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背神者は今日もダンジョンで配信をする

作者: 華洛
掲載日:2026/11/04


「はい、というわけで本日もダンジョンにやってまいりました」


 薄暗いダンジョンの通路に、私の声がよく響く。


 壁には淡く光る鉱石がまだらに埋まっているけれど、明かりとしては頼りない。

 湿った空気が肌にまとわりつき、どこからか落ちる水滴の音が静かに反響している。

 地上とは別世界。人類が百年かけて適応した今でも、ダンジョンが異界であることに変わりはない。


 そんな陰気な空間の中で、私はドローンに搭載されたカメラへ軽く手を振った。


 黒いシスター服。

 顔には悪魔を模した黒いペルソナ。

 祈りを捧げる聖職者のような格好をしているくせに、やっていることはダンジョン配信である。

 我ながら、なかなか性格の悪い格好だと思う。


神浄キサラ。


 それが今の私の本名だ。

 もっとも、配信で名乗るのは別の名前だが。


背神者サタン。


 神を信じないどころか喧嘩を売る気満々の名前だが、実際その通りなので何の問題もない。


 配信画面の端には、さっそく視聴者コメントが流れ始めていた。


『お、今日も始まった』

『新人シスター配信者だ』

『その格好でダンジョン潜るの草』

『今日こそ神様に祈るところ見せてください』

『説教タイムまだ?』

『殴るシスター来たな』


「おやおや。神様に祈るところが見たい? バッカじゃないですか?」


私は心底呆れたように肩をすくめ、大げさなくらいにため息をつく。


「神なんてものを信じているんですか? あんなの詐欺師と変わらないですよ。口だけは立派で、都合が悪くなれば責任を取らない。そんな存在を崇めるとか、正気を疑いますね」


