9
俺、何やってんだろ・・・・
弾みとはいえやばいだろ。 もしこれでだめだったら・・・・
でもあの時はそんな事考える余裕なかった。 今になって後悔が押し寄せる。
あの時はじめてあったちかちゃんに一目ぼれしたんだと思う。
初めてライブハウスに来たのだろう不安そうな感じもすごく可愛いと思った。
打ち上げのときに馴染めなくて、外に出たときの警戒して気の強そうに見せてる感じとか、
話しても他人行儀で会社でもつんつんしてて、でもしっかり仕事もがんばってて。
なにを見ていても彼女が可愛く見えた。
ってか寒いわ・・・・・・
週明け会社でちかちゃんを見かけるが、明らかに俺を避けてる。わかりきってた事だけどやっぱり心配になる。
仕事でミスしなきゃいいけど・・・・・・
思ったとおりだった。俺が近くにいると動揺して少しの事だけどミスを連発する。見ているだけってのも出来るけど、
このままじゃいけない。
「松原さん、ちょっと来て。」
俺からの呼び出しに目が泳ぐちかちゃん。
個室に呼び出し席に座らせる。
「あの・・・・なんですか?」
おいおい。顔がこわばってるぞ。
「あのさ、あの日の事は本気なんだけど、あからさまに避けないでくれる?あと会社では普通にしてくれる?俺も何しようとか思ってないから。
仕事とプライベートは別。ね?」
少しきつい言い方すいません。としゅんとするちかちゃん。
可愛いとか思ってる場合ではない。
「あの、ミスばっかりしてスミマセン。今後気をつけます。」
「まぁ気にすんなって言うほうが酷なのはわかってるから。ごめんね。
でもあの事はちゃんと考えといて。」
念をおすとちかちゃんの顔は真っ赤になる。
「あと金曜日の夜、空けといてね。ライブあるから。」
「え?それはちょっと・・・・」
「だめ、仕事もきっちり上がってアフターライフを楽しみなさい。俺のライブでね?」
ちかちゃんの頭をよしよしと撫でる。細い髪の毛が俺の指に絡みつく。
名残惜しいけどいつまでもこんな事していられない。
「じゃあ俺打ち合わせあるから」
彼女をおいて部屋を出ると外に尾崎がいた。
「松原さんまだなかですか?」
「あぁ、なんか用か?」
「いえ、さっき部長と入るのが見えて心配になって・・・・」
「ちょっと注意しただけだ。お前もうつつぬかしてミスすんなよ?」
大丈夫です。俺ちゃんと仕事とプライベートは分けてますから。
にかっと笑いながら俺とちかちゃんがさっきまで2人でいた部屋に入っていった。
あいつは本気だ、そんな気がした。