新婚生活
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「アレン。今日のお戻りはお早いですか?」
「そこまで遅くはならないけど……ユリーシャは?」
「今日は、貴族学園での子女教育の講義がありますが、そちらが終われば帰宅できます」
「早く仕事を終わらせて、ユリーシャの講義が終わるまで待っているから、一緒に帰ろう」
「ありがとうございます」
親同士が結んだ婚約でしたが、私たちは上手くやっていたと思います。少なくとも、私ユリーシャ・タリントン伯爵令嬢……ではなく、ユリーシャ・ベッラハム次期辺境伯夫人は、夫であるアレンに恋心を抱いておりました。そして、アレンも同じ気持ちであるとつい先ほどまで思い込んでおりました。
アレンはいつも私のことを思いやってくれて、私との時間をできる限り作ってくれておりました。
貴族学園で私が講師をすることも自分のことのように喜んでくださるお方です。
そんな優しいアレンの魅力は、婚約を結んだ時に遡ります。
「ユリーシャ。ご挨拶なさい。婚約者となるアレンくんだよ」
「おはつにおめにかかります。ユリーシャ・タリントンともうします。タリントン伯爵が次女でございます」
「こちらこそ、おはつにおめにかかります。アレン・ベッラハム辺境伯令息です。とっても可愛いユリーシャとこんやくできてうれしいです」
「まぁ!」
「2人とも、かわいらしいこと」
私たちが出会ったのは、7歳の頃でした。可愛い、なんて、家族以外の男性に言われたことがなく、とてもドキドキいたしました。
「ユリーシャ。とってもきれいなおはながあるんだ。ユリーシャに似合うと思うから、ついてきて」
「ありがとうございます」
アレンは、アレンだけが知っているというーー所詮7歳児の秘密ですから、他にも知っている方はいらしたのでしょうけどーーお気に入りの秘密の花畑に連れて行ってくれて、そこで美しい花を花束にして、私に贈ってくれました。
あの時から、私の心はアレンの虜でした。
「ユリーシャ、ここは段差があって危ないから、しっかり掴まっておくんだよ?」
少し大きくなってから、いつも優しくエスコートしてくださったアレン。私が躓きそうになると、すぐに気づいて力強く支えてくださいました。
「ユリーシャに似合うと思ったら、思わず手に取ってしまっていたんだよ」
どこかに出かけた時は、いつも私にお土産を買ってきてくださいました。離れていても、アレンの心に私がいつもいるんだ、と、嬉しく思ったものです。
「ユリーシャ……君への想いが抑えきれなくて……お父上とお母上には内緒にしてくれると嬉しいな」
初めて口付けを交わした日のことは、忘れられません。17歳の社交界デビューの日です。いつもより緊張した私たちは、飲み物を取りに行く時にはぐれてしまいました。
「今日、社交界デビューしたの? とってもかわいいね。お兄さんと踊らない?」
「いえ、私、婚約者がおりますので」
「どこにいるの? 近くにいないんだからいいじゃん。俺、そういうの気にしないからいいよ」
「私、婚約者の方をお慕いしておりますから、その方以外と踊りたくありませんの」
「……失礼。私の婚約者が何かご迷惑をおかけしたでしょうか?」
「ひっ。もしかして、辺境伯のところの!? やべぇ。失礼いたしました」
「……大丈夫? ユリーシャ。少しはぐれている間に怖い思いをさせてしまったね。こんなにもかわいいユリーシャから目を離してしまった自分が情けないよ……」
「アレン。ありがとうございます。少し怖かったので、テラスに出てもいいですか?」
「もちろん。さぁ、お手をどうぞ? 大切な婚約者様」
「ふふふ、ありがとうございます」
そう言って、2人で抜け出したテラスで口付けを交わしました。
私が言った“婚約者の方をお慕いしております”は、破壊力がすごかった、とアレンは言っておりました。何かいけないことを申し上げてしまったのでしょうか?
あの頃から、アレンがたまによそよそしくなることが増えた気がします。といっても、2人きりのときは変わらないので気にしておりませんでしたが……。あの頃からアレンの気持ちは、私から離れてしまっていたのかしら?
そうでしたわ。あの頃に何か事件が起こったような記憶が……思い出せませんわ。
優しいアレンに「君を愛せない」と言わせてしまったということは、きっと私に何か悪いところがあったのでしょう。
離縁すると言われなかったので、名目上だけでもアレンの妻でいたいのですが、何が悪かったのか……教えていただけないでしょうか。やはり、こういうことは自分で気づくべきなのでしょうか?
あの日のことを思い出してみましょう。




