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隠居生活のためのギルド設立〜怪しいやつばっかり仲間になるせいで各所から悪の帝国としてマークされてるんだが〜  作者: 歩く魚


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14/15

死合わせの森と変装

「俺としては満足のいく出来だが、どうだろうか」


 そう言ったクレイドは自分の仕事に納得した顔をしている。

 今の彼は普段はまとめている長い銀髪を下ろし、女性風の服を着こなしていた。

 なんならメイクまでしているようで、パッと見は背の高い美女である。

 

 この辺りで採れる素材で、それもたった三十分でどうやってこんなクオリティを生み出すことができるのか。

 なんとか騎士とか名乗っていないで、こっち方面で就職した方がいいだろう。


「……ん、綺麗。後で私にも、教えてほしい」

「もちろんだ。デスの横を歩くのならば、強さだけでなく美しさにも磨きをかけるべきだからな」


 クレイドは実は子供に好かれるタイプなのか?

 そんなことを思っていると、クレイドの背後からもう一つの影が現れた。


「あ、あの〜……私はこれで良いんですかねぇ?」


 影の正体――ボズの全貌が明かされた瞬間、俺のレイラは吹き出した。

 なぜなら彼の服装は半袖シャツに短パン、肩からかけられた虫籠のようなバッグと、完全に夏の虫取り小僧だったからだ。


「ぼ、ボズ……カブトムシも商売に取り入れ始めたのか」

「違うんですデス様っ! 彼があまりにも悪意のない笑顔で勧めてくるものですから、私としてもこの格好が正しいのかと思ってしまい――」

 

「私よりも、年下」

「レイラまで!?」

「素晴らしいぞボズ。どこからどう見ても、死の奴隷商人だとはバレまい」

 

 いや、クレイドの伝えたいことはわかるのだ。

 ボズは丸っこいし背も低いし、少年の格好がめちゃくちゃ似合う。

 言葉遣いにさえ気をつければ誰だって騙せる。


「まぁ、いいんじゃないか? 時には童心に返ることも大切ということだろう」

「……なるほど。子供の視点だからこそ気付くこともある、ということですね?」


 さすがはデス様……と、虫籠から取り出したメモ帳に何かを書き込むボズ。

 よく分からないが納得してくれたようだ。


「それでは俺――私とデスが夫婦、ボズとレイラが子供という体で頼む」

「俺とクレイドが夫婦……」

 

 俺の言葉に反応したクレイド。

 優雅な身体運びで俺の胸元に倒れ込んでくる。


「お嫌……でしたか?」


 それは男性が発しているとは思えない、高貴な姫のような声だった。

 心なしか、彼の身体が薄く、柔らかくなっている気さえする。


「……なんなんだその演技力は」

「暗黒騎士たるもの、大抵のことは人並み以上にこなせなければなりませんの」


 言ってることはクレイドのままだな。


「……クレイドは先生? それとも敵……?」

「どちらにもなり得る、ということです。デス様は性別すらも超越したお方。レイラも気を抜いていると取られてしまうかも」


 超越してないです。女性が好きです。

 何はともあれ、バルフェスタに行く準備は整った。


 俺たちは馬車を森に隠して、先ほどマークされてしまった門番の前へと姿を現す。


「ようこそ、バルフェスタへ。おや、馬車などはないのですか?」


 門番は友好的そのもの。穏やかな口調で聞いてくる。


「あぁ、このあたりに家を持っていてね。歩いてきたんだよ」

「そうでしたか。この辺りというと、ちかごろ魔物が活発化していると聞きます。そちらはどうですか?」

「ま、魔物? ええと……」


 夫役である俺が全て答えるべきなのだが、自慢じゃないが俺はポンコツだ。


「――ねぇパパぁ! ぼく、お腹すいたよぉ!」

「これは申し訳ありません。ぼく、今日は何を食べるんだい?」

「えーとねー! お肉がいいなぁ!」

「そうかそうか、パパにいっぱい食べさせてもらうんだぞ? ――さ、お通りください」

「ご、ご苦労様……」


 返答に困っていると、ボズが助け舟を出してくれた。

 彼も演技力があるようで、門番は気を遣って俺たちを解放してくれた。


「どうですかなデス様。私、実は幼い頃に演劇を学んでおりまして」

「素晴らしいと思うぞ、うん……」


 お前の隣を歩いているレイラは完全に引いているけどな。

 ツッコミは心に留めておいて、俺はようやく入ることができたバルフェスタに意識を集中させることにした。

 

 街に入った瞬間から潮の匂いが吹き抜けてくる。

 石畳の道を行き交う人々はどこか急ぎ足だが、余裕がないのではなく、人生の楽しみに満ちているようだ。


「この大通りは港へと続いていますのよ」


 クレイドがしなやかに指差す先には木骨と白壁の家々が並んでいた。

 屋根には黒い煙突が突き出し、軒下には干された魚やハーブの束が吊るされている。

 窓辺には手入れされた鉢植えと、開かれたままの小さな木枠の窓。

 その中からは子どもの笑い声が漏れていた。


「おお……風情あるなぁ」

「パパ、気に入った? それならぼくがお家を買ってあげるよ!」

「あらボズちゃん。子供はそんなことを言いませんのよ。アナタ、私が買って差し上げましょうか?」


 妻も子供も家は買わないです。

 金持ち妻子は無視して街に目を向ける。

 

 港は坂を下った先に広がっていた。

 波止場には粗削りの木製の桟橋が伸び、いくつもの帆船が並んで停泊している。

 

 帆を畳んだ船の上では水夫たちが荷を運び、綱を締め直していた。


「……! デス様、海、すごい!」

「レイラは海を見るのは初めてか?」

「はい。すごい、綺麗……!」

「ならもっと見るといい。俺の肩に乗ってもいいぞ」


 そう言いながら屈むと、レイラは申し訳なさそうな目で俺を見ていたが、やがて笑顔になって俺の肩に乗った……のだが。


 俺はてっきり肩車するものだと思ったいたのだが、彼女は両肩に手を置き、器用に姿勢を維持している。戸愚◯兄かお前は。


「……その体勢、キツくないのか?」

「大丈夫です。今の私は二十%」


 弟の方じゃねぇか。

もうネタが伝わらなさそうな気がします。これが年


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