14.命成魔術
「それで、ヴィクター、お前は今の王都に何が起こっているかどこまで把握している?」
団長室のソファに、机を挟んで向かい合って座る二人。
部屋の中は魔術道具による暖かな光で満たされ、元親子の二人の顔をハッキリと照らし出していた。
二人の前には暖かな紅茶が入ったカップが置かれ、湯気がゆらゆらと揺れていた。
「我がこの王都の戻る二月ほど前から、夜間の外出禁止令が発令されおるな? 原因は言わずもがな、あの魔術の獣だろう?」
「ああ。3か月ほど前に初めて確認されたその魔術は、命成魔術と呼称されている」
「命成魔術……。その名の通り、命を持っていると? 魔術が?」
いくら元神童であるヴィクターとて、にわかには信じがたい魔術であった。
「本当に命があるかどうかの証明は、不可能に近いだろう。ただ確かなことは、その魔術が術者から独立して動いているであろうという事だ」
「何故そのように考えた? 術者が近くで操っている可能性は0なのか?」
「命成魔術が十数体出現した時の話になるが、特務騎士団で連携して命成魔術を可能な限り分断したんだ。もし仮に術者が直接操っているのだとしたら分断された時点でいずれかの魔術の動きは鈍るはずだった。でもーー」
「ーーそうはならなかった、と。術者が複数人の可能性も捨てきれはしないが、人数が増えれば増えるほどその所在がバレやすくなる。魔術を制御するにはそれなりに近くにいないと駄目であろうからな。結果として、魔術自体が意志を持っていると結論付けられたわけだ」
ヴィクターの推察に、カイルは拳をぎゅっと握りながら肯定する。
「ああ。しかも厄介なのが魔術と物理、その両方に耐性があることだな」
ヴィクターは興味を示したように唸る。
「ほう。それは興味深いな」
「まあとは言っても、その二つの手段が封じられたから何もできませんとは言えないからな。一応魔力の流れを阻害する毒を開発し、何とか対処できるようになっているところだ」
「ほう……。毒……とな?」
カイルは上着の内側から、一つの金属製の缶を取り出しヴィクターへと差し出した。
ヴィクターは手渡された缶の蓋を開け、中身を覗き込む。
「これは手にとっても安全なのか?」
「ああ。一応、毒とは言っても触れただけで害になるものでない」
ヴィクターは缶の中身をほんの少し指先ですくい、マジマジと見つめた。
粘土のような触感のソレは室内照明の光を浴びて鈍色に光っていた。
(魔力の流れを強制的に阻害すると言っていたな。どれ……)
ヴィクターは指先についた薬品に魔力を流し込もうとする。
するとーー
「なるほど。これは確かに、魔術に対して特効となるだろうな」
ーー注入した魔力が霧散していく感覚があった。
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