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後15分ほどで心霊スポットに着く、という時にケータイが震えた。
取り出して画面を見れば、新着メールのお知らせ。
「マサヒロ、こんな時間に誰からだよ、オンナ?」
隣に座るヒロキがニヤニヤ笑いながら聞いてくる。
シカトしてメールを開けば、バイト先の先輩からだった。
滅多に送られてくることのない送信先に疑問を持ちつつも、メールを開いてみれば『サクラさんが連絡先を知りたがっているから、教えていいか』と言う内容だった。
何故、彼女が俺の連絡先を知りたがっているのか。
たいして仲も良くない、ただのバイト仲間なのに。
そう思ったが、バイト先に行けばケー番くらいはすぐに分かるから、深く考えることはせずに『いいですよ』その一言だけを返した。
「後10分くらいで着くぞー」
助手席に座ってるユウキが楽しそうにそう言った瞬間、手に持ったままだったケータイが震えた。
画面を見れば、知らない番号。
普段ならば知らない番号には出ないが、きっと彼女だろう。
めんどくさかったが、振動し続けるケータイに仕方なく通話ボタンを押す。
「もしもし、」
『あ、遅くにすみません、オダさんですか?
私、サクラです。』
「あー、んで、急にどうしたの?」
『あの、オダさん、今、隣の県にいますよね?』
「…」
なんで、こいつが知ってるんだ。
誰にも教えてないし、ほんの数十分前に決まったことなのに。
『すみません、気持ち悪いとは思いますが、今だけは私の言う通りにしてください。
今すぐ、引き返して下さい、』
サクラがそう告げた直後から、ケータイからノイズが入り始める。
『ザー…あ…いので、早く…ザザッ』
不思議に思い、ケータイの電波を見ればちゃんと電波は届いてる。
なんだ?
「サクラ、ワリィけどノイズで全然 聞こえねェ。
1回切るぞ。」
きっとこっちの声も聞こえないだろう。
一応、切ることを伝えて電源ボタンを押す。
電話を切る正当な理由が出来て安心した。
小さく溜め息を吐けば、運転してるユウイチがミラー越しに聞いてくる。
「誰から?」
「バイト先の後輩。
よく分かんねェけど、ノイズ入りまくってウザイから切った。」
「ハハッ、相変わらず、どーでもいいやつに冷たいな、お前。」
ユウキが笑ってる。
どーでもいいやつに優しくするなんて、疲れるだけだろ。
チラリと窓に視線を向ければ、街灯もほとんどなく、真っ暗な道を進んでいた。
「後どれくらい?」
そう、口にした瞬間。
バンッ!
大きな音が車体全体に響いた。