 軽く言っているつもりだが、我ながら棘は隠しきれていない気がする。

 まあ、隠す気もそこまでないけれど。


『開幕から飛ばしてて草』

『シスターの発言じゃない』

『今日も通常運転』

『親でも殺されたんか?』


「ええ、殺されましたけど?」


『え?』

『え???』

『今なんて?』

『冗談だよな?』


 一瞬だけコメント欄の流れが止まった。


 私は何でもないことのようにくすりと笑う。


「冗談ですよ。さあ、行きましょうか」


 軽い調子でそう言って、通路の奥へ歩き出す。


 もちろん冗談ではない。


 私は前世で、神の都合によって命を奪われた。


 思い出すのは、空も地もない白い異界。

 上下すら曖昧なその場所で、この世のものとは思えない輪郭のぼやけた“影”が、心底愉快そうに笑っていた。


「アハハハハ。とっても素晴らしいわぁ。貴女、私様の眷属になりなさいな」


 耳障りなほど楽しげな声だった。

 人の命を奪っておいて、罪悪感の欠片もない。

 ただ珍しい玩具でも見つけたかのような、無邪気で残酷な声音だった。


 私は血を吐きながら、それでも拳を握った。

 相手は高次元存在。この世界に影を投げかけているだけの、まともに触れることすら難しい化け物。

 それでも退くつもりはなかった。


 そして一矢報いた。

 あの“神”に、確かに傷を負わせた。


「断る。消えろペテン師」


 だが、届いたのはそこまでだった。


 次の瞬間、世界が裏返るような感覚とともに意識は引き裂かれ、私は敗れた。

 強制的な転生。

 それがあの神の下した答えだった。


 次に目を覚ました時、私は神を敬うことが当たり前の世界に落とされていた。

 しかも、男だったはずの私は女へと変えられ、神浄キサラという新しい生を押しつけられていた。


 まるで反抗的な獣を檻に閉じ込め、都合のいい形に躾けようとするみたいに。

 神を信じ、祈り、頭を垂れる者へ変えてしまおうとでもいうように。


 神に感謝する理由など、どこにもない。

 あるのは怒りと軽蔑だけだ。


 できることなら見つけ次第殴り飛ばしてやりたい。

 もっとも、神なんてものを殴れる機会はそうそうない。

 だからせめて、こうして言葉でこき下ろして溜飲を下げている。


「おや?」


 通路の先から、複数の足音が聞こえた。


 ぬめった地面を叩くような重い音。

 続いて、何かが壁を引っ掻くような、不快な金属音にも似た響き。


 私は足を止める。

 ふざけた調子はそのままに、視線だけを細めた。


「……魔物ですかね」


『戦闘きた?』

『初戦闘期待』

『シスターの拳が火を吹くぞ』

『今日のサンドバッグ登場?』


 小さく息を吐き、拳を握る。

 細い指をゆっくり閉じていくだけで、身体の感覚が自然と研ぎ澄まされていく。


 その瞬間だった。


 轟音が響いた。


「GYAAAAAAAAAAAAA!!」


 耳をつんざく咆哮。

 次いで、眩い雷光が通路を走る。


 青白い閃光が壁を焼き、空気そのものを震わせた。

 焦げた臭いが鼻を刺し、肌の表面を電気が這うような嫌な感覚が走る。


「……ほう」


 現れたのは、巨大な竜だった。


 全身を青白い雷に包み、鱗の隙間から火花を散らす異形。

 ライトニングドラゴン。

 本来なら上級探索者が複数人で挑むような魔物だ。

 少なくとも、こんな浅い階層にいていい存在ではない。


 そして、その前には一人の少女がいた。


 金色の髪を揺らし、探索者用の衣装を身にまとった少女。

 顔色は青ざめ、息は乱れ、今にも膝から崩れ落ちそうになっている。


白鐘ミライ。


 名前くらいは知っている。

 探索系の人気配信者で、界隈でもよく見かける顔だ。

 明るくて愛嬌がある、というのが世間の評価だったか。


「う、嘘……なんでこんなところに……!?」


 ミライの配信画面にも、視聴者コメントが激しく流れているのが見えた。


『逃げて!!』

『それイレギュラーだぞ!』

『運営に救援要請して!』

『ミライちゃん!!』

『無理無理無理!!』


 しかし、逃げ道は塞がれていた。


 崩れた瓦礫。

 それを背にして立つライトニングドラゴン。

 通路の幅も狭く、脇を抜ける余地はほとんどない。


 ライトニングドラゴンが口を開く。

 背ビレに帯電していた青白い光が強く発光。

 喉奥に青白い雷が収束していく。


 バチバチと暴れる電流が牙の隙間から漏れ、周囲の空気を焼き焦がしていた。

 直撃すれば、人間など跡形もなく炭だろう。


「いや……」


 ミライの足が震えているのが見えた。

 腰も引けている。完全に竦んでいるらしい。


 死を前にした人間は、たいていああなる。

 動かなければと思っていても、身体が言うことを聞かない。

 理屈ではなく本能が、相手との格の違いを悟ってしまうからだ。


 そして案の定、彼女は目を閉じた。


「た、助けて……神様……!」


 その言葉に、思わず眉がぴくりと動く。


 こんな状況で祈りですか。

 本当に、救いようがない。


 どうせ神はこの様子を見て、酒でも飲んで、嗤い、享楽にでも耽っていることでしょうに。


 全く。

 ここはシスターとして、迷える子羊に“神”がどんなものか教えてあげないといけませんね。


 ため息を吐くと、私は床を蹴り、宙を跳ぶ。


【終焉流・落華星】


ドゴォンッ!!


