行くザマス!!ささ、太郎ちゃーん?いきますザマスよー?」


そう言っておばさんは眠っている太郎を抱きかかえて出て行こうとする。悟とDr.トーマスは少し頬をかきながら、カナエは腕を組んで下を向いていた。が


「無限睡眠症候群はーーー」


突然、カナエがくちをあける。おばさんはピタリと足を止めて、なんザマス?と聞いた。カナエは床に降りて、おばさんの所であるき、おばさんを見上げる。


「無限睡眠症候群は長期間夢を見ていたら、現実と夢が入れ替わるんだ」

「・・・だからなんザマス?」

「はぁ、これだから、頭がお堅い単細胞のミジンコは・・・まだ、マコトの方が理解力がある。ま、いい。おい、単細胞生物。説明してやれ」


カナエがそう話を振ると、マコトは太郎が先ほどまで寝ていたベッドに視線を向け続けていた。そして、そのまま少しためらった後に口を開けた。


「夢と現実の違いがわからなくなる・・・つまり、その太郎くんってのは、夢が現実。現実が夢だと思うんだ。本当はちげぇのにな。ま、簡単に言えば夢の中で見ていたことをこの現実でも求めようとする。歌手になったやつは大物歌手に・・・金持ちになったやつは・・・金持ちになろうとしやがる」


マコトは最後の一文を言うとき、少し顔に影が差した。なのははそれに気づいたが、言及することでもないと思い、話の続きをまった。


「つまり、もし太郎が夢の中でクマかなんかを殺すほどの強い犬・・・人を殺すような犬になってる夢を見てたとき・・・どうなると思う?」


そう言うと、おばさんはウッと、押し黙った。もしそんな夢を見ていたら、太郎は現実でもそうあろうとするだろう。なぜなら、太郎にとって現実が夢であり、夢が現実なのだから。


「だから、速くそいつの治療をオレらに任せてくれ。安心しろ。必ず目覚めさせる」


そう言ってマコトは両腕を差し出す。それを見たおばさんはしばらく睨んでいたが、やがて観念したようにため息をつき、その腕の中に太郎を優しくおいた。


「絶対ザマスよね?絶対に治るザマスよね?」


マコトは優しく太郎をベッドの上に置いてDr.トーマスからドリームコネクターを受け取った。そして一つをなのはに渡した後、太郎の方を見ながら口を開ける。


「安心しろ。オレらはこう見えても優秀なんだ。行くぜ、なのは」

「は、はい!マコト先輩!!」


そう言うと、二人の腕が白く光り、その場にバタンと倒れる。二人は太郎と同じぐらいにスヤスヤと幸せそうに眠っていた。



◇◇◇◇◇



そして二人は太郎の夢の中に来ていた。あたり一面にあるのは、赤い絨毯とバラバラに壊れた何かの破片。そして・・・

「ガルルルル・・・!!」

「あ、あははは・・・こんにちは太郎くん・・・じゃないか・・・?」


巨大な犬が立っていた。その上に小さな犬が乗っていて、恐らくそれが本当の太郎くんであろう。


「仲良くしましょう・・・?ワンワン。ワオーン・・・?」


そう震えながらなのはが言うと、ナイトメアが大きく吠えた。そして、なのはめがけて前足を振り下ろした。


ドゴン!!


そんな音が聞こえたが、ナイトメアの足元には何もいなくて、顔を左右に動かして確認する。


「下からくるぜ!気をつけろ・・・なんてな!!」


そんな声が聞こえたかと思うと、マコトがなのはを抱えた状態で上に飛んでいた。そしてなのはを上に放り投げた後、ナイトメアめがけて拳を振り下ろした。


ドゴーン!!


先程のナイトメアの攻撃より大きな衝撃音が響き、あたりを震えさせた。そして、犬のナイトメアはドロリと溶けて、その上にマコトは降り立つ。その上になのはが降ってきてお姫様抱っこで受けとめる。


