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綾の苦悩②

久しぶりの投稿です。タイトル変更しました。

この回は長めです。色々盛り込みすぎた。。。

誰を責めていいのかわからなかった。

無責任に噂するクラスメート?噂を流した人?それとも、原因のあいつ?

誰にも責任なんかないと思うけど、理性がそういうけど、感情が追い付かない。

あたしと湊太がほんとの姉弟じゃなかったらよかったのに。

そしたら、誰にも遠慮することなく湊太と・・・。

ああ、また考えてる。あたしは最近何かというと湊太のことを考えてしまう。

早く忘れなきゃいけないと思えば思うほど。湊太のことしか考えられなくなった苦しい。

ベッドにもぐりこんだ。ずっと考えていたかった。

今だけなら、今だけなら…。


しばらくそうやっていると、階下が騒がしい。

母さんの声と、・・・湊太?

階段を上がってくる音がして、あたしの部屋の前で足音は止まった。

「綾」

あたしは起き上がって、ドアに近づいた。

このドアの向こうに湊太がいる。このドアを開けたら、湊太がいる。

まるでこのドアはあたしたちが姉弟であるという事実のように立ちふさがっていた。

「入るぞ」

「ダメ。湊太、学校は?」

「そんなのどうでもいいよ」

そういって、湊太は荒々しくドアを開けて入ってきた。

湊太をみたら、さっきまで考えていたことがとめどなく溢れて止まらなかった。

「綾、ごめん。ずっとつらい思いさせて」

湊太は言いながら、あたしを抱きしめた。

「イチさんから聞いた。俺、ずっと綾を守っていく。・・・綾だけだ」

あたしは、そっと湊太の背中に手をまわして、しっかりと抱きしめた。

「湊太・・・ごめんね。あたし、ほんとは湊太のこと・・・好き」

背中がビクッとなった。信じられないという表情であたしを見た。

「ほんとうに?・・・よかった。実は、半信半疑だった。イチさんのいったこと。綾の口から聞くまではって」

「本当なの。湊太に告白されて初めて気づいたんだけど、あたしはずっと湊太が好きだった。今も・・」

湊太があたしの頬にそっと触れた。

「綾・・・キスしていい?」

「・・・うん」

湊太の唇がそっと重ねられて、その瞬間あたしは夢の中にいるようだった。

「もう離さない。綾・・・好きだ」

耳元でささやかれて、あたしは今までのことを思った。


初めて、湊太にキスされた日。

湊太が好きだって気づいたとき。

さっきまでのぐちゃぐちゃした気持ち。


今はなんて幸せなんだろう。

湊太の腕の中に抱かれて、体温や鼓動や吐息を感じて。


「何してるの」

突然、現実に引き戻された。

今の声・・・母さん?!