 拳がドラゴンの頭部にめり込み、轟音とともに通路全体が揺れる。

 遅れて衝撃風が吹き抜け、髪と服の裾を揺らした。


 手応えは十分。

 鱗は多少硬かったが、問題にするほどではない。


 私は軽く拳を振る。

 ぱらり、と拳についた鱗の破片が落ちた。


「ふむ。少し硬かったですね」


『は?』

『え?』

『今ワンパン?』

『ライトニングドラゴンだよな?』

『何が起きた???』

『拳で? 拳で!?』


 ミライは口を開けたまま固まっていた。

 まあ、そうなるでしょうね。


 さっきまで自分を殺しかけていた相手が、一撃で地面に沈んだのだ。

 理解が追いつかなくても無理はない。


「あ、あの……」


 振り返ると、悪魔のペルソナ越しにでもわかるくらい、彼女は混乱していた。


「はい?」


「た、助けてくれてありがとうございます!」


 ミライは慌てて頭を下げた。


「本当に、本当にありがとうございました!」


 心臓でもまだ暴れているのだろう。

 声が少し震えている。

 けれど礼を言おうとするあたり、根は真面目なのかもしれない。


「いえいえ。別に大したことではありませんよ」


 軽く手を振ってから、私はふと思い出したように彼女の顔を見る。


「ところで」


「は、はい?」


「あなた、さっき神に祈っていましたよね?」


「えっ?」


「バッカじゃないですか?」


「…………え?」


 ぽかん、とした顔がなんとも間抜けだ。


「神に祈ったところで無意味です。あいつらは困っている者を見て嘲笑する人でなしですからね。まあ神なので人じゃないんですけど」


「え、ええ……?」


「祈る暇があったら逃げるなり、戦うなり、自分でどうにかする方法を考えた方が建設的ですよ」


 少し言い過ぎかとも思ったが、事実なのだから仕方がない。

 祈って救われるくらいなら、私はこんな目に遭っていない。


「そ、それは……」


 言い返せずにいる。

 まあ、今の彼女に整理しろという方が酷かもしれない。


「では、私はこれで」


くるりと背を向ける。


「あ、あの! お名前を!」


「背神者サタンです」


「サタンさん! 私、白鐘ミライです! 助けていただいて本当にありがとうございました!」


「はいはい。どういたしまして」


 足は止めないまま、片手だけひらひらと振ってみせる。


 これ以上関わると面倒なことになりそうな気がした。

 人気配信者に恩を売る、という状況がすでにだいぶ面倒くさい。


 だから私は、そのまま歩き去ることにした。




////





 その日の夜。


 白鐘ミライは、自宅でサタンの配信アーカイブを見ていた。


「うわぁ……本当に強い……」


 画面の中では、黒いシスターが巨大な魔物を殴り飛ばしていた。

 いや、殴り飛ばすという表現すら生ぬるい。

 最小限の動きで懐に入り、急所を正確に打ち抜き、相手に反撃の余地すら与えず沈めている。


 しかも、その最中でも口は止まらない。



――だから神頼みは愚かなんですよ。ほら、信仰心なんかより拳の方が役に立つでしょう?――


――この程度の魔物に苦戦するなら、祈る前に鍛えなさい――


――え? 神に祈って回復? ドラッグストアでポーションでも買ったほうがコスパがいいですよ――



「ぶ、ぶれない……」


 ミライは思わず呟いた。


 画面を巻き戻す。

 もう一度見る。

 そして、また巻き戻す。


「これ、格闘技術も相当なものだよね……」


 ただ力任せに見えて、実際は違う。

 踏み込み、体重移動、間合いの詰め方、打撃の角度。

 素人目にもわかるほど洗練されていた。


「すごいなぁ……」


 気が付けば、関連動画も含めてサタンの配信を何時間も見続けていた。


 最初は命の恩人が気になっただけだった。

 だが見れば見るほど、その戦い方にも話し方にも妙な中毒性がある。


 無茶苦茶なのに、目が離せない。


「……コラボしたい」


 ぽつりと呟く。


 命の恩人と一緒にダンジョンを探索する。

 あの圧倒的な強さを間近で見てみたい。

 できることなら、もっと話もしてみたい。


 考えただけで胸が躍った。


「よし!」


 ミライは勢いよく立ち上がる。


「コラボ申請しよう!」



…

……

………



 帰宅してベッドに寝転がった私は、端末に表示された配信収益へ目を落とした。


「……ふむ。今日の収益はこんなものですか」


 有名配信者を助けたことで、スパチャが幾つもあった。

 約三十万円。


 悪くはない。

 大バズりと呼ぶには足りないが、だからといって少なすぎるわけでもない。

 生活が大きく変わるほどではないにせよ、小遣いとして見るなら十分すぎる額だった。


「まあ、諸々のことを賄うことはできそゔですね」


 前世とは異なり、今世は女。

 下着も上下を買う必要もあり、優等生と過ごすために、見栄えにも気を配らないといけない。

