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ドリームダイバーズ  作者: は〜げん
13/26

第十三話 さまーばけーしょん 後編

前回の続きです

「早く来すぎたかなぁ?」


そんな困惑するような声を出しながら、オレンジ色の髪の少女。なのはが目の前にあるのを見つめる。今日は、友人などと一緒に、アリスというお嬢様が住んでいる別荘に遊びに行くという話であった。


まず、集合場所に行くと、悟となのはの学校の教師。春樹と、その春樹と妹美冬がすでにそこにいた。春樹は保護者的な意味できたらしい。その春樹は少しドキドキとしているように見えた。


服装は、悟は薄いジャンバーに青いジーンズ。そして枕のネックレス。そして、美冬は水色のパーカーに緑のミニスカートで、ルーズソックスを履いていた。春樹は『ジャスティス』と書かれたTシャツを着ていた。


「あっれー?みんな速い……て、あれ?先生も……?」


次に来たのはアホ毛の少女。春香と、なのはの仕事仲間である、あやめとマコトであった。3人ともいつも通りの服装で、軽い荷物だけを持ってきていた。


「……えっと、あと来るのは……あかねさんに……三月さんと……カナエさん……?」


なのはがきている人を数えながらそう言う。すると突然背後から車のクラクションが聞こえてきた。何事かと全員振り向くと、そこにはボロボロな車があり、それから人が降りてきた。


そこにいたのは、あかねと、ラフな格好をしたあかねに似た女性と女性にしては背が高い、ロングスカートをはいた女性と、なのはも見覚えがある男女二人であった。


「ふいー!とーちゃく!いやぁ、疲れたねぇ、あかね!」

「る、るせぇ……あんな危険な運転しやがって……もっと落着けよ、母さん……」

「でもでも!慌ててるあかねちゃん可愛かったというか!素敵だというか!うふふふふ!」

「ははは……若い子は元気だね。お母さん」

「そうね!楽しいことは良きことなり!」

「て、ママ!?パパ!?どうしてここに!?」


なのはが驚くのも無理はない。そこにいたのは、あかねの母親の増穂。そして、あかねの友人の千鶴。あとの二人はなのはの両親であった。二人はなのはを見つけてヤッホーと手を振る。


「あら?そういえばピンク髪の女の子は?」


増穂がそう言って顔をキョロキョロとして辺りを見渡す。すると、ピンク髪の白衣を着た少女が、ふらふらした足取りでこっそりと何処かに行こうとしていた。それを見た増穂は走って行き、ガシッと抱き上げる。


「は、離せ!この!私はいかんぞ!そんなよくわからないところ……知識は深まりそうだがそんな問題ではない!!私はインドア派だ!!」


ピンク髪の少女……カナエがワーキャー騒いでる中、なのははこっそりと両親になんで来たのか聞いてみた。一応話したが、そのときくるとは言ってなかったのだ。


「いやぁ。増穂ちゃんとねこれ楽しそうだなぁって話して、じゃあ行くかぁ。的なね?パパの小説はどこでも書けるしね」

「……もともと今回の話は僕達を再登場させるために作ったらしいけどね……」


父親が最後ボソボソと呟いたが、なのははなんと言ってるが聞こえず首を傾ける。そんなこんなしてるうちに、カナエは増穂によってズルズルと引きづられて連れてこられた。


そんなこんなで全員集合。アリスを外したら、13人という大所帯である。さ、あとはアリスが来るだけだと、皆で待っていた。


すると、バババとプロペラ音が聞こえてきて、皆が空を見て目を丸くする。なのはと春香はヘリコプターか。と思いながら、同じように空を見上げた。。そこにあったのは確かにヘリコプター。


