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#3襲撃される廃墟

「1、2、3、4、5枚!凄いよ!ムル!!あの人の財布金貨が5枚も入ってるよ!!」


廃墟の中で先程藤から財布をくすねた少年がその中身を確認して嬉しそうな声を上げる。


「あらそう。それは良かったわ。これであと金貨は1枚あれば良くなったわ。ありがとう。ルド。」


少年にねぎらいをかける桃髪の少女も同じくニコニコと笑っている。


しかし、直後にその笑いは消え失せ、少女は思考を回転させた。


「(私たちの欲しい金貨はあと1枚。あと1枚あればお父様は助かる……。あと1枚。あと1枚……。)」


残り1枚の金貨をどう取ってこようかと考えているムルと呼ばれた桃髪の少女はあるひとつの結論にたどり着いた。


「そうよ!こんな金持ちが市内をウロウロしていたのだもの!これを盗った男をつけてまた盗めばいいのだわ!!」


今思いついた考えを少年…ルドに聞こえる声でムルは叫んだ。


これは名案だとばかりにドヤ顔をしたムルの顔を見て、ため息を着く男が1人。


「ハァ……。で?なんでお前らは金が必要なわけ?」


廃墟の壊れた扉に肘をついて立つ男の問いに少年も少女も答えることはせず数秒間無言の時が流れる。


そして、最初に口を開いたのはルドだった。


「おっ!お前はっ!!!」


「えっ?なに?この人誰?ルド!知ってるの!?」


「いや。ムル。こいつがその金貨の持ち主だよ!!!」


先程までしていたドヤ顔をひきつらせて早口でムルはルドに質問をなげかける。


「ちょっとちょっと!!つけられてんじゃないわよ!!なんで?なんでつけられちゃったわけ!?!?」


「いや、そんな事言われても………。」


「そんなことじゃないわよ!!これじゃ私たちの計画全部台無しじゃないのよ!!どうするの!ねぇ?どうするのよルド!!!」


「いや、どうすると何も………。」


「あの。お二人さんちょっといいかい?」


2人の高速会話(と言っても高速で喋っていたのはムルの方だけだが…。)に男…藤は割って入った。


コツコツと足音を響かせながら藤はムル達の方へと近づきながら会話を試みる。


「1回質問に答えてくれると助かるんだが………。」


「な、な、なによ。」


自分が置かれている立場をマズいと感じたのか急にしゅんとなるムル。


「最初にも言ったが、お前らは何故人から盗んでまで金を集めているんだ?しかも1万枚もの大金を………。」


「そ、それは………。」


━━━━━━━━━━━━━━━ドンッッッ!!


突如廃墟のドアが蹴破られた。


「我々は帝都警備隊である!!ここが盗賊のねぐらとの情報が入っている!貴様ら手を上げろ!」


全身を甲冑で包んだ男たちが廃墟の中に押し入ってきた。

全部で50人はいるだろうか。


「クソッ!!」


聞きたい話があったのにそれを遮られた藤はイラつき舌打ちする。


しかし同時に【幻影ジ・ファントム】の発動もさせていた。


幻影の名の通り、廃墟を無人にしたてあげたのだ。


「(【幻影ジ・ファントム】は、姿を晦ますことは出来るが音を遮ることは出来ない…。子供たちに喋らないように伝えなければならないが………。)」


藤は子供たちの方をみる。


2人は完全に怯えきってしまい、ガクガクとふるえているた。


「(これなら好都合だな。)」


2人が動かなければこちらのものと藤は行動を開始する。


まずは金貨の回収。


これを押えられたら2人の努力が無駄になることは想像にかたくないので、これは優先して回収する必要がある。


しかし、2人に見つかる訳にも行かないので藤は【幻影ジ・ファントム】を2重にかけて2人に認識されないようにする。


「【幻影空間】っ!」


藤は小声で能力を発動させる。

突如として藤の目の前に黒いモヤのようなものが出現する。

ちなみにではあるが、能力はその名を発音しないと発動しないのだ。


声を発した藤は周りを確認するも、特に気づかれた様子もない。


「(よしっ!)」


藤は心の中でガッツポーズをすると、藤はその黒いモヤの中に金貨の入った袋をすっと入れた。


音は出ていない。


もう一度周りを確認すると、一通り検問が終わったのか帝都警備隊が引き返していくところだった。


「確かにいたのになぁ。」


赤い腕章をした最初に声を上げた男がブツブツと独り言を言いながら廃墟を出るのを確認してから【幻影ジ・ファントム】の能力を解除する。


藤と、2人の姿が再び現れる。

そして藤はもう一度2人の前へと行き、再三となる質問をなげかけた。


「で?2人はなぜ盗みをしていた?」


2人は不思議そうに顔を見合わせ、帝都警備隊に見つからなかったのは藤のおかげだと察したのか頷きあうと、ムルが藤に話し始めた。


「実はお父様を救うためにお金が必要なの………。」



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