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ドリームダイバーズ  作者: は〜げん
2/26

第二話 おいでませ夢の世界へ

お正月明けってなんもしたくないですよね?私はそんな中これを書いてました

前回までのあらすじ

ど、どうも。なのはです。

前回、私の前に現れたマコトさんが実はドリームダイバーでした。その時はあまり気にしてませんでしたが、私のお父さんが無限睡眠症候群にかかってしまい、それを治すためにマコトさんたちに頼ろうとしてます……

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


タッタッタ・・・

「ふぅ・・・よし、なのはちゃん。ここが・・・って!?大丈夫!?」

「だいじょ、だいじょ・・・うっ、ぐっは・・・ゲホォ・・・大丈夫ですよぉ・・・ごふぉ!!」


大きな研究所のような建物の前に白衣を着た青年と、なのはと呼ばれた少女がいた。そして、なのはは口から血を出しそうな勢いでむせていた。


「おーさすがだぜ、カナエ。時間ぴったりだ」


そんなことをしてると、研究所から赤いポニーテールの少女。そして、今改めて見るとなのはより一回り小さく、鼻の上に絆創膏をはっている、マコトが扉を開けてやってくる。そしてその後ろからピンクのお団子少女がゆっくりと歩いてきた。


「ふん、私の未来が外れるわけがない・・・さて」


おそらくカナエという少女がメガネを押し上げながらなのはたちの方に歩いてくる。ふと気づくと、白衣を着た青年。悟が敬礼をしてカナエを見ていた。


「悟さん。別に敬礼とかしなくていいって言っただろ?あんまり敬意を払うのは、やめてほしいのだがな。君と私は種類が違う・・・っと、本題に戻そう」


そういうとカナエはなのはの手を掴んで研究所の中に入っていく。なのはは突然のことで驚き、後ろを向くが、悟とマコトが安心しろと口だけ動かして言いながらついてきたので、少しほっとした。


「さて、君は無限睡眠症候群というのを知ってるだろう?そしてそれを治療する集団。ドリームダイバーがいるというのも」

「えっと・・・はい。たしか、外から起こせないなら内側から起こせばいい。だから夢の中に入って夢の中から人を起こす仕事。それがドリームダイバー・・・ですよね」

「・・・ま、大体あってる。しかし、少し足りない言葉がある。ドリームダイバーは夢の中で人を起こすだけではない。その夢の中に存在してしまっているナイトメアを・・・おっと、もうここまで来たか。話はパ・・・Dr.トーマスに聞いてくれ。マコト。なのは一人じゃ心細いだろうから、同席してくれ」

「はいはい〜と。じゃ、行こうぜなのは」


そう言われてなのはは顔を上げると、目の前に扉があり近くに『治療室』と書いてあった。なのははゴクリと生唾を飲み込む。そのなのはを人懐こい笑顔でマコトが先導しながらその中に招き入れる。なのはは悟と一緒にゆっくりその部屋の中に入っていく。


「ん・・・あぁ、君がなのはちゃんか。いらっしゃい」


その部屋の中には、丸椅子に座っている白衣を着た見た目50代の男性が座っていた。


「おっと、まずは自己紹介から。僕の名前はDr.トーマス。ここの責任者で、ドリームダイバーのための装置を作った研究者だよ。よろしくね」


そう言いながらDr.トーマスは右手を差し出した。なのはは握手を求められてる察して、恐る恐る手を差し出す。しかし、なのはの差し出す手がピタリと止まる。


「えっ・・・その手・・・」

「ん、あぁごめん。驚かせちゃったか。これは見ての通り義手さ。昔ちょっと事故っちゃてね」


そう言いながら右手をあらぬ方向に曲げたりして、はははと笑う。なのはも引きつった笑みを浮かべて手をこっそり引き戻す。


「おい、おっちゃん!そんなこといいからなのはの親父を助ける準備をするぞ!」

「お、おっちゃん・・・僕はまだ28ぐらいなんだけどなぁ・・・」


そんな重大なカミングアウトをしながらDr.トーマスはなのはの父を運んでベッドの上にゆっくり乗せる。そんな時でも、父は幸せそうに眠っており、なのはは少し、悲しくなる。