「……って!?かずおおくない!?」


春香が驚きの声を上げる。そう、ヘリコプターが何十もの真上を飛んでいたのだ。まさかここまで来るとは思わず、なのははたらりと冷や汗を流す。


「お嬢様……怖い……」


ぼそりとなのははそうつぶやくのに周りの人は無言で頷いて肯定する。そのヘリコプターの一つからひょこりと赤い髪の少女。アリスが顔をみせる。


「みなさーん。どれか好きなのに乗ってくださいまし〜!!」


そんな贅沢か贅沢じゃないかわからないことを言われて、一同は困惑しながらも、一人一人違うヘリコプターに乗っていった。



◇◇◇◇◇



「うみきたー!!!!」


ヘリコプターに運ばれて、どこかに来たなのは達。開口一番春香が喜びに満ち溢れた声を上げた。なのは達も声は出さなかったが、どこかワクワクはしていた。


そして、アリスの付き人であるじいやの案内のもと、ぞろぞろと別荘へと向かう。その別荘は木造ペンションで、潮の香りと木の香りがとても心地よく漂っていた。


「キッチンはあるのね……でも、こういう時ってやっぱり外でカレーよねぇ」


そう、増穂が言うと春香が元気よく反応する。それならばと、皆でカレーを作る準備を始めようとする。しかし、時間はまだたくさんあった。


時間的にはまだ午後が少し過ぎたあたり。そして広がる海に遊び盛りの子供達。これから導かれる結論は……


「青い海!青い空!そして青髪の美少女!!」

「春香ちゃん……自分で言ったら終わりだと思うなぁ……」


皆おもいおもいの水着に着替えて、海へと駆け出していく。少女達が遊びに駆け出す姿を春樹と悟は眺めていた。


春樹は周りを緊張するように見渡している。一応安全のためという名目があるが、春樹としては可能ならあかねの水着を見たいというのが大きかった。


「なぁ、春樹。西園寺とはどこまで行ったんだ?」

「はぁ!?い、今そんなこと聞くか!?」


悟の何気ない質問に春樹は慌てた様子でそういう。そして、あーだとかうーだとかそんな感じで唸るだけで返事は一切なかった。まぁ、あかねと見に行くはずの映画のチケットを直前になって悟に渡すあたり、あまり進展はしてないだろう。


しかし、あかねのことを思って早5年。あかね自身は、そのことに気づいてないことを考えると、少し悲しい。


「まったく。西園寺も早くしないと誰かに取られるぞ」

「はぁ!?そ、そんな、はぁ!?なにいってんだおま!?」

「…………」

「……ごめんなさい」


悟の無言の威圧に春樹は頭をさげる。春樹は何度か悟にこのことについて相談を多くしていた。しかし、何一つその相談に帰ってきた答えをまともにこなされたことは一度もない。


「……まぁ、あいつのことは好きだぜ……でもさ、いざ口に出そうとするとなんというか……」

「へぇー春樹にも好きなやついるんだな」

「るせぇ!ヘタレ言うな……って、あれ?誰だこい……」


そう言いながら、先ほど聞こえてきた女性の声の方に首を傾ける。何度か聞いたことがあるその声の持ち主はニヤニヤしながら、春樹の方を見ていた。


「あ、あかね!?」

「んだぁ?そんなに驚くようなもんか?……へへ、お前にも名前の通り春がやってきたんだな!いやぁ!うまくいくように祈ってるぞ!」


そう言ってあかねはバシンバシンと春樹の背中を力強く叩く。春樹は力なく笑うしかなくそのあとあかねが言った、もうすぐ準備終わるから早く戻ってこいって伝えといてという言葉も耳を通り抜けていた。


そしてあかねが帰って行ったあと、春樹はその場にうなだれた。悟がドンマイとかと励ましていたが、春樹は聞くほど余裕はなかった。


「なぁぁぁぁぁぁ!!最悪だあぁああぁぁっ!!」


悟は落ち着け落ち着けと言ってるが、頭の中では先ほどのあかねのセリフに少し引っかかりを覚えていた。


「春樹も、ね……」


ぼそりと呟く悟の声と、春樹が大声でなのは達を呼び戻す声は同時に聞こえた。あかねが何を思ってるかは、あかねにしかわからない。



◇◇◇◇◇



カレーは文句なしに美味しかった。初めて外で食べたが、家の中で食べる時とは違う味を感じられて、なのはたちは満足であった。


「なーのーはーちゃん!」

「うぇ?……あ、千鶴さん……でしたっけ?」


千鶴と呼ばれた女性は人懐っこく笑いながら、なのはに抱きつく。なのはは、年上なはずの彼女からなぜか、気さくなオーラを感じれて、ほぼ初対面なはずなのに、自然に顔がほころぶ。


