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☆ミコト魔法堂へようこそ☆  作者: 道尾ゆう
3/7

003

翌日、学校終わりにミコト魔法堂で掃除に励む芽吹の姿があった。


「埃っぽいなー、いつから掃除してないんですか」

ハタキで飾られた猫の置物をはたくと埃が舞い上がる。


「……」

ミコトは芽吹の言葉に気付かないほど、何かを真剣に眺めている。

「ミコトさん、ミコトさんってば!」

「ん、何?掃除がどうかしましたか?」

「さっきから、こわい顔しちゃってどうしたんですか。眉間にシワよってましたよ」

ミコトが眉間を指で擦る。そして眺めていた何かを引き出しにしまった。


「何でもないです。さっ、それより掃除、掃除」

そう言って店の奥に行ってしまった。

端から順にハタキをかける。

机の順に来たとき、ふとさっきミコトが引き出しにしまった何かが気になった。


浮かんだ考えを振り払うように芽吹は首を振った。

(完全にプライベートだもんな)


その様子を本棚の上で、アザレアが瞬きをせず見ている。

キュウ。

その鳴き声で、この部屋には自分一人ではないということに芽吹は気づいた。


「びっくりしたー、いつからそこに居たんだ?」

アザレアが本棚から軽やかにジャンプする。

「それにしても、珍しい動物だなぁ。絶滅危惧種とか?」

独り言を言う芽吹をアザレアはじっと見つめる。

見つめたと思ったら突然、釜の周りを忙しく回り始めた。


釜の中の妖しい液体が、より一層激しく燃えたぎる。次の瞬間。

激しい音と共に一人の若い男性が現れた。

歳は芽吹と同じ位に見える。


「ここか、噂に聞くよりも随分と狭いんだな」

辺りを訝しげに見渡す。

さっきの激しい音で、腰を抜かしてしまった芽吹に話しかける。


「ミコトとはお前か?」

「あ……いえ、その。ミコトさんは奥に」

立ち上がろうとしても立ち上がることが出来ない。そんな芽吹を見かねたようにアザレアが店の奥へと走り出す。

若い男と芽吹、二人を静けさが包む。

そして、遠くからバタバタと足音が聞こえる。


「ようこそいらっしゃいました、私がミコトです。今日はどんなご用件で」

静けさを打ち破るように現れたミコトが、用件を尋ねる。


「あぁ、実はこの剣が折れてしまってな。新しいものに代えようとも考えたんだがあちらの世界では今、剣が買えないんだよ」

そうして腰にさした剣をとりだし、ミコトの目前に置く。


「剣が買えない?それはどういう……」

ミコトが眉間にシワをよせ聞く。

「一晩にして剣という剣が街から消えてな。店の中は空っぽだよ、一体なにが起こったんだか」

「他に変わったことはありませんでしたか」

「あぁ、それに最近は大気汚染が酷くてな。ろくに外も出歩けないよ」

ミコトは真剣な表情で話を聞いている。


「大気汚染って、確かこの前の女の子も言ってましたね」

閃いたように芽吹が言う。

「あの世界に確かに変化が起こってるのかもしれません。決して良くない何かが……」

誰に言うわけでもなく呟くようにミコトは話した。


そして、すぐハッと我にかえり「剣のご用件済ませなきゃですね」と笑顔を作った。

目を瞑り一心に集中するミコト。額にはシャボンのようなものが浮かぶ。

そこに映し出された場所には、本が沢山並べられている。そして、その中の一冊の本が特に強い光を放っている。


「これですね。芽吹くんコレを持ってきてもらえませんか」

「コレをって……これだけじゃあ場所もわからないし、それにこんなに沢山の本から一冊をどうやって探し出すんですか」

「芽吹くん、本がある場所といえば限られてるじゃないですか。それに全く関係のない本が光るはずもありません」


ミコトの言葉を聞いて芽吹は考え込んでいる。

「あっ!そうか、あの場所か」

閃きと同時に目を輝かせる。

「そうです、あの場所です。ではお早めにお願いしますね、お客さまをあまり待たせるわけにはいきません」


店を出た芽吹は近所にある小さな本屋に向かった。

「あの本棚、見覚えあったんだよなー」

この本屋の本棚には番号シールがつけられていて、ミコトが浮かび出させた映像にも、そのシールが映っていた。


「あとは、本だな。これだけあるとどれが必要か分からないな」

とりあえず目の前の本棚に目を通す。

経済、歴史、はたまたミステリーまで―――

「沢山ありすぎる、参ったな」

その時、二つ隣の本棚から大きな音がした。

「なんだ!?」

そこに向かうと一冊の本が本棚から落ちていた。それを芽吹は丁寧に手にとる。

分厚く重厚な表紙には(中世の道具辞典)と記されている。中身を眺めると中世で使われていた料理道具から剣などの武器まで網羅されている。


「これだ!」

芽吹は急いでレジでお金を払い魔法堂へ向かう。

途中、レジで会計をしてくれたおじいさんの言葉が

気にかかった。

(気をつけて……)

しかし、その妙な引っ掛かりも魔法堂に着く頃には忘れてしまっていた。


「ありました!」

芽吹の言葉にミコトが頷く。

「では、始めましょうか」


ミコトが本に手をかざす、そして剣に手を移し

「…―――」

目を瞑り、呪文を唱える。

みるみるうちに剣が修復される。


「おおっ、素晴らしい。噂に聞いていたよりも遥かに凄い魔力だ」

若い男が感嘆の声をあげる。

「これで、思う存分モンスト狩りが出来る」

「モンスト!?って……何ですか」

「まぁ、害虫みたいなものだ」

そう言うと男は釜に足をかける。


「感謝する。何かあれば次は私があなた方を助けよう。代金の代わりだ。私の名前はシュリ。覚えておいて損はないぞ」

風のように、釜の中に飛びこむとたちまち姿は消えた。


「はぁぁ、今回も疲れました」

芽吹がため息を吐く。

「紅茶でも入れましょうか?」

ミコトは芽吹に笑いかける。

「私はあなたが来てくれて随分と楽になったんですよ」

温かい紅茶をすすりながらミコトは言った。


「それなら良いですけど……。そうだ、思い出した!使いの最中なんですけど、不思議な事があって。本屋のおじいさんが『気をつけて』って言ったんですよ、それが何か妙に引っ掛かって……って、あれ?」

紅茶をすすっていたはずのミコトがアザレアと楽しそうにじゃれている。


「まぁ、いいか」

芽吹が最後の一口を飲み終わった時、遊んでいたミコトが真剣な表情に変わった。


「良くないことの前触れですね」




♦♦♦

午後八時、ミコト魔法堂の扉には『close』の文字が掲げられた。

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