「ほら、マコトくん。ドリームコネクターだ」

「おお、サンキュー!」


そうDr.トーマスが腕時計のようなものを二つマコトに投げる。マコトはそれを受け取った後すぐに腕に巻きつける。そして、一つをポンとなのはに渡す。なのはは少し考えた後、悟に渡した。悟はそれをなのはにかえして、なのはは訳も分からずマコトに返した。


「いやいやいや、オレに返してどうするんだよ。これはお前がつけんの」

「え、私がですか・・・?なんで・・・というか、これはなんですか?」

「これ?ドリームコネクター。これがないとドリームダイブ・・・夢の世界にいけねぇんだ」

「えっ、でもなんで私にそんなものを・・・?」

「うえ?あれ悟さん言ってない?・・・言ってない?あぁ、そう・・・えっとな、なのは。ドリームダイブってのをするには99%のやる気と1%の才能がいるんだ。で、お前にはその才能がある。ドリームダイバーのな」


そう言われてなのはは一瞬固まる。才能?そんなことを言われた気がしたが、それ以前に・・・


「いやいやいや、私にそんな才能なんてないですよ!!それ以前に、なんでそんなことを言うんです!?そ、そういえば皆さん初対面なのに、なんで私の名前を知ってるんです!?な、何を企んでるんですか!!」


なのははそう一気に捲したてる。そう言われたマコトは、頭をポリポリかきながら、口を開ける。


「ほら、カナエっていただろ?あいつが言ってたんだ。お前がドリームダイバーに入るって。そういうわけでオレらは・・・」

「だから!!」


なのははそう叫んだ。マコト達は少しやっちゃったかもしれないという顔になるが、なのはは気にせずにこえをあらげる。


「なんでそう言えるんですか!?カナエさんが言ったからって言われてもそんな信じられるわけないですよ!!私に特別な才能なんてあるわけがない・・・それより、まるでカナエさんが未来を見えるように言わないでーーー」

「見れるんだよな。これが」


そんな声が聞こえて後ろを振り向くと、先程から話に出ていたカナエが白衣のポッケに手を入れながら、歩いてきた。


「私は一日に5回ほど未来を見れるんだよ。そしてその未来を見た結果、君がドリームダイバーになってる未来が見えた」


淡々とそう語るカナエを、なのはは少し、怯えた目で見ていた。その姿をカナエはジッと見つめており、それに少し萎縮するが、勇気を振り絞ってなのはは口を開けた。それと同時にカナエも口を開ける


「次に君は、そんなはずがない!インチキはよしーーーはっ!?・・・といって口を手で押さえる」

「そんなはずがない、インチキはよしーーーはっ!?」


そう次の言葉を言い当てられて口を手で押さえる。それすら言い当てられて、なのはは助けを求めるようにマコトに視線を向ける。マコトはため息をつきながら、なのはの手をぐいっと引っ張る。


「あんまりいじめてやんな。オレの大事な後輩だ」

「ふん、思った以上に小心者だな。未来を見えるとか言った手前。あんまり言いたくないが・・・あんまり役に立たない気がするがな・・・」

「だー!うるせぇ!おい、なのは!!あいつにあんなに言われていいのか!悔しいだろ!」

「わ、私は・・・」


そうマコトに言われてなのはは顔を下に向ける。確かに悔しい。しかし、それ以上に胸がドキドキと音を鳴らしているのだ。


(才能が・・・ある・・・なにもない私には・・・才能がある・・・)


その才能という言葉は、なのはが今まで生きてきた中で一番欲しかった言葉。自分に自信がない彼女は、常に劣等感を抱いて生活していた。しかし、今の彼女には才能があると言われた。その言葉がぐるぐると頭の中を駆け巡る。そして、意を決したように口を開ける。