「で、何のようですか?」

「え?……うーん……何となく、かなぁ」


そう言って千鶴はえへへと笑う。なのはもつられて笑うが、実際こんな暑い中、ずっと抱きつかれるのは少々億劫である。


それがわかったのか、千鶴は少し申し訳なさそうな顔をしてゆっくりと離れる。そして、場所を変えて話をしようと持ちかける。


皿などの片付けを終えて、ベランダに千鶴と一緒に腰掛けて、暫く向かい合う形になる。何と言えばいいか、が、千鶴が話そうと持ちかけたのだ。待っていれば話を切り出すだろう。


「最近さぁ……」

「……はい。最近どうしたのですか?」

「最近。シリアスが足りないよねぇ……」

「……は?」


突然言われたその言葉に対して、なのはは思わず、は?と聞き返す。千鶴はごめんごめんと軽く謝りながら、大きく伸びをする。その時、大きな胸のあたりが揺れて、なのはは同性ながら、そこを凝視してしまう。


「さて、本題。なのはちゃんって何か悩みとかある?」

「悩み……?……いえ、特には……」


なのはのその答えに、千鶴はふぅんと、口から声を漏らす。まるで、悩みがあると知ってるようなその声に、少しびくりと体をこわばらせてしまう。


「じゃ、少し質問していい?1足す1がなのはちゃんが2って言ってるのに、周りの人が3って言ってたらどうする?」

「えっ……それはもちろん、答えは2ですし……」

「本当に?」


そう言われてなのははまた押し黙る。はい本当ですとは言えない。何故なら、何となく彼女はわかっていた。


「なのはちゃんはきっと……3って言っちゃうと思うのよねぇ」


そう。なのはは自分に自信がないから、周りに流されやすい。最近少し変わってきたが、それでも根本的な部分は変わりがない。


「まぁ、黙っちゃうあたり……予測通りだね」

「ご、ごめんなさい……」

「あ、謝らなくていいよ。うん。謝って欲しいからこのことを言ったわけじゃないの……うーん……」


そう言って千鶴は少し考えた後、そうだと言ってまた口を開ける。なのはは何が来るかと待つ。


「少し昔話をしていい?……昔ね、正義の味方なのに、とてつもなく弱いヒーロー……いや、ヒロイン?とにかく、そんな子がいたのよ」


なのはは何となく、その正義の味方に少し心当たりがあった。テレビで見たあの少女。あの少女に憧れを持っていたなのはは、本当に、本当に、何となくわかった。


「その子は、何度もなんどもボロボロになったの。でも、それでも何度もなんども立ち上がった。そして、彼女は勝ち続けた……なんでか、わかる?」

「……わかりません。なんででしょうか?」


なのはは、そうぽろりと口にする。後半はなんといったか、千鶴にもなのはにもよくわからなかったが、それほど、まだ声が小さかった。そして、それもまた、自信のなさの表れか。


「簡単よ。彼女は、大切な仲間がいたの。大切に守るべき人達がいたの。だからこそ、自分に強い自信があった……なのはちゃんにはいるかな?そんな人達」

「……勿論です。春香ちゃんに、三月さん……それに」


少し間を置きながら、なのははポツリポツリと友人の名前を挙げていく。それを聞いてた千鶴は、うんうんと頷いてそれを聞いていた。


「本当かな?」

「……は?」


本日二度目の間が抜けたような返事。それを聞いたあと、千鶴はまた口を開ける。


「なのはちゃんは怖いのよ。きっと。その女の子と違って、戦った後に、嫌われるのが怖い。でしょ?」

「……どこまで、知ってるんですか?」

「んー?小野くん、隠し事下手だからなぁ」


小野。というと、悟のことか。どこまで喋ったかは気になるが、しかし、それは必然かもしれない。ドリームダイバーの研究所によくいる女の子。ここでほぼ、ドリームダイバーの仕事をしてるとバレれだろう。


