狂
16章 狂
終わった…。
やっとだ。いろいろアクシデントがあったけどね。
「やっと倒しましたね!」
愛花が話しかけてきた。
確かに危機はしのいだが、あいつは倒さなきゃいけなかったのか?
もっといい方法があったんじゃないのか。
あいつを倒さずに幸せにする方法が。
「どうしたんだ、そんな悩んだような顔して。」
「別に倒したんだからハッピーエンドだろ。」
天川と松本が聞いてきた。
ちがう。
そうじゃないんだ。
もっといい方法があったかもしれないんだ。
あいつを救える方法が。
みんなで幸せに日常を暮らせる方法が。
「…どっちなんだ。」
「どうしたんですか?」
「…違うんだ。」
「おい、大丈夫か顔色悪いぞ。」
「
「…そうじゃない…。」
「何がそうじゃないなんだ?」
みんな何を言ってるんだ。
言っていることが理解できない。
何を何を何をなにをなにをなにをナにをナにをナにをナニをナニをナニをナニをナニヲナニヲナニヲナニヲナニヲナニヲ………!
「…。」
「どうした、黒や…」
その目は感情が残っていなかった。
何も考えていない目、すべてをあきらめた目、この世界を憎む目…すべてを破壊する目。
「おい、どうした。」
「…ナにをスレばイいんダ…。」
狂っていた。
その口から発せられた言葉は聞くものすべてを戦慄させた。
その言葉は狂っていた。
まるで中の人格が変わってしまっていたようだった。
黒山信二はもうここにはいなかった。
今ここにいるのは別人だった。
全てを憎み、全てに問い、全てを破壊する。
別の『黒山信二』がそこにいた。
「おい!どうした黒山!」
天川が『黒山信二』に声をかけた。
それに『黒山信二』は答えない。
「信二君どうしたの?」
櫻木が問いかけた。
それに『黒山信二』は、
「…ウるさイ…。」
そういうと、
「スべてノゲんシよ、ワがてキをはラエ…ぜンギしュギんせン…。」
そう唱えると、辺り一帯が弾けた。
その瞬間視界が真っ白になった。
「ッ!どういうことだよこれ!」
「わからない!いったい何が!」
しばらくすると、いろいろなものが見えてきた。
「…いったいなんだよこれ。」
目に入ってきたのは、変わり果てた姿になった教室だった。
「そういえばあいつは!」
黒山のようなものはいなくなっていた。
「なんなんだ?」
「わからない、私もこんなものは初めてだ。」
一人、声が聞こえないな。
櫻木はどこだ?
そう思うと下から声がした。
「…なんですかこれ、どうなってるんですか、信二君はどこに行ってしまったんですか?」
見ると櫻木は下でうずくまっていた。
「すまない、俺たちも今の状況は全くわからないんだ。」
「そうですよね、すいません。」
本当に一体何が起きてるんだ。
あいつは一体どこに行ったんだ。
なぜあいつはああなった。
どうしてこうなった?
答えはどこにあるんだ?
サイコ
「相変わらずえげつないねぇ、狂気。」 ミスト
「これが俺のやれることだ、口出しすんじゃねぇ冷気、お前も狂わせるぞ。」
「一応仲間同士なんだから少しは抑えようよ。」
「知ったことか、俺は自分が楽しかったらそれでいいんだ。」
「そんなこと言ったって君もあの人には勝てないでしょ。」
「今はな、いつかは最強の座を奪ってやる。」
「はいはい、いつかね、そのいつかはいつになるかは知らないけど。」
「なるべく早く奪ってやるこの力を使いこなして。」
「まぁ、私も欲を言えばもっと上に行きたいけどね。」
「そのためにはまず俺に勝てるようにならないとなぁ。」
「ふふっ、そうですね。」 サイコ ミスト
「はーい、そっちにいる悪魔、えーっと…、狂気、冷気!」
「はい、なんでしょうか。」
「あの方が呼んでるよー、ただそれだけ。」
「?何の用でしょうかね。」
「知らないが行かなきゃいけないな。」
「そうですね、五大魔の称号をはく奪されても困りますしね。」
「いつかは奪ってやるあの階級!」
「…頑張ってくださいね。」
そういうと、二人の悪魔は闇に消えていった。
17章に続く