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「なんだ?」
ユウキが呟いた瞬間、
バンッ!
更に大きな音がして、車体が揺れる。
『引き返して下さい。』
彼女の声が脳内で再生される。
「ちょっとやばくね?」
「…なんか、声聞こえねェか?」
「ユウイチ、引き返そうぜ。」
少しずつ、車体を叩く音が大きく早くなっている。
その音に比例して、俺達の混乱も増していく。
「どうすれば、」
いつもは冷静なユウイチが、焦ったような声を出す。
「とりあえず、引き返そう。」
周りも混乱していたからか、俺は少しずつ冷静になってきていた。
ゆっくりはっきりとそう告げれば、
「信じらんねェかも知れねェが…」
ユウイチが情けない声で呟く。
初めて聞くユウイチの情けない声に、俺はなんとなくギクリとする。
「さっきからどうしてもハンドルが動かねェんだよなァ…」
「嘘だろ?」
ユウキが手を伸ばし、ハンドルを掴むが少しも動かない。
車内はかつてない程の緊張感に包まれた。
「どうする!?」
「ブレーキは!?」
「さっきから踏んでるが、止まりゃしねェ…!」
「ドア…開かねェ!」
車体を叩く音は鳴り続けている。
バンッ!バンッ!バンッ!
間隔がどんどん短くなり、今ではずっと叩かれている。
どうすればいい、どうすれば、
あぁ、そう言えば…
ふと、彼女の、サクラの困ったような笑顔が頭に浮かんだ。