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な、なんだ…あれ。
俺が「彼女」の存在を知ったのは、本当に偶然だった。いや、本当の本当に偶然だった。
その日の俺は、たまたま社会科のたまちゃんにパシられ中な同じクラスの朝井さんに出くわした。
たぶん運悪く日直だったんだろう。彼女は無駄に重くてデカい日本地図を持たされていた。
おいおいおい、これはいくらなんでも可哀想だろう。…たまちゃん何頼んでんだよ。
「おーい、朝井さん。それ準備室まで?」
「あ、高城くん。そうなの、たまちゃんがね…もう日直だからっていいように使っちゃって!」
その通りだな。フォローの言葉もないよ。
「俺たまちゃんに呼ばれてるからついでに持って行くよ。女の子には重いっしょ?」
「え、でも…」
「ついでだから、ね?」
と言って首をかしげて朝井さんの顔を見る。
「う、うん…じゃあ、お願い。」
地図を受け取る。少しだけずしっときた。
まぁ俺は平気だが朝井さんには重かっただろう…たまちゃん、男の風上にもおけん。だから彼女なしの独身なんだ。
「じゃ、また後でね〜」
そう言って俺は準備室に向かった。今日の昼飯は購買で何を買おうかと考えながら…。
その場で取り残された朝井さんはというと…
「高城くん…天然⁈これを天然でしてるの⁈さすが噂のジェントル高城っっ‼︎‼︎」
と身悶えていた。
社会科準備室は2階の少し奥まった所にある。家庭科室の横を通って、突き当たりを右に。んで図書室を通っ…
…ん?
なんか見えた。入り口側のドアの窓んとこから…ちらっと。3歩バックする。
んん?
結局その日俺は授業以外では始めての図書室
訪問をすることになり、朝井さんに用事を言いつけてだからモテないんだ、なんて言ってたたまちゃんに、とても感謝することになる。