オオカミ令嬢
「オオカミが来ましたわーっ!」
今日もまた村中に響き渡る女の子の声。それを合図に一斉に飛び出してくる村人たち。
(嘘だってわかってても無視するわけにはいかないもんなぁ。なんたって領主様んとこの令嬢であるお嬢様のことだし)
お嬢様のお遊びにしぶしぶながら付き合う村人たち。このようなことが二か月に一度ほどの頻度で、もう何度も繰り返されていた。
(もういい加減にしてほしいもんだなぁ。お嬢様は知らないけど、オレたちはそんなに暇じゃないんだ)
終わりのないお嬢様のわがままに振り回され続け、村人たちの不満も相当たまってきた頃。
「オオカミが来ましたわーっ!」
本当にオオカミの群が村を襲った。しかし日頃からお嬢様の嘘に付き合っていた村人たちは、いつも通りの立ち回りで誰一人ケガすることもなくオオカミを撃退してしまった。
「皆さん、よくやってくださいました! これぞ日頃の訓練の賜物ですわね!」
(訓練……? あれはお嬢様のお遊びじゃなかったのか……)
「想定される有事に対応するためには、やはり日頃からの訓練が必要不可欠なのですわ。隠れて待っていればそのうち騎士団が助けに来てくれるかもしれませんが、その間にどれだけの被害が出るかと考えたら、やはり自分たちの村は自分たちの手で守るべきなのですわ!」
(オレたちの村のことをこんなに考えてくださってるなんて……さすがオレたちのお嬢様だ!)
「さぁ、これからも村に迫る脅威から自衛するために訓練を続けて行きますわよ!」
(おーっ! お嬢様、一生ついていきます!)
村人たちはお嬢様への敬意を新たにし、気勢を上げるのだった。
それからしばらくして、村の中にお嬢様の声が響き渡った。
「ドラゴンが来ましたわーっ!」
(え……ウソだろ? オレたち、そのうちドラゴンとも戦わされるの……!?)
村人たちはお嬢様の無茶振りに戦慄した。