「あ、あわわわわ」

「おいおい、女同士でそんなにあわてんよっと」


あまりにもあっけなかった。犬のナイトメアは一瞬で片がついた。正直、勝てるかわからなかったが、夢のように儚く消えた。


そんな時だった。ヒュンと風を切るような音が聞こえて、なのは達の足元に何かが刺さる。それはハサミであった。


「ハサミ・・・なんでこんなものが・・・?」

「っ!?なのはあぶねぇ!!」


そう言ってハサミを拾おうとするなのはをドンと突き飛ばす。なのはは何事かとおもうと、マコトの苦しそうな顔が見えて思わず声を上げる。


「マコト先輩!?なんで・・・」

「あら〜♪惜しいわね〜♪でもあれは50点って感じかしらね、ハキーカ♪」

「そうですね妹様。僕様もそう思いますよ」


そんな声が聞こえたかと思うと、二人の男女が歩いてきた。一人は紫髪の長身の男性、もう一人は青い髪の青いドレスに身を包んだ少女であった。


「あ、あなた達は・・・?」

「あら自己紹介と行きますか?うーん。ま、確かにオーストリアでは常識ですわね♪ね?ハキーカ♪」

「ん?オセアニアじゃなかったけ・・・まぁ、いいや、そうだね、妹様」


ハキーカと呼ばれた青年はそう言ってぺこりと頭をさげる。そして、青髪の少女はくるくる回る。くるくるくると回り続けて、ピタリと止まる。


「私の名前はソンジュと申しますわ♪ナイトメアの一員なのですよ♪とりあえず、今日だけよろしくお願いいたします♪」


そう言って丁寧に頭を下げる。マコトはなのはを後ろに下げて、自分は前に出た。ソンジュという少女は見た目こそ、可憐なお姫様なようだが、言葉の端から何か狂気なようなものを感じて、なのははゾワッと鳥肌が立つ。


「へっ、これはご丁寧にどうも。で?今日だけってのはどういう了見だ?」

「あらあらまぁまぁ♪自己紹介されたら答えを返すのはインドネシアでは常識ですわよ♪」

「・・・オレの名前はマコトだ。こいつはなのは」


そう言ってマコトは自分たちを紹介する。あくまで冷静を保っているが、マコトの頬には冷や汗が流れているのをなのはは気づいていた。


「まぁ!なんて素敵なお名前でしょう!!そう、まるで小学生が作ったごちゃごちゃにものをかき集めて作った工作のような!コーラとお茶を混ぜて作ったブレンドドリンクのような!」


そう言ってソンジュは自分の体を自分で抱きしめた。それを見たハキーカは怖い怖いと言いながら、そこから離れていく。マコトはごくりと生唾を飲み込みなのはに離れろと小声で言う。なのはは少し迷った後、その場から離れた。


「ですがどんなにいいものも壊れてしまいますわよね♪あぁ、だったらあなた様達がここで壊れるのも・・・」


そうソンジュが言うと、いきなり上から何かが降ってくる。それはソンジュほどの大きさがある大きなハサミであった。ソンジュはそれを引き抜いた後、何かを確かめるように数回素振りする。


「壊れてしまうのも致し方なことですわね♪あぁ、なんて無情!あぁ、なんて無慈悲!あぁ、なんてなんてなんてーーーす・て・き・♪」


そう恍惚した表情を浮かべてソンジュは言った。なのははその時先程より大きくゾクゾクと体が震え始め、地面に座り込む。しかし、マコトは大きく足を踏み込んでいた。


スーパーダッシュ!!」


そう聞こえるとマコトはなのはの視線から消えていた。そして次の瞬間にはソンジュの後ろにマコトは移動していた。


(そう!マコト先輩にはあれがある!!あの速さについてこれる人なんていません!)


そして、マコトは大きく振りかぶって拳を突き出した。高速に動いた彼女を視覚的に捉えることは不可能。そして彼女の拳の強さは、ナイトメアを一撃の名の下に粉砕するほどの力。


ソンジュは口を緩ませて、ハサミを地面に突き刺した。突然のことでマコトもなのはも驚く。そして


ドゴン!!


マコトの拳がソンジュの背中に突き刺さる音が聞こえた。鈍いその音は当然なのはの耳にも入る。だからこそ


「うふふふ♪痛い♪でもその程度なら、耐えれるわね♪」

「なっ、ばか・・・!!」


ソンジュが笑っているのが理解できなかった。そしてソンジュは笑いながらハサミを右回転しながら振り回す。マコトはしゃがんで避けるがソンジュはそれをわかってたかのようにマコトの上でハサミを勢いよく開く。


「あぶねっ!?」


マコトは間一髪そのまま左に転がって避けた。地面に当たったハサミは、大きな音がなり地面にヒビをいれていた。マコトは一度大きく距離をとる。しかし、先ほどまでいた場所にソンジュがいないことに気づく。


