18.試験の結果
「これってこの前の定期試験? そう言えば、今回は特に難しかったっけ……。って何これ? 全部正解してるじゃない! でも、何々……。『カンニングの疑いがあるため0点とする』って、はあ!?」
「カンニングなどしておらんし、そもそもこの国の基礎術式を改良したのは我なのだから、この程度の問題で間違えるわけが無いのだがな? どうも学院の方々には信用していただけないようだ」
「それはよく分かったけど……何でこの結果を出すのを渋っていたわけ?」
「いや、実はその結果を見たテオドールが激怒してな……。先日学院で教員数名が医務室に運ばれたのだが……、知っているか?」
「あぁ~~、そう言えば、そんな話があったね。普段温厚なテオドール君がいきなり発狂したって学内新聞に取り上げられていたっけ? 結構なことやらかしているのに停学にならなかったのには何か深い闇があるのではないか!? みたいな感じで新聞でも煽ってた気がするよ」
「その発狂の原因がソレだ。どうやら我にはお手洗いに行くと言っておいて、その間に教員への抗議を敢行していたようだ……。だが当然そのような異議申し立ては認められないと頑なに拒否され、不満が爆発した結果複数名の教員と決闘を行い、医務室送りにしたらしい。正直、アイツを抑えられなかった我に一番責任があるため、あまり言いたくなかったのだが…………」
ヴィクターは申し訳なさのあまり、シュン、と小さくなっていた。
完全に教員の自業自得だったのだが、ヴィクターはテオドールにまで迷惑をかけてしまった事を深く反省していた。
「なるほどな……。しかし、今の話が本当なら魔術学院の内部は随分と腐敗してきているようだな……」
教員による不当な評価のせいで、神童ヴィクターの評判はここまで地に落ちているのだ。冷静に一つ一つを評価すれば、彼は魔力の大半を失った今でも十分神童と呼ばれるに相応しい実力を持っていた。
だが当のヴィクターは正当に評価されていないことはさして気にしてはいないようだった。
アリサはそんな彼の態度が不思議で、思わず尋ねてしまう。
「な、何でそんな不当な扱いを受けてるのに何も言わないのよ! こんなのおかしいじゃない!」
「光り輝くものを妬むのは世の常だ。そうしたい奴にはさせておけば良いのだよ。それに、我は別に学院での評価が欲しいわけではないからな!」
何故か胸を張って言うヴィクターに、心底不思議に思いアリサは尋ねた。
「じゃあ何で学院に通ってるわけ?」
彼女の質問を受けて、ヴィクターはフイ、と視線を逸らしながら言う。
「…………さてな。もう質問には答えたから良いだろう」
「あ! 誤魔化した!」
「まあヴィクターが学院にいてもいなくても特務騎士団的には特に問題はないだろうから、無理に言及しなくてもいいんじゃないかな?」
元息子の心情が複雑なモノであろう事は想像に難くなかったため、カイルは助け船を出すことにした。
恐らく、ヴィクターはアリサ(リディア)が不自由なく学院に通っている姿を見たかっただけなのだろう。その結果、現在の婚約者との仲睦まじげにしている様子を見せつけられるのだから、正直地獄みたいな状況なのではないだろうか、と推察し同情を禁じ得なかった。
その後もアリサはしつこくヴィクターに言い寄っていたが、頑として口を開かなかったためやがて諦めたようだった。