夢見心地だったあたしの頭の中が急にすっきりクリアになった。

湊太も硬直して動きを止めている。

母さんはおびえとおそれと…ほかには何て言っていいかわからない複雑な何かが入り混じった表情であたしたちを見ていた。

そして、それはすぐに怒りにすりかわって発散された。

「あんたたち、何してるのよー!!」

湊太はあたしをかばうように、あたしの前に立って、母さんの方に向かった。

「母さん…」

母さんは泣いていた。泣きながら、湊太の頬をたたいた。さらにあたしを叩こうとして、それを湊太がかばった。

「どきなさい。湊太」

母さんは怒りを含んだ声で言った。なのに、なのに、悲しそう…。

「ごめんなさい…。」

なぜか、自然に謝ってしまっていた。母さんはそれを聞くと、とたんに泣き崩れた。

「…どうして、どうしてなのよ…」

湊太がそっとうずくまった母さんの肩を抱いて、下へ連れて行った。

そのとき、湊太が一瞬悲しそうにこっちを見た。そして、それはちょっと皮肉気でもあったのだった・・・。



「母さんが明日落ち着いたら話があるって…」

幸いというか、なんというか、明日は学校が休みだった。

話っていったって、さっきのことなのはわかってる。

あたしは思わずため息をついた。

「綾は…後悔してる?その、俺と」

「ううん!まさか…。」

あたしは慌てて否定したけど、見透かされたような気がした。

もちろん、後悔なんてしてない…してないけど、ほんのちょっぴり片隅に罪悪感が、後ろめたいものがあるのも本当だったから…。

「俺は後悔なんか絶対しない。あの時はああやって、綾を抱きしめてやるのが俺の中では一番正しいことだったからね」

そういって、湊太はあたしを見つめた。

「俺は俺の価値観しか信じてないから、後ろめたいってのはないよ。綾が俺を受け入れてくれた時から。俺が一番怖いのは…綾を失うことだけだ…」


あたしはわかっていた。いつかこうなるのがわかっていた。

世間に許されない関係である以上、こういう風に自分が本当に湊太のことを好きかどうか、問われる日が来ることを。

近所の人や学校の人に白い目で見られたって、耐えられるののかどうかを。


なのに、今ふと自分に自信がもてなくなった。

母さんにばれたとき、2人の仲がどうこうというより、怒られる方が怖かった。

あたしは、湊太に流されただけなの?

そう思いついたら、たちまち頭の中が不安でいっぱいになった。

あたしが何も言わないので、湊太は「じゃあ」と言って、出て行った。


流された…なんてこと、絶対ない。あのとき、思ったじゃない。

それなら、この気持ちはなんなの?震えそうなぐらい、怖いって思うこの気持ちは。

もう、わかんない・・・助けて。誰か…。


あたしがしばらくそうやってうだうだ悩んでたら、イチから電話があった。あたしは少しためらってからイチに切り出した。今、思っていたことを。


『綾…本気で言ってるの?それ』


イチの声が、非難していた。当たり前だ。あれだけ、豪語しておいて、今更こんなこと言い出すなんて。

あたしは覚悟した。イチに怒られる覚悟を。

でも意外にもイチは怒らなかった。優しい優しい声であたしに呼び掛けた。


『ねえ、綾、それならあたしんちに来なさい。話したいことがあるの』

「え?今から?」

『そうよ。今から』

「でも…」


今は外に出たくなかった。みんながみんな、あたしと湊太のこと言ってるみたいで辛かった。


『何?ためらってんの。…じゃあ、あたしがそっち行くわ』

「え、ちょっと」

『待ってて』

そして、そのまま電話は切れた。後にはツーツーを音が聞こえるだけ。

なんかあっけにとられた。あれ、そういや、イチ学校まだ終わってないよね?

それから一分もしないうちにイチは来た。

「誰も出てこないから勝手に上がらせてもらったわよ」

「うん、ごめん…」

「謝んないでよ。…湊太くんは?部屋?」

「多分」

イチはあたしの部屋に入ってきて、あたしの前に座った。

なんだか緊張してるみたい…。

イチは緊張なんてめったにする人じゃなかった。

話ってなんなの?イチが緊張するほどのことなの?

あたしはつばを飲み込んだ。イチがため息をついて、髪をかきあげた。

「あたし、好きな人がいるの」

予想もしなかったセリフにあたしは少々面食らってしまった。

けど、イチの好きな人ってあの婚約者の医大生・・・?

「もうアイツとはとっくに別れてた。綾に言おうと思ってたんだけどね。」

えっ!結婚の約束までしといて。。。

「うん、そーなんだけど。あたしが悪いの。ほんとはもう好きじゃない…ていうのは正確じゃないわね。ずっと好きだったんだけど、それは兄に対する気持ちみたいなものでずっと気づかなかった。ある人に会うまでは」

ある人?それが、イチの好きな人?

「そうよ。とってもかわいいの。すぐあたしに頼ってきたりするんだけど、しっかり自分で動いちゃったりもするし。もう、目が離せない。」

な、なんかイチのそういう話、初めて聞いた気がする。

人の話って・・・照れる。

「それから、ずっとその人一筋。でもね、その人は全然あたしが想ってることに気付いてないの。友達だと思ってる」

告白はしないの?

「…したいけど、今の関係が壊れるのがイヤなの。友達でいるうちはいろんなこと話したり遊んだりできる。もし、あたしが告白して、くずれちゃったら、サイアク。それにその人今は自分の恋で手一杯」

じゃあ、その人好きな人いるんだ?

