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やっと内定をもらった仕事。大手とは違うがアパレル会社に入社した。
この秋の人事異動で販促部という所に異動になった。ただの内勤だったあたしがなんで??った思った。
新しいブランドの立ち上げに参加するみたいだが、こんなあたしでいいのだろうか?
上からの命令だから逆らう気はないけど失敗はできない。
一ヶ月ごのスタッフミーティングで理由が明らかになった。
「お疲れ様です。今回集まっていただいた皆さんは会社の中から選ばれた人達です。
私、海老澤雄樹はこのブランドをなんとしてでもわが社一のブランドまで育て上げたいと思っています。
私も精一杯やりますので、皆さんも力を貸してください。」
新しい上司は雄樹君だった。
なん・・・・・・・・で?
冷静を保とうとするけど顔が引きつる。どうしてうちの会社に?
考えてる間に自己紹介の順番がやってきた。
「あの・・・営業二課から配属になりました松原ちかです。販促に関しては全くの初心者なので、皆さんの足手まといにならないようがんばります」
雄樹君がこっちを見ているのがわかる。あたしは目をあわせられない。
一通り挨拶も終わって、みんなで部署の大掃除が始まった。
あたしも持ち物を新しいデスクに片付ける。
「松原さん始めまして。あたしプレスからきました山木です。席も隣だし宜しくお願いします。」
声をかけてきたのは可愛い女性だった。いかにもプレスって感じで指先にまでおしゃれに抜かりがない感じ。
「宜しくお願いいします。あたし異動とかはじめてで・・・」
「あたしもだよ~。いきなりの辞令だったから焦ったけど、新しいブランドの立ち上げにかかわれるなんてラッキーだよ!
がんばろうね。」
はい。とだけいってお互い掃除をはじめる。
「松原!!」
いきなり名前を呼ばれてびっくりした。振り返るとゴミ袋を持った雄樹君。
「ごみだし行くから手伝って。」
嫌だ、2人になりたくない。
でもそんな事はいえず海老沢部長に駆け寄る。
「あたし1人で行きますから、かしてください。」
重いから俺も行くと言って、すたすたと歩いてしまった。
俺は知っていた、ちかちゃんが同じ会社にいいる事も。
ブランド立ち上げに伴いスタッフ選びは全部俺がした。
ちかちゃんは部署の推薦人事のなかにいた。
その時はさすがに焦った。まさかちかちゃんが同じ会社で働いているなんて思いもよらなかった。
これはやったと思ってすぐに引き抜いた。
でもこっちを見ようとしない。
そりゃびっくりしただろうけど・・・
あのさ。
・・・・・・・・・
「あの。びっくりした?俺がその・・・上司になって。」
「びっくりしました。まさか同じ会社にいるなんて思いませんでしたから。でも仕事なんでちゃんとやります。
バンドの事は皆さん知ってらっしゃるんですか?」
「いや、会社には言ってないから出来れば黙っててほしいかな。」
「わかりました。元々海老澤部長の私的なことは言うつもりはありませんし、心配しないでください。」
「業務的だな。ちかちゃんはいつもそんな感じなの?」
「松原です。会社では名前で呼ばないでください。仕事ですから。」
なんだこの他人みたいな感じ。怒ってるのか??会社ではいつでもこんな感じなのか?
距離があるように感じた。俺は一緒に働けて嬉しいと思ってるのに、ちかちゃんはそうじゃないのか?
そんな態度とるからいじめてやりたくなった。
「ちか」
「呼び捨てはやめてください。」
真っ赤になった。可愛い。
「ちか。俺の名前呼んで?」
「だからっ!!海老澤部長!!」
「雄樹ってよんで?」
ますます赤くなるちかちゃんの顔。面白い。可愛いのに困ってる。
「ごめんごめん松原さん。早くごみ捨ていこ?」
笑いながら言うとちかちゃんは早足で先に行ってしまった。
まぁ追いつくけどね。
「今日親睦会するからみんなに伝えといて、強制参加だからもちろん松原さんもね?」