 前世では気にしなかったことを、今世では気を配りつつ過ごす必要がある。


「キサラ。少し教会の清掃を手伝ってくれないか」


「はーい」


 父さんに呼ばれ、ベッドから起き上がる。


 私の家は街で教会を営んでいる。

 両親ともに牧師として資格を持ち、共同牧会型として運営をしている。


 私をよりにもよって教会の家族の元に転生させ、両親が牧師とか、どう考えてもあの“神”の仕業だ。


 別に両親が嫌いということはない。

 私に愛情を注いでくれていることは間違いないし、私もそんな二人のことは好きだ。


 ただ――ストレスは溜まる。

 だから学校帰りにふらりとダンジョンへ潜り、魔物を殴り倒し、ついでに神を罵倒する。

 身バレをすると困るので、変装もしている。

 それで金まで入るのなら、なかなか悪くない趣味と言えるだろう。


 明日も適当に潜って、適当に魔物を倒して、適当に神を罵倒する。

 そのくらいの気楽さが、私にはちょうどよかった。


 そんなことを考えながら、私は教会へと向かうのだった。




…

……

………




翌朝。


 聖メタトロン女子学園の廊下を、私はいつものように歩いていた。


 白を基調とした清潔な内装。

 壁に飾られた聖句。

 すれ違う生徒たちの整った制服姿。

 いかにも由緒正しいミッション系女子学園といった光景で、神が嫌いな私としては、空気を吸うだけでも軽く神経を逆撫でされる。


 本当に、趣味の悪い空間。

 母さんが通うように言わなければ、さっさと退学して他の学校へ行きたいぐらいだ


「神浄さん」


 教室へ向かう途中、声をかけられた。


 振り返ると、そこにいたのは美しい銀髪の少女――天宮セシリア先輩だった。


 三年生にして現生徒会長。

 ついでに聖女候補。

 学園内でも一目置かれている有名人で、その微笑みひとつで場の空気が整ってしまうような、不思議な威厳を持った人だ。


 できれば朝から関わりたくない相手でもある。


「おはようございます、天宮先輩」


「おはようございます。少しお時間をいただけますか?」


「構いませんが」


そう答えた時点で、たぶん面倒ごとだろうなとは思っていた。


 セシリア先輩は柔らかな笑みを浮かべたまま、まっすぐ私を見る。

 優しそうに見えるのに、こういう時の目はまったく引く気がない。


「あなたを次期生徒会長に推薦したいと考えています」


「お断りします」


「……まだ理由を説明していませんが?」


「面倒だからです」


 我ながら即答だった。


 先輩は少しだけ目を丸くした。

 ついでに周囲の生徒まで、何事かと足を止めかけている。


 やめてください。目立つのは嫌いです。


「ですが、あなたは成績も優秀ですし、周囲への気配りもできる。生徒会長に相応しいと思います」


「褒めていただいてありがとうございます。でも、私は平穏な学校生活を送りたいので」


「学園をより良くするために、あなたの力を貸してほしいのです」


「そのお気持ちは大変ありがたいのですが、私にはやりたいことがありますので」


「やりたいこと?」


「帰宅です」


「…………」


 先輩は一拍だけ沈黙して、それから困ったように微笑んだ。


「少し考えておいてください」


「考えた結果が今の回答です」


「ふふ。頑固な方ですね」


 どこか楽しそうですらある声を残して、セシリア先輩は去っていった。


 私は小さく息を吐く。


 生徒会長など、絶対にやりたくない。

 ただでさえ学校に通うだけでも面倒なのだ。

 これ以上仕事を増やされてたまるものか。


 しかも目立つ役職など論外である。

 配信との両立以前に、平穏という目標から最も遠い。


「神浄さん」


 再び声をかけられて、私は内心で少しだけ顔をしかめた。


 今日はなんなのですか。厄日ですか。


 振り返ると、今度は同じクラスの少女が立っていた。


 黒い髪に眼鏡。

 少し控えめで、どこかおどおどした印象のある子だ。

 黒崎ユリエさん。


「おはようございます、黒崎さん」


「お、おはよう……」


 彼女は少しだけ視線を泳がせた。

 こういう時はたいてい、何か言いたいことがある。


「その……昨日、何か見た?」


「何か、ですか?」


「うん。ダンジョン配信とか」


「まあ、少しは」


 曖昧に返しておく。

 ここで変に食いつくとろくなことにならない気がした。


「実は私、好きな配信者がいるんだ」


「へえ」


「背神者サタンっていう人なんだけど……知ってる?」


 心臓が一瞬だけ跳ねた。


 ほんのわずかに呼吸の間がずれる。

 だが、そこはどうにか表情に出さずに済んだ。


「……さあ?」


「すごく強くて、面白くてね。神様のことを全然信じてないんだけど、言っていることが妙に痛快で」


「そ、そうですか」


 やめてください。

 本人に感想を読み上げないでください。

 しかも内容がだいぶ具体的です。


「私、あの人の配信が大好きなんだ」