「こっちよ♪」


そして背後から殺気とソンジュの声が聞こえて反射的に後ろに向かって回し蹴りを繰り出す。それはソンジュの脇腹にめり込むが、ソンジュはニコッと笑うだけであった。


「痛いけど、それだけね♪あなたの攻撃には怒りしかこもってないわ♪攻撃ってのは」


そう言ってソンジュはハサミを突き刺す。マコトは手を前に出してガードの形をとる。しかし、分厚いてのガードすらつきやぶりマコトの腹にハサミが深々と刺さる。


「殺すつもりでしなきゃ、だ・め・♪」


そしてソンジュはハサミを一気に引き抜く。マコトは腹から血を出しながら膝から崩れ落ちる。


「くっ・・・がっはぁ・・・て、てめぇ・・・!!」

「あらあら♪まだ戦いますの?まるでゼンマイ式の人形が、もう直ぐ止まりそうになるぐらいな感じですのに♪」

「なめんじゃ・・・ねぇ!」


マコトはソンジュの顔に向かって拳を突き出す。ソンジュはそれを避けるそぶりを見せずもろに顔面に受ける。


「痛いわね♪でも、それだけ。殺すつもりなんてない攻撃なんて♪ね?」


ソンジュはそう言ってハサミを構える。マコトはとっさにハサミを止めようともう片方の手でハサミを掴む。しかし、ソンジュがしたのはハサミでの攻撃ではなく、蹴りであった。


「ぐぅっ・・・!?」

「あははは♪可愛らしい顔ね♪さて、まずはーーー」


そう言うとソンジュは思い切りハサミを振り上げた。マコトはそのハサミにぶつかった衝撃で吹き飛ばされる。何度も地面を転がって、なのはの近くまできてとまった。


「マ、マコト先輩!?」

「あいつやべぇ・・・躊躇もしないで、オレの鼻を狙いやがった・・・くそが、少しぐらい遠慮しろっての・・・おい、なのは」


そう言ってマコトはなのはを思い切り後ろに押し飛ばす。なのはは尻餅をついて倒れてマコトを見上げる。


「なのは。お前は逃げろ。逃げる時間はオレが稼いでやる」

「えっ、でも・・・」

「良いから早く逃げろなのは!!」


そうなのはの方を向いて叫ぶマコト。しかし、なのはは小さな悲鳴をあげる。


「あははは♪逃がさない♪」


ソンジュのそんなまるで遊んでるような声が聞こえてマコトはなのはを抱えて飛び立つ。そして、また遠いところになのはを置いた後また小声で逃げろと言って、足を強く踏み込んだ。


スーパーダッシュ!!」


そうマコトが叫ぶと、彼女以外の動く速さが止まってるように見えた。実際は止まってなくすごくスローに動いてるだけだが。


「ちっ・・・カナエから長時間使うなって言われてるから、もうあまり使えねぇな・・・」


そう言いながら、技の使いすぎでキシキシと痛むのに顔を歪めつつ、ソンジュの近くまで歩く。


「・・・あれ?」


マコトはその時ソンジュの足元にたくさんのハサミが落ちてるのが見えた。先ほどまでなかったはずなのに落ちているそれをみて、マコトは視線を落とす。


「ーーーバカは見る♪」


そんな声が聞こえた気がした。実際は聞こえてないのだが、それの後に何か風を切る音と物体を切る音と。


「な、がはぁ・・・!!」


マコトが地面に膝をついて倒れる音が聞こえた。それを見たなのはは声を上げて叫んだ。赤い生々しい血がどくどくと流れて行っていた。そんな中でもソンジュは楽しそうにケタケタと狂ったように笑っていた。


「なんで・・・なんで斬られたの・・・!?」

「それはね、居合ってやつだよお嬢さん」


そう優しそうな声が聞こえて横を向くと、先ほどすぐに隠れた長身の男性。たしか、ハキーカと名乗っていたものが立っていた。


「妹様は一瞬だけなら居合斬りで風速も音速も光速も超えれる斬撃を放てるんだ・・・ここだけの話、あのハサミはね、二つに分けれることができる。それを応用して妹様は居合をできるんだ。すごいでしょ?」


