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発覚した事実

要塞の守備をヤスタカとマリに任せ、クロードは城に帰還した


「お兄様、それ以上は近づかないでください」


エイミーがクロードを制する


「何があったんだ?キミヤ?」


俺はその場からクロードを連れ出し、別の部屋で事情を話した


「不治の病・・・。では、エイミーはもう助からないのか?」


「やれることはやる。だが覚悟はしたほうがいい」


俺の絶望的な様子を見てか、クロードは黙ってしまった

俺は続ける


「俺が元いた世界でも感染症は大きな脅威だった。近年になって医学が大きく進展し治療法も確立されてきてはいるが、ほんの100年くらい前までは一切の治療法も見出されていなかった。致死率が高い感染症の場合、ただ死を待つだけだった」


「では治療法はあるにはあるのか?お前には治療できないのか?」


「無理だ。どんな名医であっても感染症のようなものには薬が無ければ無力なんだ」


「薬・・・。ではそれを作ることは?」


「もしかしたら可能なのかもしれないが、作り出すまでに何年か何十年か必要だと思う。それに仮に作れたとしても、それがエイミーの病に効果があるかどうかは保証がない」


クロードは再び口を閉ざした

しばらく考えた後


「では、お前が元いた世界ではどうなんだ?エイミーを治療することは可能なのか?」


「それは・・・・可能性は十分にある・・・と思う。こっちとは医療のレベルが段違いだからな。しかし、そんな仮定の話に意味はない」


それを聞き、クロードは何かを真剣に考えているようだ

俺はその様子を見て、思わず質問せずにはいられなかった


「まさか、エイミーを日本に転移させることが可能なのか?」


クロードは返答しない


「お前は言ってたよな。俺達は日本に帰れないって。どうなんだ」


「お前も知っている通り、転移魔法は術者の魔力喪失という代償が必要だ。そんなことをすれば、我が国は戦力的に大きく弱体化してしまう」


「質問に答えろ。転移魔法を使える者がエイミー以外にもいるのか?」


「今、お前の目の前にいる」


ここに来て、とんでもない事実が発覚した

なんだそれ・・・

俺の中でわずかならずの怒りの気持ちが芽生えていくのがわかる


つまり、俺達を日本に帰すことは出来たんだ

しかし、クロードは前線で戦わなくてはいけない

勇者を帰還させ、自身も魔力を失う

確かに、国の滅亡までまっしぐらって状況になるのはわかる


しかし・・・・

俺の思考は別の方向に切り替わっていった


エイミーを日本に転移させることが出来る・・・?


