2 裏口転生
「…おーい、おーーい、……おきてくれー。」
…寝てたのか
起きたばかりでなぜか視界は真っ白いし
なんなら周りはぼやけて見えないので
目を擦っているとまたもや誰かが俺に話しかける
「早速残念な知らせだが、お前は死んだよ」
「……………」
「ここはどこだ?って顔してるなぁ
教えてやるよ ここは煉獄さ
…あ?…知らない?……最近の人間は本当に
信仰心がないな。」
誰かが近づいたかと思えばいきなり俺の髪の毛を
鷲掴みにする
「現実味がないだろう?
なら私を見たほうが早いな」
頭をつかまれ無理やり正面を向かされると
白いスーツに白ネクタイ
つかみどころの無い、中性的な人?が
俺を覗き込んでいた
だが何処となく違和感を感じるのは
頭の上に、
薄っすらと光る輪っかが浮いていて
………その、触ればもふもふするであろう、
見なくとも存在感を分からせられるほどに立派で白鳥のような白い翼がそいつの背中についているからだろう。
「凄いだろう?肉眼で見る本物の天使は!」
すると天使は俺の腕を引っ張って
何処かに連れていこうとする
そうしてなにも抵抗する気力も無い俺は
されるがままにフラフラと雲の上に引きずられていた。
天使は俺を引きずり歩きながら説明をする
「煉獄ってのは地獄と天国の間って感じで、
えー…つまり行き先を決めるようなトコさ
あくまでも人間らに分かりやすく 伝えるためにそう言いふらしてるだけで…実際は特に決まった名前とか無いんだけどな!」
………
「そうだ、せっかくの縁ということで…
私の名は スカル だ! 頭に刻んでおくがいいな」
静かに頷ずくと
スカルは俺を無理やり椅子に座らせる
雲の上でスカルと見つめ合う
雲から見る雲一つない青空は更に現実感を薄れさせるものだった。
「せっかく死後の世界に来たんだ
何か聞きたい事があったら質問してくれ
実はあまりゆっくり出来ないんだがな
これは、サービスだ!」
「…………」
何も思いつかないから黙っていると
どこからか書類を取り出しペラペラとめくり
スカルは呆れるようにため息をする
「特に……質問は無しかぁ
じゃあ本題だ
えー、えーと、えっ自殺かよ
お前の死因は…電車に引かれたことによる出血多量?…あー、なんかよくわかんないけどとりあえずお前は死んだよ。」
「………」
「あ、説明し忘れてたな
私は一応お前担当の監視対象でお前をずっと
見守っていたんだ。
お前の人生見ててほんっとつまんなかったぞ
何十年も同じ部屋にいて飽きないのか??」
不気味な笑みを浮かべたすみれ色の
瞳は俺の様子を伺っているように見える
「お前が小3の時、車に引かれそうになったの
覚えてるか?
あの時は私が助けたんだぞ!
私が間に入ったせいで女神にはこっ酷く
叱られたがな、ギャハハハ!
つまり私はお前を心配してる奴がいるって
言いたいんだ!……。」
……今更そんな事言われても
「にしてもお前このままじゃ地獄行きだぞ〜
自殺しちまったから。
地獄に行ってもいいのか?
さっきからずっと黙ってるがなぁ
……おーい、無視?」
スカルのスッとした輪郭がぼやけていく。
空を見るフリをして急ぎよく上を向いてみたが
視界はピントのズレたカメラみたいになっていくばかりだ。
ダムが崩れ溢れ出るように
涙がボロボロと落ちてなぜか涙腺がじんわりと痛くなった。
「……は、急にどうしたんだよ。
えっどういう事?…はぁ〜
何に泣かされてんのかさっぱりだが
…本当に昔から泣き虫だったよな」
スカルはズボンのポケットから
レースのついたハンカチを手渡してきた
俺はハンカチを受け取ると
涙は袖で拭いてハンカチはそのまま使わず。
自分のズボンのポケットにハンカチを入れた
スカルは袖をめくる。コイツまで泣くのかと思いきや隠れていた腕時計を見ていた。
見終わると突然俺の腕を掴みそのまま強引に
歩かされ次第に一つのドアへとたどり着いた。
「あのドアに繋がるのはお前の転生先だよ
安心しなって 地獄行きじゃあ無いさ
お前を助けることにしたんだ」
俺は背中を殴られドアの前へ強く押し倒される
「自殺した奴は速攻地獄行きで
本来の寿命が全うされるまで罰をうけ続けるのが
ルールだが………なぁ ?