「うん、でもその恋には障害があって、そのことで相談してくれるの。あたしだけに。それがうれしい」

イチ…。でも、それって、不毛だよ。告白した方がいいよ。

「綾なら、そういうと思った。本当にそう思う?」

うん!イチなら大丈夫だよ。

でも、ごめんね…。あたしのことばっかり言ってて、イチのこと気づかなかったよ。ごめん。

「だって気づかれないようにしてたもん」

えっ。

驚くあたしに、イチはそっと笑って、あたしの頭にポンと手を置いた。

「綾に心配かけたくなかったし。」

それに…ってイチが続けた。

それから…それから…イチがそとあたしにキスをして微笑んだ。

「あたしの好きな人って綾、あなたよ」

茫然自失・・・・。まさにそんな状態だ。

イチの好きな人があたし?!

「今、すごく綾を抱きたい」

イチがそういって恐る恐る手を伸ばしてぎゅって抱きしめた。

「好きよ。綾。愛してる。この世の中で誰よりも…。もう抑えられない」

そういいながら、まだ茫然としているあたしの頬に口づけて、そのまま首筋をなぞりながら、あたしの服を脱がして、下へいこうとする。

その辺でハッと我に返って、慌ててイチから離れた。

「イチ、変な冗談やめようよ」

冗談なんかじゃないことはわかっていた。わかっていたから、そういうしかなかった。

「冗談?冗談なんかじゃないわ。本気。どうして困ってるの?嫌ならそういって。中途半端な優しさは酷だわ。もう綾を湊太くんなんかに渡さない。わたしのものよ」

イチがふっと手を伸ばしてきて、あたしの腕をつかんだ。

あたしはちょっと抵抗したけど、ほとんどしなかった。

なんだか悲しすぎるよ。

イチはかなしげに、けど、愛おしそうにあたしの顔を撫でて、今度は深く、激しく口づけた。

そこからイチの激情が伝わってきて、苦しかった。

イチがうるんだ瞳であたしをみつめて、口を開いた。

「あたし、もう止まらないわよ?いいのね。…最後まで」

「イチが…それでいいなら」

あたしのセリフに、イチは一瞬、目をみはって、けど、すぐにあやしく笑ってあたしの胸に顔をうずめた。


「綾、愛してる。あたしの綾…」


「ちょっと、それ、待ってくれる?ちなみに綾は俺のだからな」

イチもあたしも突然の湊太登場にピシッと動きが止まった。

けど、そうぐにイチは気を取り直して、おもむろに湊太に向き直った。

そして、長い髪をパッと手で後ろにやると腰に手を当てて、湊太をにらんだ。

「邪魔しないでくれる?わかったでしょ?綾はあたしのものなのよ」

イチがそれやるとかなりタカビーなんだけどな。

「違うって。イチさんのことを思いやってのことだよ。ちょっと行き過ぎだけどな」

ちらっとこっちみて、慌てて視線そらしてボソッと言った。

「服着たら?」

ハッとして自分の格好を見るとやけに色っぽい(自分で言うな)姿。そして、さらに言わせてもらえば、

イチの…がついてたりするんだ。やばい。

慌てて、前かきあわせて、そっと湊太を盗み見た。

イチのこと、キッとにらみつけて戦うオーラが出てる。

こんなことしようとしたあたしを…まだ好きでいてくれるの?

流されてるかもって自分の気持ちが不安だったあたしを。

はっきりいってさっきの、イチならいいって思ってた。こんなに愛してくれるイチならって。

不安だったのよ。

湊太だって、いつかはほかの女の子好きになるんじゃないかって。

以前はそう望んでたくせに!だからイチの情熱に身を任せた。

流されようとしてた。…ごめんね。湊太。


今はこんなに自分に自信をもっていえる。

湊太が好き。愛してるって。

「イチさんだって、わかってるはずだろ」

湊太の言葉にイチは横向いて泣いていた。

「そうよ!わかってたわ。綾はあたしに同情してるって。…湊太くんのことが好きなくせに!何をフラフラしてるのって!それから、今ならチャンスかもって。たとえ、同情でもなんでも思いをとげるチャンスだって思ったのに…。結果はこれよ」

泣き崩れてしまったイチを湊太が送っていってくれた。

あたしはこれからイチにどうすればいいんだろうか。





高校時代の作品なので、なんとなく古めです。イチねえさんにバブリーな香り。その時代ではないんだけど。

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