「なのはちゃんのことだから、多分一度も戦闘には参加してないんじゃないかな?やるとしてもサポートぐらい?」

「そ、そんなこと……!!」


いや、そんなことはある。なのはは思い出していく。実際戦った回数は数あれど、相手に攻撃したのは一度か二度。他はただついてきただけか、能力を使ってのサポートがメインとなっている。


なぜ戦えないのか。自分でも少し不思議に思える。千鶴がいうみたいに怖いのだろうか。自分の手によって友人が失われることが。例え、自分が悪くなくても。


「千鶴さん。あなたは一体……?」

「ん?私?……そうだねぇ」


千鶴はそこで少し言葉を止める。そして言葉を探すように悩んだあと、ゆっくりと口を開ける。


「ただの、先輩風吹かしたい魔法少女……かな?」


その言葉が意味するのはよくわからなかったが、なんとなく、その時千鶴がとても、幼く見えた。



◇◇◇◇◇



「出番少なくない?」

「突然どうしたんですか……。兎に角、子供達には遊んでもらって、あたし達が片付け等をしないと……」


なのはの母親が、いろんな意味でギリギリな言葉をつぶやいたが、それに対してあかねが正論で返す。


それに対してなのはの母親はあーだこーだ文句を言いながら、昼飯の片付けをする。文句を言いながらも、どんどん片付けを終えていくのは、さすが主婦といったところか。


そういえば。あかねは考える。なのはの母親は、なのはがあんなめにあってるのを知ってるのだろうか?一度聞いた、マコトのナイトメアとの戦闘。それは、まだ10歳の少女が受けるにしては重すぎるその戦いは、聞いてる方をヒヤリとした。


あかねは、あの。と一言おいてそれとなく聞いてみた。するとなのはの母親はすぐさま、知ってるわよ。と、答えを投げた。


「私はあの子の母親よ?あの子がやってることぐらいわかる……というか、許可したのは私だしね」

「で、でも……そしたら……」


なんであんなめに合わせてるんですか?という言葉をぐっと押し込む。他人の家庭の事情に、無闇矢鱈に顔を突っ込むべきではない。


「なんであんなめに合わせてまで戦わせてるかって?」

「っ!?な、なんでわかったんです?」

「何年母親やってると思うのよ。ただでさえあの子は自分から喋らないのだから、私が察してあげないといけないしね」


流石は、母親か。あかねは予想以上に高い洞察力に思わず感嘆の声を漏らす。もしかしたら、増穂も気づいていたのかもしれない。そう思うと少し申し訳なくなる。


そうね。と、なのはの母親は、皿を洗いながら、口を開ける。あかねも皿を拭きながら、答えを待つ。


「ん〜そんな大きな理由はないわ。ただ、あの子が初めて……自分で主張したのよ。やりたいって。それを尊重するのが、親の仕事じゃない?止める理由もないしね」

「……そんなもんですか」

「そんなもんよ。親ってそんなもん。血は繋がってるけど、それだけ。一緒に暮らしてるけど、そんだけ。子どもの行動を止める必要はないでしょ?ま、悪いことするなら全力で止めるけどね」


そんな話を続けていたら、いつの間にか皿洗いが終わっていたらしく、なのはの母親が疲れたわ〜とか言いながら、キッチンから出て行った。あかねは、出されていた皿を拭きながら、色々と考える。


しかし、どう考えてもわからない。あかねが母親ではないだろうからか、親と子の関係というのがわからない。


「……あれ?人いたの?」

「ん……あ、えっと、なのはちゃんのお父さんですね。こんにちは」


あかねが挨拶すると、ジーパンに長袖シャツ一枚というラフな格好の男性。なのはの父親が優しそうな声でこんにちはと挨拶を返した。


そうだ。あかねはまた思う。この人にも少し聞いてみよう。少し、好奇心もありあかねは先ほどと同じ質問をなのはの父親に投げた。彼は、コーヒーを作りながら、少し間をおいて口を開ける。


