食人少女と食用少年
「う〜ん、おいしぃ...」
そんなふうに俺の腑を食べながら少女は言う。
どうしてこんなことになった...?
遡ること数時間前、俺は学校から帰る支度をしていた。
「伏見くん、今から帰り?」
「ああ、久城か。そうだよ、部活も委員会もないから」
「ならさ、ちょっとこの後付き合ってくれない?先生から屋上の掃除頼まれちゃってさ」
「まあ別に良いけど...」
そうして、とりあえずスマホと財布以外の荷物を残して、屋上に向かう。
久城は先生に好かれるタイプの生徒で、こういったことをよく頼まれるらしい。
「でも伏見くんの手が空いてて良かったよ」
「まあ帰っても暇だしな」
しばらく歩いて、渡り廊下を超え、階段をいくつか上り、目的地に到着する
「屋上ってこんなところにあったんだな」
「まあ、あんまり来ないからね、ここら辺」
言われてみればそうだ、こんなところにあったんだなぁ
「じゃあ、早速始めようか」
俺は久城の後に続き、屋上に出る。
◆
「なんだ?結構綺麗じゃん、掃除の必要あるのか、これ」
「実は、屋上の掃除っていうのは嘘なんだ」
久城がそう言うと、カチッと音がした
あ、鍵閉められた
てか屋上の掃除が嘘ってどういうことだ?
なら、どうして連れて来られた?
その意味を考えていて、次の瞬間気づいたら押し倒されていた。
馬乗りになった彼女はおもむろに服を脱ぎ始めた。
「久城?なにやってるんだ」
「汚れないように服脱いでる」
汚れないようにって、やっぱりそう言う....
「あ、たぶん君が想像してるようなことじゃないよ」
え?そういうことじゃないの?ならどういう
「まあ、冥土の土産として目に焼き付けて逝きなよ」
冥土の土産?え俺死ぬの?
「それじゃあ、いただきます」
「いっ...ぎゃああああああああああ!!!!!!!」
久城は俺の腹に噛み付き、噛みちぎった
「臭くもなく、皮ばかりでもない肉は久々だなー....てあれ?痛さのあまり気絶しちゃった?情けないなぁ、まあその方がうるさくなくて良いけどね」
そして今に至るわけだが、
「伏見くん、美味しいよ、もっと食べていたいなぁ...」
そんなことを言っている、正直もう限界だ....
ダメだ、意識が遠のく...
「派手に食べられたねー」
中性的な少女?が話すしかけてくる
「派手に食べられましたねー、ってどこだ、ここ?」
「ん?ここは神様の間だよ。
君は派手に食べられて、血がドバドバーて出て、死んじゃったの」
「神様?君が?」
「うん、そうだよ、ボクが神様、名前は、そうだな、リラとでも名のっておくよ」
ちょっと考えるそぶりを見せて名前を告げた
「そういえば、こんな感じで死んで神様に会ってって展開、本で読んだ気がするが、俺は異世界転生でもするのか?」
「違うよ〜、これ以上彼女の被害者が増えないように君に犠牲に....ちょっと手伝ってもらうだけだよ?」
今思いっきり犠牲にって言われたけど
「死んでる俺にこれ以上どう犠牲になれと?」
「復活させてあげるのと、超再生の能力をあげるよ」
「そして彼女に美味しくいただかれ続けろと、拒否権は?」
「ないよ、ついでだから痛覚遮断も付けてあげる」
「痛くないし、再生するからって食べられていいわけじゃないからな?」
「そんなに食べられたくないなら本人に交渉して説得してみなよ」
「まあ拒否権ないなら仕方ない、でもこの役割を受けたわけじゃないから」
「今はそれでいいよ、それじゃあ復活させるね」
リラが指をパチンと鳴らす
すると、足元に穴ができ
「....え?」
落ちる
「えええええええええええええぇえぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
「それじゃあ、頑張ってね〜」
目が覚めると屋上にいた。
そこには久城の姿はない。
服は引き裂かれ殆ど全裸の状態、おなかには穴が開いてたとわかるような跡ができていた。
周りには血が飛び散っている。自分の血ながら気持ち悪い。
そうして、自分の体や周囲を確認していると扉が開き
「あまりの美味しさに片付け忘れてた!」と言って久城が戻ってきた。
「あれ、伏見くん?なんで生きてるの?夢かな、あまりの美味しさにもっと食べたいって夢を見てるのかな?」
「いや、現実だ。正直俺も実感ないけど」
とまあ軽く説明する。
「へー、なら伏見くんをいくら食べてもいいんだね!」
「良くないよ!」
「じゃあまた獲物探ししなきゃ」
「それも良くないよ!」
食人をやめようと思わないの?と聞くと
「そんなこと言われても、じゃあ牛さんとか豚さんとかが可哀そうだからって食事をするのをやめようと思う?」と少し拗ねたように言う。
「それとこれとは話が...」
「同じだよ。私たち食人鬼にとってはね。」と真面目な顔で言う。
なるほど、そんな事情があったのか、とはあまり納得いかないが、嘘ではないのだろう。
「あまり一般には知らされてないけど、そういう人、実は多いんだよ。そのために国が色々手を回してくれてたりするんだよ。」
私の食事はちょっとやりすぎだって怒られるけどね、と付けくわえる。
「じゃあ他の人はどうしてるわけ?」
「謎の入手経路で国から人肉が支給されてます。でも私はそれでは足らずに腹ペコなので、自分でも狩ってるわけですよ」
「普通に殺人罪」
少しでも同情しそうになった自分が馬鹿らしくなる。
「まあ次やったらもう見逃せないよって言われてましたけど」
「その次が今回じゃないの?」
「そうなりますね」
「バカなの?」
「な、バカとは失礼な。私の試験の順位知ってるでしょ?」
トップではないが、一桁の順位を常にとっているのは知っているが、そういうことではない。
「勉強ができるできないじゃなくてだな」
「なにも怪しまずこんなとこまで付いてくる人に言われたくないでーす」
普通に生活していて予想できることではないので、俺はそんなバカじゃないと思う。バカじゃないよな?