エイミーを日本に転移させれば助かる可能性はある

しかし、12歳の少女を一人で転移させたところで、日本の知識は何もない、言葉も通じない、お金もない、野垂れ死にになるとしか思えない

運良く誰かに保護されて治療を受けられるという可能性に賭けるわけにはいかない

つまり、エイミーの他に俺達3人の誰か、あるいは全員が帰還する必要がある


しかし、戦争は終わっていない

クロードはおそらく転移魔法を使うのを拒否するだろう


・・・・・・


「なあ、念のために聞くが、お前以外に転移魔法を使える奴はいるのか?」


「いない。俺だけだ。転移魔法はアスティア国の王家の血を強く受け継いだものだけに宿る秘術のようなものだ。父はもういないし、母は元々王家の者ではない」


となると・・・もう一つ大きな問題があることになる

つまり、エイミーを日本に転移させたところで、この国に帰還させる方法がない

治療が成功したところで、エイミーは日本で生きていくしかなくなる


・・・・・・・


エイミーのためだけを考えれば、一番良いのはクロードに転移魔法を使わせることだ

しかし戦争があるうちは俺達を帰還させるなどという選択はしないだろう

つまり最低でも戦争は終結させる必要がある


しかし、エイミーには時間が無い

ニーレンバーグ国を降伏させるまで待っている猶予は無いだろう


それにエイミーをこの国に帰還させる方法が無いという問題点もある


しかし何かあるはずだ・・・・・

何か打てる手が・・・・


・・・・・・


その時、一つの道が見えた気がした

エイミーを救える細い一本の道が


「なあ、クロード。お前、ニーレンバーグ国の王女と仲が良かったんだってな」


「なんだいきなり」


「今でも結婚したいと思っているのか?」


「お前は何を・・・」


クロードは言いかけて、俺が思いのほか真剣な表情なことに気づいた


「ああ、出来るものならな。しかし、もうそういう状況ではない」


それを聞いて、俺はクロードに告げた


「じゃあ、結婚しろ」


「・・・どういうことだ?」


俺は自分の考えを伝えた

説明する俺に対しクロードは逐一反論してくるが、それらを一つずつ再反論で潰していく


まず、この戦争を一気に終結させる

ニーレンバーグ国と停戦、講和を結ぶんだ


「相手がそんなものに応じると思うか?」


「もちろん、タダでとはいかないだろう。だから、お前達の苦労を無駄にするようで申し訳ないが、ギリル要塞をあいつらに返還するという条件ならば相手も飲んでくるだろう?」


「なに?そんなこと出来るわけないだろう。確かにそれなら一時的に停戦とはなるかもしれない。しかしそんなものは一時的に過ぎない。戦力的に優位になる以上、すぐにまた侵攻を始めるはずだ」


「だから、お前がニーレンバーグ国の王女と結婚するんだよ。隣国と婚姻関係を結んで争いを回避するってのは俺の元いた世界でも古来からよくある手法だ。まあ人質という側面もあるんだがな」


「・・・・・やはりダメだ。もしニーレンバーグ国がテレジアを見捨てたらどうなる?タレス島の統一という目的の前には一人の女の命など軽い」


なるほど、テレジアって名前なのか


「ああ、その通りだ。だから追加でもう一つ、あいつらの侵略の意志を挫くだけの”おまけ”も必要だ」


「何かあるのか?」


「俺だよ。講和の席に俺も同席させろ。それでうまくいくはずだ」


もちろんこれでクロードが納得するわけがない

しかし、ここで実践するわけにもいかない


「俺を信じてくれ」


クロードはため息を一つ付いて


「検討しておこう」


とだけ答えた


「ああ、そうだ。もう一つ聞いておきたいことがあった」


俺は思い出したかのように続ける


「転移魔法ってのは何歳くらいで使えるようになるんだ?」


「ん?なんだその質問は」


「どうなんだ?」


「・・・・俺は5歳くらいには使えるようになったな」


なるほど、となると最短でも6年ということか・・・・

そんな事を考えている時、一人の伝令が駆け込んできた


「ニーレンバーグ国軍に動きが・・・!」


どうやら先に解決しないといけないことが出てきたようだ

伝令が続ける


「敵は迂回路を抜けてきている模様!」


「なに?あの険しい山道を通ってきているのか?」


伝令の報告にクロードは一瞬、不思議な表情を見せた


「なんだ?迂回路って」


思わず俺も口出ししてしまった


クロードは地図を広げ、俺に説明すると同時に敵の意図を読み取ろうとしている


「迂回路というのはギリル要塞のさらに西に存在する山道だ」


と言って地図上の位置を指さす


「ここを通ることは可能だが、大軍が通るには向いていない。日数もかなりかかる」


敵の意図は要塞を南北から挟み撃ちにするってことなのか?

しかし、南側に配置された兵はアスティア本国からの援軍と要塞に挟み撃ちになる

そのリスクを負ってまで挟撃する意味はなんだ?


「・・・・・・」


クロードも考えこんでいるようだ


「もしかして敵は、要塞を無視してアスティア国の王城を攻め落とそうとしているのか?」


特に考えがあったわけではないが、聞いてみた


「いや、それはあり得ない」


クロードが答える


「侵攻したところで、兵達は敵国内で孤立することになる。地の利も無いし、兵站も続かない。」


一瞬の後


「兵站?そうか!」


クロードが伝令に告げた


「すぐに兵の準備をしろ。大至急だ」


そういって、部屋から退出していく


「待て、クロード」


俺が呼び止めると、クロードは振り返る


「なんだ?」


俺はクロードの目を真っ直ぐに見た


「俺も行く」

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