そんな結末、私は非常につまらない…
お前はもう少し冒険したほうが良いと思う!」
ドアノブを引くと
開けた先は真っ暗だが
スカルはためらう様子もなく背中を蹴飛ばし俺は
暗闇の底へ落ちていった
スカルの後ろ姿を最後に俺の視界は
見えなくてっていき
次第に意識を無くしてく
「恵一、また会おう」
会ってたまるか。
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知らない天井で目が覚める
スカルが俺を逃がした事によりどうやら地獄行きを免れたようだ
俺の右手にはスカルのハンカチが握られていた
いつか返さなければ
でも返せるときなんて来るだろうか
窓の外からうるさい太陽の光が差し込んで
暑い風が流れ込んでくると蒸し暑くて
憂鬱になった。
天使だとか転生だとか
これが現実なんて信じられなくてまるで夢の中に いるような気分だ、
俺は毛布の中にうずくまり頭を抱える。
これはきっと夢に違いない。
毛布にくるまって目をじっと閉じた。
………………
夢じゃなかった
何度も寝るが起きても起きてもそこは現実だった
今死んでもどうせ地獄にいくだろうし
せっかく生き返ったが
第二の人生は死ぬまで一生寝ていることにしよう
もう一度眠りにつこうとしていると
聞き覚えの無い声が俺に
話しかける
「ごきげんよう……始めまして…その…
えっと、………………」
人の事が言えるような立場でもないが
オドオドとして頼りない声だ、
誰だろう
いつからここに居たのだろう。
相手に起きていることを悟られないよう
薄く目を開き
声の方向に目を向ける。
正体は、俺よりずっと年が離れた少女だった。
髪の毛は無造作に分けられていて
トレンチコートを着た
黒い瞳に銀髪の少女がそこに立っている。
この少女昔どこかで会ったような、
少女は言葉に行き詰まりながらしどろもどろと
俺に話しかける。
「あぁ、やっぱり起きていたんだね。
心配したよ…ずっと寝てるから死んだのかと、」
バレてたか。
「………」
「ここは孤児院だよ、安心して 君みたいな人が…沢山いるんだ、私も含めてね。」
思いにもよらない返答に思わず
顔を顰めてしまった
俺は42歳、何で大人の俺が孤児院のベットで
寝てるんだか。
気まずさを紛らわしたかったのか
少女はコートのポケットから懐中時計を取り出し
目を細め見つめた後、少女はわざとらしく頷く
「あっ…昼ごはんの時間、良かったら一緒に
行かない……?」
「……」
声を出す勇気は無く、ただ首を横に振った。
「分かった…じゃあ、君のお昼ご飯を
持ってくるね。…少しだけ、待ってて。」
少女はそう言い残すと振り返ることもなく
部屋から出ていった、
きっと俺の態度があまりにも悪いから
少女は失望しただろう。
俺は自分の態度に絶望して寝込むことにした
だが空腹でなかなか寝付けない。
気を紛らわすためにベットの直ぐ隣にある
窓を見つめると外は広い庭になっていて
全体的に洋風な建築だった
もう少し見たいがために窓に近づくと
窓に反射して自分の顔が見えた
たぶん…10歳頃の俺に若返っているではないか
現実的にありえない事だが驚く事でも無い
恐らく俺は転生したのだから。
俺は腹痛をわすれて鏡に釘付けになった
凄いなぁ10代の頃の俺の瞳は
キラキラと希望に溢れて輝いていたのに
今の俺はまるで死んだ魚の眼だ。
中にいる人が変わるだけで印象はこんなに変わるのか!