「わた、私!!やってみます、ドリームダイバー!!」


そう言うと、マコトはニカッと笑った。そして、なのはの背中をバンと叩く。


「よーくいった!!ま、今日はオレが先導するから、お前は近くにいるだけだけでいいぜ!よし、おっちゃん!!ドリームダイブの準備を始めていいか!」


「もちろんだよ。二人とも、ドリームコネクターは付けたかい・・・よし、付けてるな。それじゃ、お父さんのところまで行ってくれ」


そう言われてなのはとマコトは父のところまで歩く。なのはは少し震えているが、それを見たマコトは今度は優しく肩に手をおいた。


「安心しろ。お前のことはこのオレが命に代えても、守ってやる。だから安心してついてこい」

「は・・・はい!」


そう力強くなのはが返事したのと同時に手につけた腕時計がピカリと光りだし、なのはは慌ててその腕時計を上に掲げる。そして次の瞬間。


「よっしゃ、久しぶりの大仕事だぜ!」

「えっ、ちょっ、まっーーー」


二人がその場でばたりと倒れた。そして二人をベッドの上に悟が運ぶ。


「ドリームコネクター・・・着用者を強制的に眠らせて、精神を他人の夢に送ることができる装置・・・いつも思いますが、これだけ聞くと危ないですよね」

「はっはっは。まぁね。僕も最初あの人に教えてもらうまでは疑ってたさ。でも、実際は安全だからね」


そう言いながらDr.トーマスはクルリと回り机の上に置いてある設計図に手を伸ばして何かを書き始めた。それを見た悟は、では。と一言だけ言って、部屋から出て行った。


「パパ。いったいなにをしてるの?」


二人だけになった瞬間、カナエがそうDr.トーマスに声をかけた。Dr.トーマスはにこりとほほえんで、カナエの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。


「これから必ず役に立つものだよ。きっと、ね」

「そう・・・無理はしないでね。パパが倒れたらと思うと私・・・」

「ははは、ありがとう。でも、カナエも無理をするなよ?もっと気楽に生きていいんだ。カナエの周りの人がカナエを化け物扱いするはずがないんだから」

「・・・お言葉だけど、パパ」


そう言ってカナエはDr.トーマスとか離れて、マコトたちを見下ろす。二人はすやすやと眠っており、仕事をしているとは思われなそうだった。


「私は、正真正銘の化け物なんだ。私が、知識を求める限り・・・ね」


そう悲しそうに呟いたカナエを、Dr.トーマスは少し遠いものを見るような目で、見ていた。



◇◇◇◇◇



「アギャァァァアァアアァアァァァ!!!」

「もう少しの辛抱だからな、あんまり叫ぶな!なれたら痛くないと思えるぞ!」

「結局痛いんじゃないですかアガガガガガガッ!!」


先ほどから痛みによって声を荒げている少女はなのは。ドリームダイブというのは、なんだか身体中が締め付けられるような走り、身体中がキシキシと痛む。


「ま、オレも最初はそんな感じだったからあんまり言えないけどな」

「知りませんよ痛い!!なんか髪が引っ張られてる・・・って!マコトさん!!なんか光ってまいたぁい!!」


痛みに悶えながらちらりと横を見ると、マコトの身体が白く光り始めていた。ふと自分の手を見ると自分の手も。いや、体も白く閃光し始めていた。


「なんですかなんですかなんですかこれぇ!!!」

「よし、なのは!こっから大事なことを言うぞ!!自分の頭の中に自分の憧れの姿を想像しろ!!それがお前のドリームダイバーとしての衣装となる!」

「いきなり何を言ってぎゃぁぁあぁ!!」


実際もう痛みで何も感じれなくなってきたなのはだが、頭の中になりたい姿を思い浮かべる。それは、5年ほど前にテレビで見た、ある姿であった。


(あの女の子は、テレビの中で見た本物の魔法少女・・・みんな、忘れてるけど・・・私もあんな風にって!!いたい!やっぱ痛い!!)


