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湊太の焦燥

湊太はずっと考えている。この気持ちの行く末を。。。そこに綾が帰ってきて・・・。

俺はどうすべきなんだろう。

樋口湊太、16歳。

今、危急存亡の秋だと思う。

あーちくしょーなんであんなことしちゃったかなー。(しかし、かわいかったなー)

はーそんなこといってる場合じゃないって。

・・・部屋の天井を見つめて、考え事すると眠いな。

まとまらないよ。考えが。

綾、帰ってくるかな。さすがに今日は気まずい。

・・・綾が俺を好きじゃない限り。(それは絶対ありえない)

俺は、もう綾に触れることさえできないんだ。

たった一度の過ちが・・・くっ。

「ただいまー」

ガバッて感じで起き上がって俺はうろたえた。

綾が帰ってきた!どうしようーどーしよー!

俺がうろたえまくってるのに、おかまいなしに状況は進む。

コンコン。・・・綾だ。

「湊太?入るよ」

俺は一体どういう顔をすればよかったんだろう。

綾は笑っていた。

「綾、ごめん。俺、なんか動転してて」

無意識に謝りの言葉が出た。・・・みっともない。

綾は、すっと無表情になって、何か、決心した感じだった。

肩ぐらいにそろえた髪はつややかで、綾がうつむくとさらさらとこぼれた。

「忘れてあげる。」

「えっ」

「あのこと。忘れるから、教えて。」

「・・・何を?」

「どうしてあんなことしたの」

綾の声音は少し震えていた。何かにおびえてるみたいだ。

「・・・ムードに流された。」

あえて、怒られそうな、綾に嫌われるような答えをした。

怒るかと思って身構えたけど、綾は動かない。俺は断罪を待つ囚人のような気分だった。

綾はうつむいていた顔をあげたとき、俺は無性に綾を抱きしめたかった。

泣きそうに笑っていたんだ。

「バカね。そういうことは彼女にすんのよ。」

だからそういって、背を向けて出ていこうとした綾の腕をつかんだ。

「離して!」

綾が涙声でいう。やっぱり、泣いている。どうして泣くんだ。

「離してよ・・・」

「何で泣くんだよ」

「湊太に関係ない」

「関係ないことあるか!言えよ!」

思わず、口調がきつくなる。

「・・・言えない。」

何かを飲み込むように、そう答えた。

何で泣くんだ?俺は・・・期待するぞ。

「じゃあ、泣くな。」

「弟なのに、命令しないでよ!」



『弟』


その言葉で綾との間に厚い鉄の壁が下ろされたみたいだ。目の前が暗くなった。

俺は思わずつぶやいていた。

「弟じゃねえよ。・・・好きだ、綾。」

綾が一瞬ビクッとなった。

「・・・何言ってるの。冗談は・・・」

綾の言葉をさえぎって、俺は叫んだ。

「冗談なんかじゃない!本気だ。ずっと好きだった。」

綾は動かない。

やっぱり、ダメだよな。弟じゃ・・・。

俺は手を離した。

「出てけ。」

これ以上一緒にいるのは辛かった。

「ごめんね。湊太」

「いいから、出てけよ!」

綾は出て行った。と、同時に俺の恋も終わったような気がした。いや、終わったんだ。

もう、戻らない。

好きになった時に実るはずのない恋だとわかってたはずなのに。

この絶望感は何だ?

俺の心に大きな穴が開いて、綾への気持ちがあった場所には・・・もう何もなかった。

これで綾を忘れられるのか?

あんなにも好きだったのに?

忘れたくない・・・。忘れたくないよ。


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