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隠居生活のためのギルド設立〜怪しいやつばっかり仲間になるせいで各所から悪の帝国としてマークされてるんだが〜  作者: 歩く魚


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死合わせの森と海鮮丼

 俺たちは海沿いの店に入ることにした。

 最初から玄人ぶろうとしても失敗する、というのはどの分野においても共通のことだろう。

 

 少なくともクレイドは食通だが、俺たちに気を遣ってくれているのか、ほとんど口を挟まなかった。

 食のこととなると謙虚な男である。


 さて、店に入ると活気のある声が迎えてくれた。

 正方形のテーブルが十以上置かれていて、それを囲むように椅子を設置してある。


 外からでも盛況具合を予測できたが、店内は予想以上の盛り上がりだった。

 人々の楽しそうな話し声、海から漂ってくる磯の香り。

 それらが合わさることで一種の非日常を形成している。


 俺たちは中程の席に腰を下ろし、それぞれメニューを見る。


「おお、これは……」


 メニューには文字しか書かれていなかった。

 一番人気らしいのは当然の如く「海鮮丼」で、どんな魚や貝を盛り付けてくれるのか分からないが、答えは壁にかけられていた。


 その日に獲れた魚の名前と特徴を記した板を吊り下げていて、それが海鮮丼の内容である。

 今日は……前世でいうところのマグロとサーモンがメインになっているようだ。


「俺は海鮮丼にしようと思う」


 そう告げると、クレイドが淑やかな笑みを浮かべながら俺を見る。


「良いですわね、旦那様。私も今回は海鮮丼にします。ほら、二人も好きなものを頼みなさい?」


 すっかり俺の妻という謎のポジションに入り込んでおり、産んだ覚えのない子供達に優しく声をかける始末。


「僕もパパとママと同じやつにするぅ〜!」

「うわぁ…………私も、同じのに、してもいいですか……?」


 恐ろしいことになってしまっているボズ。

 レイラのドン引きはついに口から飛び出すほどになってしまっていた。


「聞かなくてもいいんだぞ、レイラ。お前はお前の好きなものを好きなだけ食べるといい」

「デス様……ありがとう、ございます……!」


 成長期の子供に気を使わせない大人になりたい。

 たとえ金がなかったとしても、飯を抜くのは彼女じゃなくて俺だ。

 

 ……まぁ、今日はクレイドかボズにたかるとしよう。


 クレイドが店員を呼び、注文を済ませる。

 俺からすれば違和感しかないパーティなのだが、他の人達には完全に家族に見えているらしい。


 店員が戻ってきたのは五分後のことだ。

 新鮮なものを新鮮なうちに提供するという気概を感じさせる早さ。

 テーブルに上に四つの丼が並ぶ。


「た、宝物みたい……です」


 レイラが年相応の感想を漏らす。可愛い。

 確かに、刺身一枚一枚の色艶もよく、誰が見ても新鮮だと分かる。


「僕、これを持って帰って宝箱にしまおうかなぁ!」


 何言ってんだこのセールスマンは。しばき倒すぞ。


「いけませんよボズちゃん。またいつでも食べにこれるんですから、うふふ」


 今度からレイラと二人で来ようかな。

 感想の言い合いもほどほどに、俺たちは食事を楽しむことにした。


 意外にも、基本的な部分は前世と変わらない。

 醤油のような調味料をかけ、少し歪な形の箸を使って飯をすくう。


 口に運んだ時の感動もまた、マグロを食べた時と同じだ。

 少しばかり血の味が強い気がするが、醤油(仮)が甘めなため、上手い具合に調和している。


「……おいひい」

「んぐっ、んぐっ、手が止まらないよ」

「あんまり急いで食べると喉を詰まらせてしまいますよ?」


 ここまで家族を続けられると、二人の演技力に感心が生まれてくるのだった。


「――夢のような時間が終わってしまいましたねぇ」


 食後、湯を飲みながらクレイドが言う。


「人が多いのも頷ける、良い店だったな」

「えぇ、リピートもアリですね」

「僕も行きたーい!」

「私も、行きたい、です……」


 満場一致の合格が出た。

 店員をテーブルに呼んで会計を済ませるが、値段も良心的。


 しかも、バルフェスタにはまだまだ飲食店がある。

 このレベルの店が多いのであれば、こちらを拠点にギルド活動をしても良かったかも。

 そう思ってしまうほどに魅力的な街である。


 そんな気持ちを持ちながら店を出ると、視界一杯に広がる海。


「……贅沢すぎるな」


 海があるというのが郷愁を呼び起こすのか、言葉を漏らしてしまう。


「贅沢だなんてことはありませんわよ」


 クレイドが俺の隣に立つ。


「どんなものでも手に入れる力。それがあなたにはあるんですもの」

「そうだよ! パパの敵は僕が倒してあげる!」

「ん、私も」


 後からやってきたボズとレイラも言葉を続ける。

 言葉は物騒だったが、彼らの心が籠っている気がして顔が綻ぶ。


「ほどほどに期待しているさ」


 頷く面々。


「それじゃあ、そろそろ俺たちの拠点に帰ることに――」


 その時、不意に近くの漁師達の会話が耳に入った。


「知ってるか? ドゥーダ山に邪竜が住み着いてるらしいぞ。なんでも、魔王が人間を拐って生贄にしてるとか――」

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