なのはは最終的に痛みによる叫び声を上げて、マコトは大声で笑いながら夢の世界に落ちていった。まだ、この時、なのははあんまり夢の世界というのを深く考えてなかった。



◇◇◇◇◇



ひゅーーーー・・・・・


「ひゃん!!」

「よっ・・・と。おいおい、大丈夫か?」

「いてて・・・はい、大丈夫で・・・って!!」


夢の世界にダイブしたとき、なのははとても高いところから落ちてきた感覚があった。実際そうかもしれない。そして、なのはは尻を強打。マコトは綺麗に着地した。そして、マコトをなのはは少し驚きの目で見ていた。


「マ、ママママ・・・マコトさん・・・!!なんなんですかその格好!!」


そういい、なのはは震えながらマコトを指差した。そのマコトの姿は確かに変わっていた。髪は変わってないが、銀の胸当てに悪く言えば先住民が履いてそうなズボンを鉄にしたようなものを履いており、これまた銀色の膝当て。そして、銀のブーツを履いて、腕には動物のような大きなグローブをつけていた。


「あーこれ?これは、オレの変身姿だ・・・へへ、なのはも可愛い感じに変身してるじゃねぇか」


そうマコトに言われてなのはは改めて、自分の格好を見てみる。その姿はまさに魔法少女という感じであった。オレンジ色のドレスに、所々カラフルな花の模様が散りばめられている。なのははその場でくるりと回ってみた。


「・・・えっと、これが私?ですか・・・?」

「おお。それがお前が夢見た姿だ。オレは昔見た映画の主人公の姿だな」


そう言いながら、誇らしげなポーズをとる。しかし、その顔に少し陰りが見えたような気がした。


「なななな・・・・!!」

「お?どうしたのかい?へへへ、やっぱりうれしーーー」

「なんなんですかこれー!!!!」


本日おそらく三度目のなんなんですかこれという言葉を虚空に向かって叫ぶなのは。


「このオレンジの衣装!そしてこのふわふわ!とてもかわ・・・いやいや!とてもアレだよ!!なんか・・・あの・・・えっと・・・」

「今のお前の気持ちを代弁してやろうか?」


マコトはそうニヤニヤしながらなのはの方に近づいていく。なのはは少し赤らめた顔をマコトの方にゆっくりと向けた。


「あぁ!なんて可愛らしい格好なのかしら!まさに夢にまで見た格好だわ!!でもここで変に喜ぶと、マコトさんが調子にのる・・・ここはあえて怒ってるようにしましょう!!・・・だろ?」


そう言われてなのははウググとおし黙る。まさにその通りなのだ。自分が過去に見て、憧れて、考えた魔法少女の格好なのだ。嬉しくないわけがない。なのははしばらく照れ隠しのようにはにかんだ。


さて、と一言おいてマコトが歩き出す。いきなり動き出したため、なのはは少し転びそうになりながらも、マコトの後ろについていく。


しかし、この夢の中。どこかで見たことがあるような気がする。景色も、匂いも何もかも


「あの・・・ここって夢の世界ですよね・・・?」

「あぁ、そうだぜ。そしてこの夢はなのはの親父さんが夢に見ている世界だ・・・たぶん、お前の家の周りの景色みたいだと思うぞ」


そう言われると、確かに自分が学校に行く時や、春香と遊びに行く時に見たことがある景色であった。だが、違和感があるそのことをマコトに言うと、そりゃ夢の中だ。多少の違和感はあるだろうよ。と言われたが、それだけではない気がする。まるで誰かが隠れながら自分たちを見ている。そんな風に建物等が配置されてるように見えて、なのははぐるりと周りを見渡す。


「・・・あっ!マ、マコトさん!あそこみてください!」


なのはは小声でマコトにそう言う。何か、鉄の玉のようなものが見えたのだ。普段のこの景色にはあるはずのない、それが。


「んあ・・・なんもねぇじゃねぇか。たくっ、緊張しすぎだぜ!!もっとリラックス!リラックス!」

「あ、あれ?おかしいな・・・絶対何かいたと思ったのに・・・?」


だが、マコトが振り向いた時にはそこには何もなく、ただの景色が広がっていた。マコトは力いっぱいになのはの背中を叩いて、行くぞと声をかけてズンズン進んでいく。


「あ、待ってください〜!!」


なのははそう言いながら、少し小走りで前を行くマコトについて行った。先ほどの景色は気のせいだと自分に言い聞かせながら。


「・・・よし、行ったかな・・・?ふぅ、怖い怖い・・・まさか僕様の気配に気づくなんて・・・」


そう言いながら、足枷や首輪をつけた紫髪の男性が、ビルのようなものの屋上でそう静かに笑いながら言っていた。一見物腰が柔らかそうに見えるが、紫色のコートの下に着ている赤い炎のような色に大きなドクロが書いてあるシャツはえらく不釣り合いだった。