 そう言って、ユリエさんは少しだけ笑った。


 普段の控えめな印象からは想像できないくらい、柔らかくて楽しそうな笑みだった。

 どうやら本気で好きらしい。


「いつか、あの人と一緒にダンジョンを探索できたらいいなって思ってる」


「……それは、素敵な夢ですね」


「うん!」


 私は笑顔を返しながら、内心では冷や汗をかいていた。


 まさか同じクラスに自分の熱心な視聴者がいるとは思わなかった。

 しかも、よりにもよって本人に向かって熱量たっぷりに語っている。


 この場で「実は私です」と言ったらどうなるのか。

 少なくとも平穏は死ぬ。


「ところで、神浄さんは誰か好きな配信者とかいる?」


「……いえ、特には」


「そっか」


 ユリエさんは少し残念そうに笑った。




…

……

………




 その日の放課後、私は帰宅すると、いつものように配信の準備を始めた。


 シスター服とサタンのペルソナを確認し、機材を軽く点検し、ダンジョンへ向かう前のルーティンを淡々とこなしていく。

 この時間は嫌いではない。余計なことを考えずに済むし、何より誰かに振り回される心配が少ない。


その時、端末に通知が届いた。


『白鐘ミライさんからコラボ申請が届いています』


「…………」


 私は無言で画面を見つめた。


 数秒。

 いや、体感ではもう少し長かった気もする。


「……嫌な予感がしますね」


 通知を開く。


 そこには、元気いっぱいのメッセージが表示されていた。


『サタンさん! 昨日は本当にありがとうございました! もしよかったら、今度一緒にダンジョン配信しませんか? 絶対楽しいと思います!』


 文面からでも伝わってくる勢い。

 断ってもめげずに、たぶんもう一回来るタイプの明るさ。

 そして何より、面倒ごとの匂いがする。


 私はしばらく考えた。


 コラボ。

 つまり他人と長時間行動を共にし、会話し、場合によっては個人情報や生活リズムにまで踏み込まれる可能性すらある行為。

 平穏を愛する私にとって、それはほとんど災害の一種だった。


 人気配信者が相手ともなれば、なおさらである。

 目立つ。広まる。関係が増える。面倒が増殖する。

 ろくでもありませんね。


 私は静かに画面を閉じた。


「……さて、今日も一人でダンジョンに行きますか」


 見なかったことにする。

 少なくとも今この瞬間に限れば、それが最も平和な選択肢に思えた。


 今日も私は、自分の平穏な生活を守るためにダンジョンへ潜る。

 殴って、稼いで、神を罵倒して、誰にも深く踏み込まれずに生きていく。

 本来なら、そのはずだった。


 ただ平穏というものは、たいていこういう時に限って長くは続かない。



読んでいただきありがとうございました。

少しでも「いいな」と思ったら、ブックマーク・評価・感想をいただけると大変励みになります。


以下、簡単なキャラ紹介になります。


〇神浄キサラ

転生者。

神の都合で殺された事で神を憎んでいる。(元男)

ミッション系の学校である聖メタトロン女子学園に通う女子高生。

両親が教会を運営しており、母親の母校ということで通うことになる。

神が嫌いな性格でありながら、神を敬う学校に通う矛盾。

ストレスを発散するため、そして配信で少し小遣いを稼げればという欲から、ダンジョンに潜ることにする。

前世で編み出した「終焉流」という独自の格闘術を使用する。

身バレ防止のため顔には悪魔のようなペルソナを被り、シスター服に身を包んでいる。


〇白鐘ミライ

人気の探索系配信者。明るく人懐っこい性格。

ダンジョンで配信中にイレギュラーモンスターであるライトニングドラゴンに襲われる。

「助けて神様」と絶望のあまり祈った所にキサラが助けに入る。

キサラは、ライトニングドラゴンをワンパンで倒す。

それ以降、キサラの配信を見て興味を持ち、コラボを申し込もうとする。


〇天宮セシリア

聖メタトロン女子学園の生徒会長。三年生。

敬虔な信徒であり、聖女候補。真面目で責任感が強い。

一年生であるキサラを、次期生徒会長へ推そうとしている。


〇黒崎ユリエ

キサラのクラスメイト。オカルトやダンジョンの都市伝説が大好き。

学園の雰囲気に馴染めず独りぼっち。

そんな中で、キサラの配信は大好きで熱心に視聴している。

ただし優等生を擬態しているキサラと結び付けることはできず正体は知らない。


〇神

高次元存在。

この世界に存在する姿は影。

信仰という力を得る事で、この世界に投影している存在でしかない。

そのためこの世界で倒すことは不可能。不老不死でもある。

そんな存在に神浄キサラは前世で、そんな神に傷を負わせたことで執着され殺された。

そして魂は強制的に転生させられてしまう。

転生先は神を敬うことが普通の世界。

神はキサラを神を敬う信徒へさせるべく企むのだった。



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