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#00 プロローグ
夜。予告状の時刻通りに現れ、狙った獲物を逃さずに盗みとる怪盗。
そんな怪盗に俺、藤祐介は小さいころから憧れていた。
怪盗は、盗みに美学を持っている。
例えばそれは決して人を殺さないことであったり、そもそも盗まれたものを盗み返したりなど…。
俺は、昔からこう思っていたのだ。
俺自身が怪盗になれたらと。
俺が怪盗になれたら、世界をもっといいふうにできるんだと。
そう思って生きてきた。
しかし、それは無理な話だと分かるのにそう時間はかからなかった。
俺が生きている時代には怪盗なんてものはいなかったのだ。
怪盗という存在は小説やアニメ、ドラマの中にしか出てこない。
そもそもがあんな何人も一人の人間が翻弄できるはずもない。
そう思って自分の夢を諦めていた。
そう。あの時。俺たちが、異世界に飛ばされるまでは…。
これは、俺が俺の憧れと夢を叶える物語。