「ふふ・・・あの子はまだ、発展途上。でもいつかは輝くスーパースター候補・・・いいね、凄いよ。僕様が出来るのは演出のみだけど・・・うん、とても楽しくできそうだ!・・・しかし・・・」


その青年は少し痛がるような表情をした後、腰の部分をさすった。そこは少し青く腫れており、そこをさするたびに、痛みが走る。


「うーん、あの赤髪の子・・・あの子凄いなぁ。『一瞬で僕様の後ろに来て殴り飛ばしたんだもの・・・』あの子も一応役者に追加しておくか。だって・・・」


そう言って彼は変わらな笑みを浮かべた。変わらなすぎて、まるで顔面にその笑みが張り付いているようであった。


「『途中退場者』も・・・物語を盛り上げるために必要だしね・・・ふふふふ」


そんなことを言いながら、その青年はそのビルから降りようとして、屋上から降りる階段に通じる扉に手を伸ばした。


「・・・あれ?」


しかし、ドアノブに手をかけて、何度回してもあかない。押しても引いてもスライドしてもあかない。


「・・・ふふふ!いいね!やっぱり世界って僕様には冷たいんだねえぇえええぇ!!!」


そう叫びながら、彼はビルの屋上から飛び降りた。しばらく悲痛な叫び声が聞こえてのは言うまでもない。



◇◇◇◇◇



「・・・?なんかさっき叫び声聞こえませんでした?」

「気のせい気のせい気にするなー・・・ここからか・・・よし、お邪魔するぜー」


なのははマコトが入ろうとしてる家を見てみた。そこはどう見てもなのはの家であった。やはり、夢の世界は自分の生活してるところが多い。それもそうか。この夢を見てるのは、なのはの父なのだから・・・


ドゴーン!!!


