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#02 怪盗からものを盗んだ子

時は、バラッド邸襲撃事件の8日前に遡る。


男、藤祐介はエドゥアルド帝国の首都メンデスの市場を物色していた。


「(いやぁ。やはりこういうところに出てくるのはいいな。)」


藤はもう一年以上前に来たというのに、異世界に来たという実感を今かみしめながら市を歩いていく。


この世界は、藤達のいた世界で言う中世くらいの文明が発展しているので、市を歩いていれば店主に声をかけられることも多い。


そのため大抵の人々はいちいちよることもしないのだが、藤は元々受け継いでいる日本人としての血が騒いでか、店主の誘いに乗っかりまくり市を出る頃には大量の荷物を抱えていた。


「(不味い。この荷物どうすればいいんだろうか…。)」


そう悩んでいた時、両手が塞がっている上前の視界がない無防備の藤に誰かがぶつかった。


━━━━━━━━━━━━━━━ドン


「おっとっと。」


藤はぶつかってきたのが大きさ的に子供だと気づき、咄嗟に声をかけようとした。


「おい。大じょ…。………ん?」


次の瞬間、藤は唖然とした。


先程まで確かにあったズボンのポケットの重みが消えていたのだ。


「ッッッ!!あいつか!!」


見れば藤にぶつかったであろう少年は人混みの中に消えており、普通なら探索するのは困難な状況になっていた。


しかし、それは“普通なら”のことであり、少年は狙った相手が悪かったとも言える。


何せ相手は天下の大怪盗だったのだから。


「怪盗からもの盗むなんてあいつ結構やるな。」


藤は感心を口にする。


しかしそれはそれとして、探索を開始する。


「発動【幻影の冗談】!」


それは、異世界に召喚されたいわゆる異世界人が持つことを許されたスキルだった。


藤祐介という男に与えられた能力は【幻影ジ・ファントム


そして今発動した【幻影の冗談】はいくつかある【幻影ジ・ファントム】から派生させたスキルの一つである。


その能力は単純で、藤の認識したものを透明にして隠す。


ただそれだけの能力だ。


しかし、藤はこの1年で元からそなわったスキル以外のスキルを体得していた。


それは魔力探知。


自らの魔力を帯びた物を把握することが出来るというもの。


極めれば魔力を通して遠方まで見通し、果ては未来まで見えるようになると言うが、藤はそこまでの技術は体得できていない。


ともかく、魔力探知と【幻影の冗談】のふたつを使い、少年の混乱と場所の把握を行おうというわけだ。








少年に財布が盗まれてから30分が経過した。


「さてと、そろそろ行くか。」


懐中時計を見ていた藤が動き出すのと少年が立ち止まってとある建物の中に入っていくのはほぼ同時のことであった。



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