転生したら盾でした
バッドエンドです!苦手な方は注意!
この世界には伝説の盾と剣が存在する。
ただし、それを見た者はいない。
そして、何処にあるのかもわからない。
しかし、その盾と剣は人類の想像をはるかに超えた力を秘めていると言われている。
そんな物を人類が探し出そうとしないはずがない。
沢山の冒険者や盗賊を雇い、数多の有力者がその力を手に入れるのに無我夢中になった。
しかしその際、争いが起き、国境を越えての戦争になった。
戦争の火の手は世界中に回り、沢山の人々の命を刈り取っていった。
そして、各国が戦争に勝利するために考えたのが、どの国よりも先に強大な武力を手に入れることだった。
ある国は魔法を、ある国は武術を、ある国は呪術を、ある国は科学を極めた。
そして、この物語の主人公となる人物はその魔法を極めた国に生を受けた。
ただし、盾として、だが。
★★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
命。
それは、生き物に平等に与えられたこの世で生きるためには必ず得るもの。
虫も、植物も、動物も、勿論人間も。
誰もが持っている、真の平等。
それが俺の考える命という価値観だ。
だが、────
これは俺の想像していた命というものを覆しているのだ!
いやだって、盾ですよ?
物だよ?
生き物ってカテゴリーに入ってないんですけどー
今、俺の周りには数人の人が集まって、ジロジロと俺を観察している。
その人たちは白いローブを纏い、手にはボードのようなものを持っている。
それに、紙の様な物を張り付け、何か書いている。
とりあえず、記憶を整理しよう
俺の名前は佐藤陽翔、18歳
今年で高校三年生の普通の高校生だった
そう、『だった』のだ
何故だか、信号待ちをしていたら突然後ろから誰かに押されて、前によろよろと飛び出したところを────
ガシャーン!
ってのが俺の最後の記憶なのだが…
そこから何故か意識があり、気が付いたら体は動かないは、声は出ないはで超焦った!
んで、よく見たら自分の体が盾になっていた、と…
ないわー
マジでないわ~
そんな俺の気も知らず、白ローブの人達は俺の観察を続けている。
いい加減じっとしているのがつらくなってきた。
何か意思疎通など、この状況をどうにかできればいいのだが。
すると、一人の白ローブの男がこちらに近づいてきた。
男は俺を持ちあげ、別の場所に移動させた。
そこは普通のレンガ造りの壁や床の場所だ。
いや、普通のではない。床には紫色の魔方陣の様なん物が描かれている。
絶対危ない儀式か何かしそうな雰囲気だなぁ
え?何?俺ファンタジーの世界にでも行っちゃったの?
これどう見ても魔方陣だよな?てことは魔法ありの世界だろ?
しかもこの流れは俺が実験か何かで転生させられたパターンなのでは!?
ちょっ!ヤバくね?さっさとこの場からおさらばしないと苦しい思いを味わっちゃうんじゃ?
俺の頭の中でぐるぐると考えが回るが、動くことも言葉を話すこともかなわない現状、どうすることもできなかった。
白ローブの男が魔方陣の中心に俺を置き、位置を確認した後、離れていく。
ほかのローブの人達も魔方陣から少し離れたところでこちらを観察している。
そして、魔法の杖のようなものを構えた数人がこちらに向かって詠唱を唱えている。
あ、もう終わった
俺の新しい人生終わったー
だが、最後まで悪あがきさせてもらうぜ!
俺は、体(?)の中心に力を入れる。
すると、盾の中心部から淡い水色の光があふれだした。
その光を見たローブの人達が詠唱を止め、慌てたように焦りだした。
なんかヤバいのだろうか。
しかし、今更止めることもできない。
というか、止める方法がわからない。
あー、もういいや
あきらめるのは癪だけど、もういいや
俺は、そのまま力をため続けると、突然その力が吸収されていくような感覚に陥った。
ふと周りを見渡してみると、どうやらローブの人達が魔法で俺に何かしているらしい。
力を吸い取られていくにつれ、俺の意識が朦朧とし始める。
あ、ヤバい
いや、今までずっとヤバかったけど、なんか眠い感じが…
そこで俺の意識は途絶えたのだった。
♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡
「長、あれは一体何だったんでしょうか?」
「うむ、この実験自体は成功じゃろうな」
「それは、私も思います」
「そもそも、この実験は武器に人間の魂を移すというもののはずですよネ?」
「あぁ、だが、抵抗できるような武器が生まれるとは思わなんだ」
「ただの盾でこの威力が出せる、という結果を得ただけでも行幸です」
「これを量産し、帝国との戦に勝てば、この争いの勝者は我々王国になるだろう」
「そのためには、この実験を繰り返していくべきでしょう。何か、異論のある者はいますか?」
「全員賛成とのことですな。では、これにて第一回魂の転写術の実験を終了します」
〈完〉
夜中に走り書きした短編小説ですが、面白いと思っていただけたら幸いです!