突然、大きな爆発音が響き、なのは一気に現実(と言ってもここは夢なのだが)に意識を戻した。


「ふぇ!?な、何が起きたって何やってるんですか!!??」

「あ?あーすまんすまん。ドアあかねぇからぶっ壊した」


そう言いながらマコトは腕をぐるぐる回していた。いくら夢の世界だといえど、自分の家が破壊されるのを見ると、少し心にくるものがある。


そそくさと入っていくマコトになのはは急ぎ足でついて行き、階段を駆け上がる。そして、マコトはまた勢いをつけてパンチをして、扉を壊す。


「あ、ここは・・・」


そこは父が仕事をするところ。つまり、父の仕事場だった。そして、父が無限睡眠症候群にかかったところ。


「お、お父さん・・・!?」


そこには机に座って小説を書いている父の姿があった。それを見てなのはは走って抱きつく。その姿をマコトは少し悲しいものを見るようになのはを見ていた。


「お父さん!早く起きようよ!!ここは夢の世界なんだよ!はやく!ねぇったら!!」




「え?何を言ってるんだいなのは。ここは夢の世界なんかじゃないよ?」

「・・・え?」


そういって、なのはの父はとてもキラキラした瞳をなのはに向けていた。なのははその瞳を見て一歩下がる。


「仕方ねぇんだ。ここは夢の世界。夢の世界から見たら、オレらの現実の世界が夢なんだ・・・おっと、そろそろお出ましだ」


そういうと、マコトはなのはを脇に抱いて窓から飛び出した。なのはは何が起こったかと、家の方を見た。すると、先ほどまでいたところから何かが飛んできた。


「ギシャャャャャャャャ!!!」


それは、大きな本に手足を生やした・・・なんかもう。それしかいうことがない。よく言えばシンプル、悪く言えばダサい。


「よっしゃ!今から広いところに出るぞ!!舌を噛むなよー!!」

「えっちょ!いやぁぁあああぁぁ!!」


そう言いながら、マコトはいきなりカクンと曲がって地面に向かって急降下を始めた。それを見た本の怪物も一緒についていく。


ズザッと音を鳴らしながら地面の上を滑りながら勢いを殺すマコト。本の怪物はドシンと、地面に大地に立った。


「あれがナイトメアだ。気をつけろよ」

「え?なんですって・・・」

「オーディスイズナイトメア〜ディスイズデンジャーキヲツケヨー」

「嫌なんで突然英語!?先ほどまで日本語で会話してましたよね!!というか最後ただの日本語!!」


そんなことを言ってたからか、目の前にいたナイトメアというこれはチャンスとばかりに殴り込んできた。ゴウッと風を切りながら突っ込んでくるそれに対して、なのはは目をつむりその痛みが来るのに備えた。


ドシン!!


そんな大きな音が聞こえた、なのはは恐る恐る目を開けた。そこにいたのはナイトメアという化け物と


「なぁにオレの可愛い後輩に手を出そうとしてるのかなぁ!!」

「マ、マコトさん!!」


マコトの姿であった。マコトは顔に青筋を浮かべながら、ナイトメアを大きく弾きかえす。遠くに飛ばされるナイトメアをニヤリと見た後


「オレの速さについてこれるか?」


そう言うと、なのはの目の前からマコトの姿が消えていたかと思うと、ナイトメアの目の前にマコトが移動していた。それを見たとき、一つ強い風がゴウッと吹いてなのはに当たる。


「す、すごい!このままいけばマコトさんがナイトメアとかいうのを倒せ、る・・・」


なのはは、マコトがナイトメアと戦ってるのを見て、少し考える。なのはは才能があると言われて、この戦いに身を投ずるときめたのに、なぜマコトばかり戦っているのだろうか。確かに、まだなのはは一切慣れてない。マコトがお手本を見せてるということならそれで納得はいく。


(これで、いいのかな・・・私は、これで。何も変わらないけど・・・何も変えれないけど)


そんな時、黒い何かがなのはの横を通り過ぎて、壁に当たった。なのははゆっくりとそれを見ると、その黒いのはドロドロとしていて、まるで・・・


「え、インク・・・?」

「おい!バカ!!あぶねぇ!!」


この時、後ろを向いたのがいけなかった。ナイトメアがニヤリと笑ったようになり、なのはに向かってインクが飛んでくる。


(あっーーー)


だんだんと近づいてくるインクをなのははただぼーっと見つめていた。先ほどのあれから見て、おそらく無事ではすまないだろう。まぁ、でも何もできない私がここで消えても・・・


「あぶねぇって言ってんだろ!!」

「えっ、きゃっ!!」


瞬間、なのははマコトに突き飛ばされていた。しかし、なのはは攻撃を受けなかったが、マコトは直接背中にインクを浴びた。


「ちょ!大丈夫ですか!?」

「へへ、まぁ、な」


ドサリとマコトは膝をついて倒れる。背中が少し焼けたように溶けており、苦痛に歪める顔が痛みを表していた。


「マ、マコトさん!!なんでーーーー」

「おいなのは・・・この後に及んで、まだ自分はいらない子とか思ってんじゃねぇだろうな・・・」


震える声でマコトはなのはにそう言った。その言葉を聞いてなのは自分の心臓をドキンと心臓がなるのを聞こえた。


「いいかなのはよく聞け・・・ドリームダイバーってのは見ての通り危険な仕事だ・・・現実にいるやつらだって、寝てる時に起こされたら切れる奴もいる・・・そしてここは夢だ。ひどい時には命を落とす奴もいる・・・だからこそ、お前の才能は素晴らしいんだ」


そしてマコトはなのはを連れて走り出す。それを見たナイトメアはまた沢山のインクを飛ばしてくるが、マコトは全てを避け続ける。


「だがな、素晴らしい才能でも、お前はまだ子供だ。命を張るのはまだ早すぎる。だから、ここからはお前が選択しろ。誰に流されることなく、自分で決めろ」


マコトはそう言って、なのはを近くの木陰に隠した。まだ困惑した顔をするなのはの頭を軽く撫でた後、ビュンと音が聞こえた後はすでにその場にいなくなっていた。おそらくナイトメアと戦ってるのだろう。


