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隠居生活のためのギルド設立〜怪しいやつばっかり仲間になるせいで各所から悪の帝国としてマークされてるんだが〜  作者: 歩く魚


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デス・カイザーと誤解

 レイラと共に馬車へと戻ったが、反応は二つしかなかった。


 一つは商人の「あれ倒せたんすか!? マジすか!?」の驚愕。

 もう一つはクレイドとボズの「当然だな」という頷き。


「良かったですねぇレイラ。デス様に努力の成果を見せることができたようで」

「……ありがとう、ございます」


 彼女からすればボズは父親のようなものなのだろう。

 その言葉は優しさに満ちている。

 努力の成果とやらが恐ろしすぎて笑ってもいられないが。


「あの程度の魔物を相手に俺が出ていくようなら、デスも苦労する。良い先鋒を引き入れたな」

「……なら、お前はもっとやれると?」


 ロールプレイなのだから、本当に戦うことになったら困るはず。

 意地悪のつもりで聞いてみると、クレイドは当たり前のように頷いた。


「俺の力を見せるなら……そうだな、邪竜レベルでないと困る」

「時が来たら、ということか」

「あぁ、時が来たら……な」


 シミュレーションロールプレイングゲームで仲間になりそうなフラグを立てつつ仲間にならず、終盤の良いところでだけスポット参戦しそうな奴だな。

 そういうのに限って性能が微妙なんだよ。


 これ以上、彼に付き合うのはやめて、商人を送り届けてやらなければ。


「怪我はないか?」

「は、はいッ! あんなに恐ろしい魔物をいとも簡単に……なんという強さでしょう!」


 その意見にはめちゃくちゃ同意だった。

 何をどうしたら、この若さでここまで強くなれるのか。


 俺自身はドン引きだったが、商人は素直に喜んでくれているのだけが幸いだった。


「残りの道のりも貴殿と、その荷の安全を保証する。大船に乗ったつもりでいてくれ」


 二時間後。そう何度も恐ろしい魔物に襲われるということはなく、バルフェスタが目前に迫っていた。


「――いやぁ本当に、あなた方に依頼を受けていただいて良かったです!」


 クロージングも兼ねているのだろうが、五分おきくらいに言ってくれている。


 当然と言えば当然か。街から街への護衛依頼など、Bランク冒険者が受けてくれれば御の字。

 それ以上ともなると、死ぬほど暇なAランクを探し当てるしかない。


 つまり、通常であれば今回のようなスラッシュウルフとカチあったら終わりなのだ。

 荷どころか命まで食い尽くされてしまう。


 商人――と俺は、見事に死亡フラグをへし折ったということになる。


「私、今日のことは決して忘れません! もし今後、私にお手伝いできることがあれば、何なりと申しつけてください!」

「そんな大袈裟な……」


 人脈はあるに越したことはないし、今後の選択肢に入れておくか。

 

 さて、バルフェスタの門番たちが俺たちの姿を視界へ捉えた頃。

 彼らが急に動き出した。

 同僚と焦った様子で話し始めたのだ。


「……どうしたんだ?」


「おい、あの先頭にいるのって奴隷商じゃないか?

 あぁ本当だ。死の商人だよな。あんな奴……入れていいのか?

 ――と言っているな」


 クレイドが教えてくれる。

 距離的に耳が良い程度じゃ聞こえないと思うが、彼は読唇術が使えるのか。無駄に高スペックだ。


「……ボズ。お前はその……出禁だったりするのか?」

「出禁と言いますと?」

「入れない街があったりするのか、ということだ」

「あぁ、それなら……あるにはありますねぇ。困ったものです」


 勘違いもここまでいくと不憫である。

 ボズとレイラを降ろして、街の入り口まで商人を送り届けるか……?


 考えていると、門番の様子がさらに騒がしくなる。


「……おい、今顔を出してる奴って魔王軍の幹部じゃないか!?

 死の奴隷商人と魔王軍が手を組んでるって――マズイぞ! 街を火の海にするつもりだ!

 あ、あそこにいる商人は顔見知りだ……人質にされてるのか!

 ――だそうだ」


「クレイド……街の人にまで迷惑をかけるな」

「……すまない。人間の情報共有を甘く見ていた」


 そういうのじゃなくて、ロールプレイは狭いコミュニティでだけやってくれ。

 ボズはともかく、クレイドまで厄介者として認識されているのならマズい。


 最悪、状況証拠的なアレで――逮捕されることはないと思うが――留置所コースになるかもしれない。


「おい大丈夫か! 今すぐ応援を呼んでくるからな!」

「――!? い、いえ彼らは……」


 門番の一人が大声で商人に向けて言い、慌てて去っていく。

 俺たちの依頼人の言葉は耳に入っていない。


「全員始末するか?」

「私一人で十分」


 クレイドとレイラが物騒な提案をするが、そんなことをすれば俺は終わりだ。

 自宅を大量の兵士に囲まれるのが目に見えている。

 そもそも門番は仕事をしているだけなのだから。


「はぁ……仕方がない。もう、ここからは魔物に襲われることもないだろう。我らは引き上げ、一人で街へ入ってもらっても良いか?」 

「それは……もちろんです。ですが……」


 商人は頷くが、その顔は釈然としていない。


「あなた方は……良いのですか? このような誤解を持たれたままで……」

「過ぎてしまったことだ。それに、ボズもクレイドも、変な奴ではあるが悪人ではない。貴殿は分かってくれただろう?」


 クレイドが「変な奴……?」と呟いていたが無視。


「なら、今後も同じことをするまでだ。俺たちは、自分の力で信頼を勝ち取ってみせる」


 ま、門番の誤解を解くのが面倒なだけなんだが。

 ちょっとカッコいい言葉で誤魔化してみたが、商人は騙されてくれたようだ。

 潤んだ瞳で俺たちを見回すと、報酬を渡し、一人でバルフェスタの門へと向かっていった。


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