「まあ今回は俺が生き返ったからよかったけど、次こそは本当にないんだろ。」
「だからと言ってやめられません」
いや、やめようよ、食欲旺盛すぎないか、この子。
「伏見君を食べても死なないし、美味しいから、君が食べられてくれたらそこを気にしなくて済むし、私はハッピーだよ」
「俺はアンハッピーです」
「どうして?別に痛くもないし、再生するんでしょ?」
「だからと言って食べていいわけないだろ。逆の立場で考えてみなよ。」
うーん、と少し彼女は考えた後
「いやだね!」
「だろ!」
「何の見返りもなく、ってのが特に。」
え、別に見返りとかそういうことじゃ
「じゃあ、.......私のこと、好きにして、いいよ?」
は?
「自分が仮に食べられる身になったとき、私の言ってることって最低だなって思ってさ」
だから交換条件、と彼女は言う。
「どんなことでも、か?」
「君を殺しておいてなんだけど、さすがに殺さないで欲しいかな。
都合がいいのはわかってるよ、でも私にとっては餓死しないためにこんなことしてるわけで...」
といったところで、ハッ!っと口を押える。
「餓死しないため?そんなに足りないなんてありえなくないか?」
仮にも国が動いているのだ、少女一人の食事が賄えないのはおかしいし、それならもっと犠牲者がいてもおかしくないはずだ。
「それについては、黙秘権を行使します。」
「言え」
「.....言いたく、ないです」
「じゃあ、交渉決裂だ」
そう言って、背を向けると
「わかった、話す!話します!」
と裾をつかまれる。
「えーっと、実は私、ハーフでして、純粋な食人鬼ではないんですよ」
「へー、そうなんだ」
突然こんなこと言われてもこんな反応になるだろう。
「それでですね、半分が人間なら人間の食べ物で十分だろと私の分の食べ物も父に奪われてまして。
私は人間の食べ物からは殆ど、というか全く栄養を取ることができないんです。」
だから、普通に食人鬼と同じように人肉が必要になると彼女は言う。
「食人鬼課の方も注意しかできないらしく、私に直接渡すこともできないそうです。
そのかわりが、今までの食事の隠蔽と看過です。さすがにもう誤魔化しが効かなくなったみたいですけどね」
「いや、今まで隠蔽出来ていたのってすごいな。」
「失踪しても足のつかない人を選んで食べてましたからね。でも次で最後ならって、ずっと美味しそうだと思ってた伏見くんを選んだわけですよ」
そんな理由はあまりうれしくないけどな。
「これでわかってくれましたか?ここで私を見捨てたら私は死んでしまいます。
さっきは死んでもいいって覚悟で君を食べたけど、君が協力してくれるなら私は生きることができる。その可能性が見えて、まだ生きていたくなっちゃった」
だから、その責任をとって、お願いします、と懇願される。
「まあ、死なれても嫌だし、事情はわかった。」
と頭を掻きながら言う。
「じゃあ食べさせてくれる?」
「問題が解決するまで、な。俺も解決するよう協力するから」
何ができるかわからないが、ずっと食べられ続ける人生も嫌だからな。
「やったー!ありがと、さっそく一口いい?」
「まだ足りないのかよ」と悪態をつきつつ、あとで好きなようにさせてもらうからな、と許可すると、顔が耳に近づいてくる。
「あ、一つ教えといてあげる。食人鬼にとって『美味しそうは好き』で『美味しいは大好き、愛してる』だからね」と囁かれ、耳の感覚が途切れた。
ちらりと見えたその頬は、少し赤く染まっていた気がする。
あくまで食事してるだけなのでR18なことではありません。やってることはR18Gですが、このくらいの描写ならR15でいける、はず
補足として、久城さんの「美味しい」系の言葉を翻訳すると
「おいしぃ....」=「だいすきぃ....」
「美味しいよ」=「大好きだよ、愛してるよ」
「あまりの美味しさ」=「大好きすぎて」
「美味しいから」=「大好きだから」
「ずっと美味しそうだと思ってた」=「ずっと好きだった」
になるわけです。普通に食の好みとしても使いますが、彼女はずっと異性としての意味で言ってます。