「そうだなぁ、僕も、なのはがしたいって言ったから、それならという感じかな?ははは。あまり面白い答えじゃなくてごめんね」

「そ、そんなことは……」


ある意味予想通りななのはの父親の答に、あかねは顎に手をついて少し考える。てっきりなのはは二人には秘密にしてるものだと思っていたが、実際はそうではなかった。


もし。もし自分も母親になって子供がができたら、そう思うのだろうか。もし、結婚したら……結婚、したら。


「ふん!!」


あかねは突然叫び、頭を壁に叩きつけた。突然の行動になのはの父親は大丈夫!?と心配そうに声をかける。あかねは頭を抑えながら、大丈夫ですと答えた。


何を馬鹿なことを考えてるのだろう。結婚なんて、そんなことできるはずがない。そもそも、自分のことを好きになる人がいない。そもそも、自分が気になるやつはもう好きな奴が……


「なに考えてんだあたしはぁ!!」

「あかねちゃん!?本当に大丈夫なの!?」


今度は、あかねは自分の顔を自分で殴り始める。それをなのはの父親は焦りながら、落ち着いてと声をかける。あかねは顔から血を出しながら、何とか平静を取り戻す。


「す、すいません……すこし、取り乱しました」


あかねは血を拭いながら、そう謝る。なのはの父親は、急いでタオルを持ってきて、あかねに渡す。


あかねは顔をタオルで拭きながら、頭の中で自分に突っ込む。なにを考えてるのだと。自分でも馬鹿なことをしてると、思う。しかし、すこしだけ、あの男性の顔がちらつくたびに、よくわからない感情が押し寄せてくる。


これが俗に言う……とまた考えるが、そんなわけないと自己完結。そもそもあいつは好きな人がいるって言ってた。そんな人をこう思うのはやはり、というか普通におかしい。


「あぁー!!もう!めんどくせぇ!!」


あかねは突然そう叫んでキッチンから走って出て行く。途中何度も壁に当たったようでどんどん音が聞こえ、やがてドアを勢いよく開ける音が聞こえて、バン!とドアを閉める音も聞こえた。


一人残された、なのはの父親はすこし呆然とした後、コーヒーを一口飲んだ後。


「……若いなぁ……」


としみじみと呟いた。その後あかねが入った部屋から、バタバタと暴れる音が聞こえて、なのはの父親は思わず顔がほころんだ。



◇◇◇◇◇



「はぁ……」


一人の女性が恋に悩んでる時、一人の少女はこの世の恨みがあるかのようなため息をもらした。メガネをかけていつものような白衣に身を包んでいる彼女は、カナエと言った。


子供のように見えるが、とてつもなく頭が良く、父のように慕うDr.トーマスという科学者のもと、日夜研究をしている。自称天才。他称天才。それが彼女、カナエという存在であった。


そんなわけだが、彼女はあまり外で遊ぶのが好きではなく、インドア派と自分で言って研究所から一歩もでない日もある。研究所で大体のことはできるのだが。


しかし、外に出なくてもなぜか彼女は運動神経はかなりいい。噂じゃ、マコトと同等かそれ以上の運動神経の持ち主らしい。


そんな彼女だが、先ほど書いたように、この旅行にはあまり乗り気ではなかった。あまり長時間いないと言っても、それでも外は外。自然とため息の量が増えていく。


そこまで落ち込んでいても、自分がいる部屋のドアがガチャリとあく音には流石に気づいたらしくそこに視線を向ける。そこにいたのは如何にもな褐色に染まった肌に、花の上に絆創膏をはった、青いジャージの少女。名前は、マコトという。


「なんだ、キミか……何の用だ?」


カナエが不機嫌そうにそう言うと、マコトもむすっとした顔で文句を言おうと口を開ける。


「別に。ただ、アリスが『ここら辺出るらしいですわ。てなわけで肝試ししましょう』とか言ったからよ。お前を呼びに来たんだ。」


マコトはお化けのようなポーズをしながら、アリスという少女の声マネをしてそう言う。


心霊現象。実はカナエが最も苦手とするものの一つである。なんでも、非科学的すぎるという理由らしい。参加したくないというように布団の中にもぞもぞと潜り込もうとするのをマコトは阻止した。


