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9.勘当した理由

「取り敢えず、落ち着けサヴァン。ヴィクターがここにいる理由は今から説明するから」


「カ、カイル団長がそう仰るのでしたら……」


「とは言っても、そう難しい話じゃない。ヴィクターが特務騎士団に復帰する。ただそれだけの話だ」


 カイルがそう告げると、サヴァンは大きくその目を剥いた。


「なっ!? しょ、正気ですかカイル団長!? こんなちんけな魔力しか持たない小僧を団員にするなど!?」


 あんまりなその言い草に、流石にヴィクターも苦笑していた。


「魔力で全てが決まると思っているのなら、おめでたい頭をしているな、サヴァンよ」


「貴様は黙ってろ! 今私は団長と話をしているのだ! 大体! 団長もコイツに貴族としての価値がなくなったと判断したから勘当して騎士団もクビにしたのでしょう!? それがどうして今更!? ま、まさかまた副団長にするんじゃないでしょうね!?」


 アリサはサヴァンの言葉を聞いて思わず驚きの声を上げた。


「ふ、副団長??」


 アリサが入団したのは4年ほど前の事であり、ヴィクターがこの国を去ってからであったため、彼が特務騎士団の副団長だったなど初耳だった。

 大体5年前の彼はまだ12歳だったはずだ。そのような子供が大人に混じり騎士団を指揮していたなど、まさしく神童と言うほかないだろう。


「流石に復帰したばかりで今の現場も知らないヴィクターに任せるようなことは無いさ」


「そ、そうですよね……。ではなく! そもそも入団自体に私は反対です!」


 サヴァンに対して、困ったようにカイルは眉根を寄せる。

 実際、断れるのであればカイル自身も断りたいのは山々だったのだ。

 カイルは、これ以上自身の息子を危険に晒したくはなかった。元々ヴィクターを勘当したのはひとえに彼の安全を確保するためだった。

 魔力を失い自衛の手段を失ったヴィクターが公爵家の嫡男であり続けるのは、あまりにも危険性が高かったのだ。いつ政敵から消されてもおかしくない状況下から逃がすためにも勘当は致し方ない手段だった。特務騎士団をクビにしたのも殉職してしまうのを恐れたためだ。

 カイルはヴィクターに、平民として穏やかに暮らして欲しかった。

 たとえ魔力が使えなくとも彼の地頭の良さならできる仕事は星の数ほどある。そうして貴族の血生臭い場所から距離を取り、暖かな家庭を築いてくれたら、もうこれ以上の幸せはないと本気で思っていたのだ。

 だというのに、この愚息は危険極まる職業に舞い戻ろうとしている。


「ヴィクターの推薦状がある限り、私に拒否権は無いんだけど……。だが、そうだな。ヴィクター。私は今のお前の実力が知りたい。アリサから魔術獣を倒したとは聞いているが、実際に私が目にしたわけではない。今のお前は一体、どれだけ騎士団にとって使える存在だ?」


「ふむ……。当然の疑問だなカイル団長。戦力を正確に把握していなければ、我を満足に使う事も叶わないだろうな。ではそうだな、サヴァン副団長、我に胸を貸せ」


 どこまでも上からのその発言に、サヴァンは青筋を浮かべた。


「ふざけた態度を……っ! だがまあいい。身の程を思い知らせてやる。私と戦った後でもそんなふざけた態度が取れるか見ものだな」


「どうやらサヴァン副団長は相当我のことが嫌いらしいな。それでは我が負ければ騎士団への入団は取り下げよう。だが勝った暁には異議は受け付けぬぞ?」


「良いだろう。とは言っても私の勝ちは揺るがないだろうがね」


 そう言って、眼鏡をくいっと上げるサヴァン。


「では、そういう事で良いな? 団長」


「君達がそれで良いなら、それでいこうか」


 実際、この話はカイルにとってもそれほど悪い話では無かった。

 ここでヴィクターが負けてくれれば、彼を騎士団に入れなくて済むのだから。


貴重な時間を割いて拙作を読んでいただきありがとうございます。

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