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15.オズワルド

「ああ。事前に武器に塗り込むことで触れた魔術を壊すことができる。結果的にお前と同じことができるわけだ」


「だが、毒も共に霧散しているな? これでは攻撃するたびに塗り直さなくてはなるまい?」


 そう言ったヴィクターの指先からは既に毒は消失していた。

 当然、なんとか対処できるようになったというだけで欠点も多く存在していた。

 つまりこの毒は魔力と結合する性質を持ち、結合した後は固体(から)気体となって空気中に発散されてしまうのだろう。


「ああ。だから基本的に最近の特務騎士団は2人組ないしは3人組で王都の警備に当たるようになっている。再塗布する時間を稼ぐために戦闘時にこまめに前衛を交代する必要があるからな」


 ヴィクターは腕を組み、再びその毒を観察する。


「この毒、一体誰が開発したのだ?」


 その問いに、カイルは缶を指差して答える。


「セルランス家と同じ公爵家であるグランウェル家だ。ほら、缶の底面に家紋があるだろう?」


 ヴィクターは手に持った缶を持ち上げて底面を覗き込むと、確かにカイルの言う通りグランウェル家の家紋が彫られていた。

 グランウェル家は代々回復魔術や魔術薬の開発に傾倒してきた家系である。


「開発したのはオズワルドか……? 確かあの家の当主は1年前に亡くなっているはずだ。家督もオズワルドが受け継いでいるはず。……しかし、先代も例に漏れず短命であったか」


 グランウェル家は代々短命として知られる家系だった。だからこそ、歴代当主は学院を卒業すると同時に結婚し跡継ぎを作って辛うじて家を成り立たせてきた。時には男の跡取りが生まれない代もあったそうだが、家格の高い親戚から養子を迎え今まで存続してきた家系だ。不可解なのが、枝分かれした家系は短命でないにもかかわらず、当主に襲名されるとグランウェル家の呪いとでも言わんばかりに短命となってしまう点だ。しかしその点については過去幾度となく調査され、グランウェル家に魔術的な呪いが掛けられていないことは証明されていた。今では、グランウェル家に伝わる固有魔術が寿命を削り取っているのではないかと言われている。

 そしてオズワルドが当主になったとすると、グランウェル家が代々継承しているだろう固有魔術を含めた全てが継承されていると考えるのが自然だとヴィクターは考えた。


「……戻ってきたばかりだというのに、良く調べているな。お前の言う通り、この毒を開発してくれたのはオズワルドだよ。知っているだろうが、アリサはオズワルドと浅くない関係性にあるからな」


「うむ、当然知っておる。学院で二人が共にいるのはよく目にしているからな」


 特段気にした様子もなく、ヴィクターはそう言い切った。

 カイルはほんの僅かに言い難そうに尋ねる。


「その、何だ。……辛くはないか? お前は彼女のことをーー」


「ーー後悔はしていないと言っただろう。こうなることも全て承知の上で我は彼女のことを助けたのだ。それ以上は我に対する侮辱に他ならない」


 ヴィクターの鋭い金の瞳が、カイルを射抜く。


「……すまない。失言だった。他に何か聞きたいことはあるか?」


 カイルは己の発言を恥じ、即座に謝罪する。

 5年前の息子の覚悟を知っておきながら、先の発言をするのは到底許されるものではないだろう。


「騎士団の警備は相変わらず二交代制か?」


「いや、今は三交代制になっているな」


「アリサはどの時間帯だ? 以前我と会った時は深夜だったが……。昼間は魔術学院があるだろう?」


「アリサは基本的に学院が終わってから日付が変わるまでを担当して貰っているよ。報告書を見るに、共に行動していた騎士団員と戦闘を繰り返すうちに分断されていたみたいだな。結果として交代時間を過ぎても追跡を続ける羽目になり、お前と遭遇したんだろう」


「ふむ……。なるほどな……。ところで、今までの命成魔術の被害場所はどうなっている?」


 カイルは王都の地図を取り出しながら説明をする。


貴重な時間を割いて拙作を読んでいただきありがとうございます。


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