そして、カナエの制止を振り切り、足を持ってズルズルと引きずっていく。カナエはやめろとか離せとかいうが、マコトは大きな声で歌を歌って、聞こえないふりをする。


「あーー!わかった!わかったから離せ!この!筋肉ダルマが!!」

「あるーひ!!もりのなかー!!くまさんに!!」

「歌の声をさらにあげるな!!聞こえてるだろうが!!」


そんな二人のまえに、突然ドアがガチャリと開いて、一人の女性が現れた。その女性はあかねの母親で増穂といった。


「あら、こんばんは」

「こ、こんばんは……」


こう、誰も人がいないと思っててはしゃいでたら、人がいた時の恥ずかしさ。マコトとカナエはリンゴのように顔を赤くした。


そんな二人を見て、増穂は少しクスリと笑った後二人を見比べた。そして、にこりとして口を開ける。


「二人とも、仲がいいのね」

「「はぁ!?」」


二人の声が見事にハモってまた、顔を赤らめる。それを見て増穂は可愛らしいものを見るようにニコニコ笑う。そんな増穂に反論するように二人は口を開ける。


「誰がこんなインキもやしと仲がいいってんだ!!」

「はん!それはこっちも同じだ。何が悲しくて筋肉ダルマと友人にならねばならん。こんなのバカな筋肉ダルマ野郎と仲良くなるなら、つまらん団子虫の観察日記を書いた方がまだマシだ」

「はぁ!?その言葉取り消せ!団子虫の観察日記は案外楽しいぞ!」

「そこか!?そこの訂正を求めるか普通!あとしたことあるのか団子虫の観察日記!!むしろそっちにびっくりするわ!!」


わーわーぎゃーぎゃー騒ぐ二人を見て増穂はとうとう吹き出して笑い出す。それでも二人は口喧嘩をし続ける。


やがて増穂が軽くコツンと二人の頭を叩いて二人はハッと正気に戻る。そして、バツが悪そうに二人とも顔をそらした。


「仲がいいことはわかったから、ほら、喧嘩しないの。仲直り……は、必要ないか。これも一つの仲良しの証ってやつね」


そういうと二人ともまた誰がこんな奴と……とか、また口喧嘩を始めようとしたため、増穂はまた軽くコツンと叩く。


そして二人に外に出ろと促す。近くの窓から外を見ると暗い夜空が広がっているが、そこになのは達がいるのが見えた。そういえば肝試しをやると言ってたような気がした。


二人はまたワーワー言い合いながら、外に出て行く。そんな後ろ姿を見た増穂はフゥと一息ついて顔をほころばせる。


「喧嘩ができるのも一つの幸せの形……なのかもねぇ」


そう言って大きなあくびをして部屋に戻っていく。彼女は肝試しに参加する気はないらしい。



◇◇◇◇◇



「ーーーというわけでここには戦時中に亡くなった軍人さんの幽霊がいたるところにいるらしいですわ……」


赤髪ロールの女の子、アリスがぼそぼそとしたトーンで喋る。意外に演技力が高く、聞いてる人は全員ゴクリと生唾を飲み込んでいた。


肝試し。と言ってもこの先の一本道の森に入り、祠においてある紙に名前を書くだけの簡単な作業。アリスが言うには森の中にはたくさんの三月グループの社員がいるらしく、脅かせには来ないが、もし迷っても助けてくれるらしい。


