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【別視点】不運な苦労人『サクライ・ヒカル』の憂鬱 前編

すみません

またしても別視点です。

しかも前回とはまた別の方です。


話が分かりづらくなるのであんま別視点多くしたらダメなんですが、

書きたくなっちゃったので書いてます。

しかも、予想以上に長くなったので前後編に分けてます。

私は日本という国で産まれ育ち、死んでこの世界に来ました。


15歳の男性だ。

見た目はいたって普通の中肉中背、眼鏡をかけてる冴えない男だ。

友人からはよく窓際にいる地味なサラリーマンになりそうだよなと言われている。

そんな普通でつまらない人間が私だ。

気が滅入るような人間関係、つまらない学校生活、心の擦り減る家族関係、変化のない環境に嫌々としていたのは事実だが、転生してしまうとは思わなかった。しかもこんな科学技術の全くない、魔術の蔓延る世界で。

運がないとは生前から思っていましたが、まさか15歳という若さで死ぬほどとは思っていませんでした。


この世界に来た私は右も左もわからず、いきなり盗賊に襲われた。

言葉すらわからず、動けなかったわたしはなすすべもなく誘拐されていた。

そんな時に、偶々通りがかったヴァッシュさんに助けられました。


そこからはヴァッシュさんに言葉を教えられ世話をしてもらい、住むところも用意してくれた。しばらく過ごした後に魔術の才能を見出されたり、ヴァッシュ隊長のコネで副隊長になったりと、大変な日々があったのですがその諸々は割愛します。

皆様、興味もないでしょうしね。

隊長がわたしにとって親のような存在だったと思って下されば十分です。



それでは、本日の話。

ヴァッシュ隊長がまたしても厄介な任務を引き受けてしまったようです。

あの方は、ぶっきらぼうに見えてお人よしですからね。


出発する前から明らかに挙動不審な商人。

不自然なほど小さい積み荷。いつもと違う森の様子。

何かキナ臭いものを感じていました。

一応隊長にも忠告はしたのですが、

「なぁに、俺たちなら大丈夫さ!」

などと流されてしまいました。


戦闘は苛烈を極めた。

ここまで私たちの部隊が被害を受けたのは、龍と遭遇した時以来でしょうか?

そもそも私たちは隠れた相手と戦うといった経験が少ないのです。

大抵が討伐依頼の大型生物か正面から向かってくるだけの盗賊団達でしたから。

まぁそれでも隠れた敵から王族を守るといった類の任務をやったこともある我々がこんなにやられたのは敵を褒めるしかない事態です。


なんと言っても厄介なのが遠くから確実に始末しようとしてくるスナイパーです。

狙いは必中、位置も300メートルは離れている。

おそらく隊長以外の仲間では対処できないだろう。

隊長は一人で獅子奮迅の大活躍をし遠くにいるスナイパーに牽制&突撃を仕掛けていなくなった。で、こちらに残った私たちなのですが、茂みからの攻撃を盾持ちが防ぎ、攻撃隊が茂みを一つ一つしらみつぶしにしていき魔術師がそれを援護する。

確実に敵を減らせていますが、スナイパーからの攻撃はずっと止まない。

スナイパーは仲間の頭を正確に撃ちぬいてくる。今も私の身体を弾丸が蛇の様にウネウネと蛇行しながら通り過ぎました。

正確にいうと私の分身に。


私は転生した異世界人だからか、この世界では珍しい幻影魔術が使えます。

原理は詳しくわかりませんが、相手を惑わせる幻を見せる魔術です。

ただ、幻影魔術は相手の視覚だけを誤認させている訳ではなく、対象の他の感覚、触覚や嗅覚聴覚を騙し勘違いを引き起こしています。

幻影魔術で生み出した分身は相手から見ると、質量も熱も持っている実体と変わらないものです。どんなに、視覚以外の感覚が優れていても簡単には見破れないでしょう。

実際、今までに見破られたことはないです。

今は私の分身を見せる魔術を、私の仲間ではない者にだけ見せています。

さて隊長が居ないなか何とか持ちこたえていますが隊の人数は半分にまで減っています。

最初は20人はいたはずなのですが……。

とりあえず『天候魔術(霧)』を使ってスナイパーの視界を悪くしておきましょう。


天候魔術は水と風と光の混合魔術で、自分の周囲の空間を操作し疑似的に天候を操作する魔術です。(霧)では霧状の水滴を発生させる魔術だ。

霧を発生させるだけだと言うと弱く思われがちですが、天候魔術(霧)での霧は見せる相手を指定でき味方には普通の空間に見えるので連携を取りやすく、また天候魔術はその空間にいる相手に他の状態異常など付加効果を付けることが出来るので便利です。

毒をつければ霧空間にいる相手は息をする限り毒を取り込み続ける羽目になります。

上手く使えばこれだけで敵を制圧することが出来ます。

まぁ、風系などで霧自体を吹き飛ばされてしまってはどうしようもないのですが。


ただ、あのスナイパーは霧を発生させてる中でも味方の頭を貫く狙撃をしてくる。

ただの狙撃ならうちのメンバーなら盾持ちが味方への攻撃を防いでくれる。

魔術を使えるメンバーが補助して鉄壁の盾になるはずだ。

なのにあのスナイパーの狙撃は、当たる直前で急激に曲がり頭に吸い寄せられる様に変化する。

どんな魔術を使っているのでしょうか?こんなの聞いたことも見たこともない。

視界を悪くしてもお構いなしだ。


もし銃弾を動かす魔術があったとしても目視で動かしているのだとしたら、霧で見えている訳がないのに正確に頭を撃ちぬけるのはおかしい。なら、ほかの条件で自動的に動いている?その条件とはなんだ?

