2
ルーシェこと、エルシア。
4歳になりました。
今日は母さんと一緒に市場でお買い物です。
ハイハイができるようになったら子ども部屋、歩けるようになったら家の中、と活動範囲が増えていき、今では時々外にも連れて行ってもらえるようになった。
必ず誰かに付き添ってもらう、という制限付きではあるけど。
「ルーシェちゃん、行くわよ」
「はーい」
母さんは家の中にいるほうがいいらしく、あまり外には出ない。
だから今日は母さんの気が向いた、とても珍しい日なのだ。
レースやリボンで飾られた可愛らしい水色のケープを被る。
このケープは丈が長く、なんと私のもふもふ尻尾がしっかり隠れる長さだ。
もはやローブである。
このケープは毛並みを隠すためのもの。
どうやら私の真っ白もふもふな毛並みは珍しいようだ。
扱いとしては、白い生き物が時々神様の使いとされているような感じだろうか。
目は赤くないからアルビノではないけど。
赤くないなら何色かといいますと。
なんと、オッドアイでした!
右目は緑青、左目は黄緑。
似たような色だったから、しばらくは誰も気づかなかったのだ。
具体的には約1年。
さすがにもうちょっと早く気づけと苦言を呈したい。
これもまた珍しいから、隠すように言われている。
身支度を終えてお手伝いさんに見送られ、母さんと並んで市場に向かう。
私の家は比較的市場に近いところにあり、4歳児の足でも歩いていくことができる。
ただし、4歳児なので時間はかかります。
20分ほどかけて市場の端に到着。
大人の足なら10分もかからないんだろうな。
市場は二重構造になっており、露店の契約形態によって内側、外側に分けられる。
簡単に言ってしまえば、内側は長期契約、外側は短期契約だ。
市場に露店を出したい場合、まずは届け出て場所を借りる必要がある。
この届出のときに1日単位の短期かひと月単位の長期か選ぶ。
そして契約期間に合わせた額の場所代を納め、ようやく出店許可がおりるのだ。
ちなみに、場所代は税として国に納められる。
外側は行商人が多いため工芸品やアクセサリー類が多く、内側は定住者が多いので八百屋や肉屋といった生活に根差したお店が多い印象だ。
そういった違いを含めて、見ているだけでも楽しい。
ついつい歩みが遅くなるのも仕方のないことだと思う。
……ということでね、うん。
迷子になりました!
さて、どうしよう。
ここでじっとしているべきか、母さんを探しに行くべきか。
以前、というか前世で、連絡手段がない場合に人と合流するなら二人とも動き回った方が早く会える、という検証をテレビで見た。
二人とも手掛かりをあちこちに残せるから互いに足取りを追いやすくなるんだとか。
あれは災害時、という設定だったけど。
そういうわけで母さんを探す方に傾いてはいるけど、懸念もある。
私、4歳児。
体力もつかなぁ?
「エルシア・ターシェント……?」
「え?」
なんとなく呼ばれた気がして声が聞こえた方に振り向く。
いや、ターシェントは記憶にないけど。
振り向いた先には、私と同じようにフードで顔を隠した、2つ3つほど年上と思われる男の子がいた。