金持ち。すごい。


そして行くにはペアを組むらしい。なのはに春香が我先にと一緒に行こうと声をかけて、引っ張るように連れて行く。


後のメンバーは春樹とあかね。マコトとカナエになった。悟は祠のところにいるらしく、父母チームは晩御飯の準備中。増穂は寝てしまったが。


「よーし!行くのなのは!!」

「は、春香ちゃんは元気だね……私は怖いよ」


意気揚々と先陣を切る春香の後ろから、春香の袖をつかみながら、オドオドとしながらついていくなのは。


ばさばさ!とカラスが飛び立つ音が聞こえてなのはは思わずキャッと小さな叫び声をあげる。その度に春香は大丈夫大丈夫と優しく声をかける。


暫く歩くと開けた所に到着した。どうやらこの先に祠があるらしく、春香はいそいそと歩いていく。


「……あ、あれ」


なのはがそう言いながら指差すと、そこには一つの人影が見えた。なぜかその人影の周りだけ妙に明るかった。


「えっと、三月グループの……人?」


なのははそういうと、春香は目を凝らしてその人影を見ていた。そして、あっ、と声を漏らして口を開ける。


「あれ、軍服着てるよ〜変な……の……」


そこで、二人は何かに気づいて顔を見合わせた。顔を一気に青く染めてクルリと後ろを向いて叫び声をあげながら一気に駆け出した。


「おっ、二人とも早かっーーー」

「いやーーーーー!!!」

「きゃーーーーー!!!」


あかねが手を上げて軽く声をかける横を二人は一気に駆けていった。そのままペンションの方に一目散に向かって行った。途中でなのはがこけたが。


「あいつら……カラスの羽音とかに驚いたのか……?」


春樹がそう呟くとあかねは無言で森の方を見ていた。春樹が気になって声をかける。


「あ?い、いや。なんでもねぇよ……ただ……なんだ。変な気配がした気がする……まぁ、ディザイアとは違うしな。あまり気にしなくていいかもだ。さて、あたし達も行くぞ」


そう言ってあかねは少し震えながら、森の方に足を進める。そういえば、あかねはこういうオカルトの類は苦手と聞いたことがある。昔、幽霊よりある意味恐ろしい相手と戦ったはずだが、怖いものは怖いらしい。


そんなこんなで歩くと開けた所につく。春樹とあかねは一応周りを見渡した。


(こういう時って、女の子の方がきゃーとか声をあげたりとかするだろうが……あかねはなぁ……なんかしなさそう)


勝手に自己完結して勝手に落胆してる春樹がふと前を見ると、小さな女の子が立っていた。その女の子は黒髪で、俗に言う和ロリータの服装を身を包んでいた。


「ん?なんでここに女の子が……」


あかねがそう言ってその少女に近づく。その少女は人形のような体で、人形のような瞳を向けて口を開ける。


「主ら……儂が見えるのか……?」


その言葉を聞いて、一瞬空気が固まったようになり、そして、あかねが春樹の首根っこを掴んで走り出した。


「あら、おふたがたも速かったですーーー」

「ごめっーん!ご飯を作るのを手伝う約束あったの忘れてたから!!」

「く、首が絞まる……!!」


そのまま二人もペンションの方にかけていった。その後ろ姿を見てアリスはえー。と、一言おいてマコト達の方を見て。


「おふた方……おやりになりますか?」


カナエとマコトは同時にもちろんと声をあげた。マコトはせっかく来たんだしという思いで。カナエは幽霊にあって色々と聞いて知識を深めたいという思いで、二人とも歩き出した。


アリスは一応トランシーバーを使い悟の方に連絡を入れた。そして、ふぅと一息をつく。


(何か面倒なことが起きなかればいいのですが……)


そんなアリスの考えは知ってかしらずか、二人はゆっくりと歩き出す。カラスの羽音にも、一切驚きの顔を見せない二人も、先ほどから色々と見えてしまってる開けた所に来た。


暫く歩くと、ビュン!と突然風が吹いてきた。突然のことで対処しきれず、カナエは大きく吹き飛び、そのままゴロゴロと転がる。マコトはカナエの名前を呼びながら近づく。


「なんだこれ……突然すぎんだろ。人為的……?でも一体なんのために……」


とりあえずカナエの方に近づくと、カナエは足を押さえて震えていた。どうやら、足をくじいたらしい。さらに、暗くてよく見えないが、擦りむいて血らしきものがたれていた。それを見たカナエは血相を変えてそこを擦りむいた所を抑える。