(死ぬ危険性がある・・・いや、多分死ぬ・・・だってあんな化け物私が勝てるわけがない・・・マコトさんだってギリギリだと思う)


そう考えながら、なのはは自分の体を見てみる。フリフリな魔法少女の姿。そうだ。あの時テレビで戦っていた魔法少女も、私より小さな女の子だった。あの子もこんなに危険なことをやってたのだろうか。


「ぐぁ!!」


マコトの声が聞こえたかと思うと、ドシン!!と何かにぶつかる音が聞こえた。なのはは足が震え始め、ここから逃げ出そうかと思った。しかし、それは・・・


(マコトさんを見捨てることになる・・・そしたら、マコトさんは・・・死ぬ?)


そして、今動けるのは私しかいない。と口の中で繰り返す。なのはは、震える足を何度も叩いて、立ち上がろうとする。


(やだ・・・私のせいで人が死ぬのなんて、もう嫌だーーー!!)


だが、足は動かない。あぁ、自分ははなんて弱くて情けない人間なんだ。そんな自分が嫌になり震える足は止まることを知らなかった。そんな中でも、マコトの叫び声と、何かにぶつかるような音がなんども聞こえた。


なのはは今、頭では動かないといけないと自覚しながらも、体がそれを拒絶していた。なら、動かせ。動かないといけないようにしろ!!


「ウワァァァァァァァァァ!!!!」


そう叫びながら、なのはは走り出した。さぁ、叫んだぞ!!私を狙え!そして攻撃しろ!!と言わんばかりに目をつむり叫び続けて走る。どこまでも。どこまでも・・・


ドンッ


「いたっ!?なに、え、壁!?!?」


突然壁に当たって、なのはは頭を押さえながら倒れる。すると横から先ほどからよく聞く声が心配するように話しかけてきた。


「おいおい、なに叫んでんだ?もう仕事は終わったんだが」

「ふぇ?」


見るとマコトが片手に何かどろりとしたものをつけてる状態で立っていた。なのはは色々言いたくてなんとなく立ち上がり震える手をマコトに突き出した。


「さっきまでの叫び声は?」

「戦う時って声出すだろ?あれだよ、アレ」

「何かにぶつかる音は・・・?」

「あれ?ナイトメアを壁にぶつけたりとか・・・質問終わりか?そろそろお前の親父さんも目がさめる頃だろうよ」


そう言って、マコトは大きく伸びをして前を歩き出した。なのはは頭がグルグル回り始めて混乱する。そしてへなへなと地面に座り込んだ。


「あ、そうだ。おい、なのは!!」

「はい・・・?」


突然マコトに呼びかけられてなのはは顔だけをあげる。マコトはニコリと笑い親指を突き出した。そして、また大きく笑い。


「あの時飛び出してきたお前、かっこよかったぜ!」


そう声をかけられてなのはは震えるように感動した。自分がしたことは無駄だったかもしれない。けれど、少なくとも自分には少し意味があった。そんな風に思えて自然と笑みと涙がこぼれる。しかし、涙は見せるわけにはいかないと、急いで涙を拭い。


「ありがとうございますーーーマコト、先輩!!」


そう叫び、なのはマコトの後ろ姿を追いかけて行く。きっといつかは、マコトたちの役に立てるようになりたい。そう願いながら。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【次回予告】

「おはよう、お父さん」

「基本オレは10周走ってるな」

「あの子は危険すぎる。が、場合によっては・・・」

「ドリームダイバーについて教えてくださらない?」

【次回:03話 お嬢様。アリス様】

お疲れ様でした。

等々夢の世界にダイブした二人。しかし、なのはの勇気は空回りに終わりました。ですが、マコトはそんな勇気でも振り絞ったことに対して敬意を払い、「かっこいい」とコメントしております。いやぁ、いい先輩ですね。

では、次回もまたお付き合いいただきたく存じあげます

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