考えながら幻影魔術を使って仲間の人数分の分身を出す。

今生き残っている仲間は私を含めて8人、8体の分身が霧の中を四方八方に散開する。

次々に分身へと銃弾が飛んでくる。だが、銃弾は頭に向かわず胴体を通過している。

この違いはなんだ?何が違う?

生きている人間と分身の違いはそんなに無い。

生きている?……なるほど、そういうことか。

俺は相手の魔術の原理にあたりをつけて、分身を操作して試してみる。

……ふむ、どうやら正解みたいですね。


おそらくですが、あの銃弾は熱を感知して追尾している。

この世界の人間は、私たちがいた世界とは違い誰しも魔力を帯びている。

もちろん、その量に差はあるけども子供でさえ魔力を持っている。

魔術を使えないものでも、無意識に身体強化の魔術を使っている。だからこの世界の人間は魔物が蔓延る場所でも生きている。

つまり誰しも魔術を使っているのである。そして、魔術を使うと脳に負担がかかる。使いすぎると脳が疲労するし、自分が制御できない魔術を使えば廃人になる危険もある。

魔術を使うと脳の熱が上がる、それを探知してより熱が高いものを追いかけていく性質があると推測できます。だから、分身を避けて本体に攻撃をしてきたし皆の頭が撃ちぬかれていたのはそういう理由だろうと思います。


魔術の種さえわかれば簡単だ。

仲間たちには盾持ち5人が、2人の仲間を囲んで守り絶対に動かないよう言い含める。

上空に火の魔術で火球を生成し、留まらせる。

人間より温度の高いものを作りさえすれば銃弾は火球に向かう。


そして、分身と一緒に移動してある場所に向かう。

銃弾は分身をもう狙わない。

さすがに向こうも動いている方が偽物だと気づいたみたいだ。

そりゃそうだ。動いている物体に銃弾は通っているはずなのに死んでいないんだからな。

まぁ、好都合なのですが。


私は真っすぐ商人のところに向かった。

相手の位置がわからないのであればおびき出せばいい。

狙いは商人なのは明白。

そもそもあの商人が怪しかった。積み荷が異常に少ないし、明らかに挙動不審。おそらくだが何か希少な『物』を運んでいるのだろうと察する。

この異常に強い盗賊たちが俺たちを狙う価値があるほどの。

なら、その『物』を移動させれば相手も動かざるをえない。


相手の目的は最初から俺らを商人のいる馬車から離れさせること。

そのために一番強い隊長をスナイパーは狙い誘き寄せた。

いや、狙っていなかったのかもしれない。生き残ったやつが向かってきてくれればそれでいい。

と、なると隊長が向かった場所は罠の可能性が高いが……、考えても仕方ないか。

分身に紛れ銃弾の雨を避けつつ商人の元まで辿り着くのが第一作戦。

無事馬車まで着いたわたしは馬車の後ろでぶるぶる震えている商人を無視して、積み荷の箱を風魔術で浮かせて運ぶ。

森を抜け街道沿いに動かせたところで、分身に銃弾がぶち込まれる。しかも、今までとは違い分身が消滅する。

なぜ分身が消滅したのかそれは俺が分身の種類を変えたからだ。


俺の分身は3種類ある。主に使う幻影魔術での分身は一番本体に近く見分けがつかないが、実体はない。『偽像(ぎぞう)分身・ファルス』

2つ目は光魔術により光を操り本人の虚像を作り出す魔術。姿は同じだが、視覚しか騙すことは出来ないし自分と同じ動きしかしない。しかも、自分の近くにしか作りだすことは出来ないので汎用性は幻影魔術に劣る。

光像(こうぞう)分身・ファントム』

3つ目は、水魔術によって作り出した自分そっくりの見た目の水の塊。これは近くで見るとすぐバレる。なんせ身体どころか装備すら水で形作っているからな、むしろバレること前提の分身だ。その分本体以上の力を持っているし、本体と違う動きも出来て実体がある。何か作業をやらせることも出来るので意外と重宝する。

水像(すいぞう)分身・フルード』

今、やられたのは水で作った分身『フルード』だ。


分身体の水であればある程度操作することが出来る。

水の分身体の温度を人間の体温程に上げている。

敵の銃弾が分身を貫く。『フルード』の分身が数体やられるが、その度に分身を出し補充する。

水分身に『物』を運ばせて、相手を攪乱するため他の分身も周りに増やす。


すると相手の攻撃が散弾型に切り替わる。

どれが本体かわからないからまとめて攻撃しようって算段ですね。

実際それが正解です。私の技は対人戦、しかも1対1に特化したものばかりです。

多人数を相手にするのは苦手ですし、広範囲攻撃されると弱い。

攻撃によって何体かの分身はやられる。しかし構わず分身を増やし続け動かす。

早く相手の攻撃射程範囲からの離脱を図る。


相手の攻撃での殲滅とこちらの移動どちらが速いかの勝負。


と、相手は思っている。

しかし、私の狙いは違いますよ。

さぁ、覚悟してもらいましょうか。


今気づいたんですけど表記が今まで魔法と魔術ってごちゃ混ぜになって書かれてましたね。紛らわしいので魔術で統一して書き直します。

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