そう言って張り付いたような笑みをなのはに向けた。なのはは何も言えずにその場にドスンと座り込んだ。


「な、なんであなたはそんなに笑ってるんですか・・・?」


ハキーカは。笑っていた。変わらない笑みを保ちながらなのはに気さくに話しかけてきた。まるでここは戦いの場ではないと。そして、それ以上の地獄を知っていると。そう言っていそうな、訴えてくるような笑みで、なのははおもわず恐怖で体が震える。


「さぁね。僕様がお嬢様たちと生きることを決めた時・・・人間を裏切るって決めた時には、もうこんな顔だったかもね・・・ふふふ」


そう言って彼は口を押さえて小さく笑い出す。ふふふと聞こえるその声は、いろんな感情がごちゃまぜになって聞こえてきて、なのはは尻餅をつきながらも、後ずさりをした。


ズバッ!!


なにかを斬るような音が聞こえてなのははその音が聞こえる方に顔を向ける。そこには血を流してだらんとしているマコトと、そのマコトの頭にハサミをさして持ち上げてきゃっきゃっと喜んでいるソンジュの姿であった。


「うふふふ♪そろそろ殺しちゃおっか♪」

「なのは・・・にげ、て・・・くれ・・・」


その悲痛なお願いも虚しく、なのはは腰が抜けて動けなくなっていた。ソンジュから見られる圧倒的な恐怖。それは、まだ年端もいかない少女の心に深い傷を負わせるのにはじゅうぶんだった。


「もう喋っちゃだめ♪殺される時は素直に殺されちゃいなさい♪それが一番よ♪」


そう言ってソンジュはもう片方のハサミを使いマコトの首に近づける。そして、一気に降ってマコトの首を切断しようとした。


なのははあまりの恐怖に目を瞑り、ハキーカは変わらない笑みでそれを見ていて、マコトは最後の力を振り絞りソンジュを睨みつけ、ソンジュは狂ったように目を大きく見開いた。


「あいや!またれーい!!」


そんなこの場に場違いな声が聞こえてきた。ソンジュは思わず手を止める。すると、ソンジュめがけて何かが飛んできて、それをハサミではじき返した。


「これ・・・クナイ?」


クナイが飛んできた。それを見て首をかしげると、ソンジュはその場からとっさにジャンプして離れたその場には無数のクナイと一人の少女が立っていた。


紫色のくノ一のような服装に身を包んで、髪の毛はツインテールを途中で一つにまとめてるという奇抜な髪型だった。


「これはマコト殿。お主、少々深手を負いすぎでござるよ。なのはという女子も怯えておるぞ」

「知るか、よ・・・」

「ねぇ♪なんで邪魔しちゃうの?それに、こういう時は自己紹介からってバチカンでは常識なのよ♪」

「むむ、これは失礼いたした!拙者姓は伊賀!名はあやめと申す!!と、言ってもここで戦うつもりはござらん!!では!さらばでござる!!」


そう言ってあやめという少女は地面に何かを投げつけた。すると煙がもくもくとあたりを包み込んだ。ソンジュとハキーカはおもわず顔を手で覆う。


その煙が消えた後、その場にはマコトたちはいなくなっていた。ソンジュはそれを見た後、その場にぺたんと座り込んだ。


「あー・・・その、気にしないでよ妹様。今日が無理ならまた今度にでも・・・」


しかし、ソンジュは身体中をカタカタ動かしていた。それは悲しみの震えではなく、喜びと楽しみの震えであった。


「あらあらあらあらあらあらあらあらあら♪なにを言ってるのかしらハキーカ♪悲しい?そんなこと思ってないわよ♪私はただ・・・」


そう言ってソンジュは思い切りハサミを振り回す。それを見たハキーカは逃げるようにその場から退散していった。


「あはははははははははははは♪」


そんなソンジュの狂ったような笑い声が誰もいない空間にこだましていた。彼女を止めようとするものは誰もいなかった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


【次回予告】

「拙者三重のドリームダイバーあやめでござる!」

「わりぃ・・・しばらく戦えねぇや・・・」

「なのは、もうすぐお前に試練が訪れる・・・」

「なのはなんか大嫌い!絶交だ!!」

【次回:05話 春香の夢、私の夢】

お疲れ様でした


狂気の娘ソンジュにより、ボロボロになったマコトくん。そして新キャラのあやめちゃん。物語はゆっくりと、そして確実に加速していきます。


次回も付き合ってくだされば幸いです

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