まじまじと窓を見つめていると少女は部屋に
戻ってきた
一気に現実へと引き戻されていき
俺はお腹が空いていたことを思い出した。
ご飯の美味しそうな匂いがして
空腹は更に酷くなる
口の中のよだれかネバネバして気持ちが悪い
窒息してしまいそうだ
「ご飯、持ってきたよ!」
次はちゃんと出来るだけ喋ることにした
もう寝込まないために
「………ありがとうございます…」
戻ってきたと思ったら少女は急ぎ足で
部屋から出ていった
陶器で出来た皿を手に取りまじまじとあらゆる方向からシチューを見つめる。
ご飯………毒とかまざってないよな
この部屋には…机がない。
ワゴンからお盆に乗ったご飯達をベッドに
移動させる。
俺の膝くらいのとこまで持ってくると
毛布に汁がつかないよう慎重に置いた。
小さい体で机をたった一人で持ち、
さっきまで寝ていた俺のベットの近くに
置いてくれた
「…ありがとうございます。」
「どういたしまして!」
そうして少女は机を運び終えると
部屋から出ていった、俺はワゴンに置いてある
シチューとパンが乗ったトレーを机に置いて
ベットは椅子代わりにした
少女が優しくて助かった。
今度こそ食べれると
期待を胸に一口目のパンをかじる、
食べた瞬間、ふわっとした生地が口に広がった。
何日もご飯を食べていない俺は思わず目に
ウルッと来る 一口目 二口目……
喉を詰まらせそうになりながらもパンと
シチューを交互に食べていき
無我夢中で食べ続けた………
パンをいくら皿に入れてもシチューが付かないと
思いお皿を見ると
いつの間にか完食している事に気づく
残りのパンも残さず完食した
こんなにご飯に感動したのは
いつぶりだろうか…食べ終わり窓の外を見つめていると
少女が俺の部屋に入ってきた
「……あ、あれ…もしかしてもう食べたの…?!」
よく見ると少女は手に椅子を持っている
「そっか、少し遅かった。実は
一緒にお昼ご飯食べたいな…
…とか思ってて
君はもう食べ終わっているけど
よかったら…その、隣で、食べて良いかな……」
「………大丈夫です。」
少女は俺が食べ終わった後の食器をワゴンに入れて
机に新しいシチューとパンを取り出す
気づかなかった、
まさかワゴンの下にもう一食あったなんて…
少女は運んできた椅子に座り、食べ始めたかと
思いきやスプーンを止めて俺に話しかけた。
「本当は食べながら一緒に話したくて
…………えっと…
もし君が……良かったら話してもいいんだよ。」
そういえば俺はずっと気になっていた事があった、
きっと今がそれを聞く一番良いタイミングだろう。
「……貴方は…何で、そんなに優しいんですか。」
俺が孤児院で目覚めた時から
気にはなっていたが親切過ぎるあまり
何か企んでいる気がしてしまう
被害妄想っぽくなっているのは自覚しているけれど
心配になってくる
世の中があのサイローさんみたいな
人ばかりとは限らないからだ
……ヤバいやつがわざわざ自分の事を予告してくる
奴なんて居ないだろうけど。
視線をずらして
少女は少し黙り込む、そして照れくさそうにした
「…私と君は同じ年齢でしょ……?その、
孤児院では今のところ私だけ同じ年の子が
居なくて君が初めての私と同い年でだから…
その少し、えっと」
少女はしばらく黙り込むと、俯いて
真っ赤にした頬を長い髪の毛で隠した
「……その、嬉しくって…そう、嬉しかった。」
言葉にはなっていないけれど
裏表が無いような少女の言葉に少しホッとした。
「……はい。」
それから少女は黙々とお昼ご飯を口にしている
まだ聞きたい事は沢山あるが
食事を邪魔する訳にもいかない
俺は勇気を振り絞って最後の質問をする。
「あの、……お名前は何ていうのですか」
「……そっか!私たちまだ自己紹介もして
なかったんだね 」
俺が無表情だった為か謎の間があった後、
少女は俺の目を見てまた逸らす。
「私はレンダって言うの。」
この少女はレンダと言う名前だったのか
でもその名前……やっぱりどこかで聞いたはずだ
…なにか忘れている。
「……俺は、あの、恵一って言います。」
レンダさんが小さく笑ったような気がした。
「ケーイチ…よろしく!」




