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電車を降りたら丁度雄樹君からの着信。上司だしもう出ないわけにはいかない。
もしもし?
「尾崎となにはなしてたの?」
電話なのに後ろで声がして振り返る。
なんで??
ちょっと怒ってるような雄樹君。
「ゆう・・・・・・海老澤部長。なんで??」
「雄樹でいいよ。俺も同じ電車なのにちかちゃん達置いていくから。」
「声かけてくださいよ。」
「やだよ、なんか楽しそうだったし俺じゃまでしょ??」
「そんな事ありません。ってか今の終電ですよ??だいじょうぶですか??」
「あぁ、よい覚ましに歩いて帰ろうかな??」
「そうですか、ではお先に失礼します。」
言残して帰ろうとしたら急に腕をつかまれた。
「ごめんちょっと時間くれない?話しようよ。」
「いいですけど、お店閉まってるんでうちでよければ・・・・・。」
「いいの?じゃあお酒買ってこ。俺まだのみたりないわ。」
途中でコンビニにより帰る。
「お邪魔します。お?結構綺麗にしているんだね。」
一応女性ですからと電気をつける。
「ってか男だけどいいの??こんな遅くに連れ込んで。」
「大丈夫です。さっき亜理紗に連絡したらヒロトさん連れてくるって言ってましたから。安心してください。」
当たり前じゃない、雄樹君と2人でなんて間がもたないし、なんもないってわかっててもやだ。
とりあえず今日二回目の乾杯をする。
「あの、聞いてもいいですか?」
なに?とビールを呑みながら雄樹君がこっちを見る。
「今回の人事異動ってなんであたし選ばれたんですか?ずっと事務でなんもできないのに・・・・・・」
「ちかちゃんは部署からの推薦もあったんだよ。仕事が出来て若い子って。選んでるときにちかちゃんの写真があってびっくりしたよ。」
そううですか・・・・
あたしもビールを飲む。
「ちかちゃんってザル?結構呑めるよね?」
笑いながらビールの缶を開けて渡してくれる。
「弱くはないと思います。外だと割りとコントロールできるとゆうか、ないですか?」
「わかるよ。ちかちゃんは外で気をはってるんだね。だから周りから怒ってるって思われるんだよ。」
「えっ?もしかして会話きいてたんですか?」
「尾崎の声がでかかったんだよ。それで付き合うの?」
そんな事まで聞かれてたなんて恥ずかしくて顔が赤くなる。
えび・・・・・言いかけると雄樹君が睨む。
「付き合うつもりもありませんし、雄樹君には関係ありません。」
顔を背け目が合わない様にする。早く亜理紗たちが来てほしいと思った。もう限界だ。雄樹君とこんな話したくない・・・・
もし私と尾崎君が付き合ったらどう思うのかな?
「そういえば雄樹君は彼女いないんですか?仕事とバンドだと忙しいですよね?」
「だね、まあいないけどね。でも今気になる子はいるんだよ。多分今は絶好のチャンスってやつだと思うんだよね、ちかちゃん。」
テーブルを挟んで雄樹君が顔を近づけてくる。
「なんか尾崎と話してるちかちゃん見てたら年甲斐もなくいらっとしちゃったよ。
ねえ、俺も彼氏候補にしてくれる?」
真剣に見つめる雄樹君。その目に吸い込まれそうで思わずめをそらした。
「あははっ。嘘だよ 笑」
くしゃくしゃと私の髪をなでる。からかわれているけどその手が心地いい。
「亜理紗たちまだですかね・・・・」
話題を変えたくて話をそらす。
「来ないよ?俺さっきメールしといたから。」
ええっ??
しれっと言う雄樹君
「だってちかちゃん誰かいると俺と話してくれないし。今日は2人で、何もしないから安心して。ね?」
とっさに携帯開いたら亜理紗からメールが来ていた。
・・雄樹君とラブラブみたいだし今日は楽しんで☆私たちは邪魔しないからごゆっくり~・・・・
はぁ~。 ため息をついてこの状況をどうすればいいか考える。仕方ない、結城君を泥酔させて朝になるのを待とう。
あたしはとりあえずお酒を勧めた。
「うぅ~ もう呑めないよぉ~・・・」
先にギブしたのは私。それを横目に平気な顔をしながらビールを呑む雄樹君。
無理すんなと馬鹿にした笑い。 ねえ、雄樹君は私のことどう思ってるの?
聞きたい、でも私にはそんなゆうきない。 負けじとビールをあおる。
「ちかちゃん大丈夫?俺と張り合うなんて思うなよ?まぁそんな所も可愛いけど。」
「雄樹君はいっつもそうやって女の子にちょっかいだすんですか?そりゃあそんな顔で言われたらみんなコロッと言っちゃいますよね。」
「ちかちゃんはコロッといってくれないの?」
「私はそんなの引っかかりません。でも会社でも海老澤部長は人気みたいですよ。山本さんも言ってましたし」
酔っ払っていらない事まで言ってしまった。もうどうにでもなれだ。
「一応ちゃんと言っとくけど、好きな子にそんな事言われたら俺だって傷つくよ?」
腕を引っ張られてぎゅっと強く抱きしめられる。
えぇっ??
「すぐにとは言わない。でも尾崎みたいに候補とかは嫌だから。俺ちかちゃんの事好きだから。」
今だってやばいわけですよといって固まった私に最高の笑顔を向けてきた。
あたしこそやばいです。
今日は帰ると言残して彼は家を出て行った。