「……みたか?」

「え、あ、いや。見てねぇよ……そんなに傷を見せるのが嫌なのか……?」

「ふん。キミごときに見られたくないだけだ。絆創膏はあるしハンカチもある」


そう言ってカナエ緑色のハンカチと絆創膏を取り出して傷の処理を始めた。そして立ち上がろうとするが、想像以上に足にくじいた痛みが大きく、すぐにうずくまる。


「おい、無理して動くな。時間がたちゃ、悟さんとかがこっちくるだろうし、暫く待っとこうぜ」

「……まぁ、それが得策だな。癪だが仕方ない。キミの意見に乗ってやろう」


そう言うとカナエの隣にマコトもストンと座る。マコトは空を見ながらボーッとする。とても星が綺麗で、都会では見れない光景が広がっていた。


カナエの方はというと腕を組んでただ前をじっと見据えていた。マコトはなんとなく声をかけることができなくて二人とも黙った。


するとカナエが突然なぁとマコトに声をかける。マコトは一瞬自分にかけられた声とは思わず、少し間をおいてなんだ?と言った。


「……もしだが。私が残酷な未来を告げたら、お前はどうする?」

「残酷な未来?例えばオレが死ぬとかか?……そうだなぁ」


と言ってマコトは腕を組んで考え出す。数秒。ほんの数秒だったが、二人には、それ以上に時が経ったかのように感じられた。


「……変えて見せるさ。オレは死ぬなんて嫌だからな。嫌な未来は変えて見せる……もし、あんたがオレの右に歩くっていうなら、左に走る。それで未来は変えられる。わかっていれば、未来なんて変えれるんだぜ」


マコトはそう言ってカナエの方を向く。カナエはその顔を見ることができなくて、サッと顔をそらす。


彼女なら本当に未来を変えてしまいそうだとカナエは思うと同時に、未来というのはそう簡単に変えることができることではないとわかっていた。だからこそ、彼女の顔を直視できなかった。


「あれ?おふたがた何をしてるのでござる?」


突然、背後から声が聞こえたかと思うと、あやめが草むらから顔を覗かせていた。通りで先ほどから見ないと思っていた。あやめはカナエの足を見て怪我をしてることがわかり、慌てた様子で肩を貸そうかと提案する。


マコトは風がいきなり吹いてきたのはあやめの仕業かと考える。なんか、忍術とかで風でも出したのだろう。


当のあやめはゴホゴホと苦しそうにむせながらもカナエに肩を貸していた。マコトはそれを見て少し笑い、マコトもカナエの肩を持って歩き出す。


3人がしばらく歩いた後も、その場には不自然なほど風が吹いていたが、3人の少女は気付くはずもなく。


「あれ、私の風にぶつかった人いると思ったんだけどなぁ……」

「ま、二人おったし一人が引っ張ってもう帰ったんじゃろ。儂らも帰るぞ。甘い羊羹が食べたいのじゃ」


そこに人形のような幼女とまるで陰陽師のような服装をした少女がいることも誰も知らない。



◇◇◇◇◇



そんなこんなで。


「あー……今日でもう終わりか」

そんなこんなで、楽しかった夏休みの思い出作り、別荘に泊まるというのは終わった。今からまた一人一人でヘリコプターに乗って帰る。


皆、なんやかんやで帰るのが少し名残惜しそうで、乗るのをためらう人が何人かいたが、結局、全員乗った。悟が真っ先に乗ったが、どうやらあの後夜が明けるまで墓場にいたらしい。


ヘリコプターで運ばれながらなのはは外を見た。だんだんと島が遠ざかっていき、なのはは少し寂しくなる。


しかし、楽しかったのも大きかった。なのはは気を取り直して椅子に座り直し、またみんなでここに遊びに行きたいな。そんな思いを抱いていた。


……これは余談だが、後でアリスに聞いたとこのによると、あの島に別荘を建てたりとかで総額うん億を使ったらしい。


お金持ち。怖い



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【次回予告】

「どうしてあんなに病弱なんだろう」

「なのは!夏休みの宿題見せて!」

「少し昔話をするでござる」

「今の拙者ができた理由を」

【次回:15話 あやめられぬ過去】


お疲れ様でした。

今回は珍しい前後編のギャグ回です。しかし、ギャグというのは書きにくいですね。次からはもっとレベル上げたいです

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