終わりは悲しいけれど、それだけじゃない
こんにちは!いつもありがとうございます。今回はファンタジー長編への足掛け第2弾ということで、心理描写を確認します。
目も開けられないほどの大粒の雨が肌を打つ。痛い、という感覚も。灰色が埋め尽くした空ももう見ることはできないけれど。大勢の人の押し殺した息遣いと雨よりももっと冷たい鋼の感触が、私の身体を芯から冷やしていく。だけどどうしてだろうか。あれほど消えなかった怒りも恨みも、もう私の中にはなくなっていた。
魔王の娘として生を受けて20年。優しくて誰よりも強かった父が勇者に討たれてから今日まで5年。勇者に復讐するためだけに生きて、生きた。そんな私の唯一の生きる目的も、勇者の死という現実をもって終わりを迎えた。勇者は討たれた。魔族でも魔物でもなく、一緒に戦ってきた仲間たちによって。そう、人間の手で勇者は殺されたのだ。人類のために戦ったとされる勇者の墓はない。だから私はまるでゴミのように打ち捨てられた勇者を見たとき、信じられなかった。薄暗い瞳は私をジッと見つめていて、私はそんな彼の瞳をただ見つめていた。悲しそうな顔だった。その瞳に映る私も同じ目をしていた。だから、私は彼を父の墓の横に埋めて弔った。父の遺骨も遺品も持ち去られて何もなかったのが、とても悲しかったけれど。幼い時に貰った髪留めを代わりに埋めたその横に、勇者を埋めた。
彼も私も父親も、大きな時代の流れに翻弄されただけで。きっと、誰も悪くない。そう、思ってしまった。心にストンと落ちてしまった瞬間、私の生きる意味は終わった。世界はどうやら私の命が欲しいらしい。あちこちに貼られた手配書には笑ってしまうほどの大金が提示されていて。だから私は見込みのある子にそのお金をあげることにした。長い抑留期間の劣悪な環境で、私の目は見えなくなった。代わりに一層人の心を感じることができるようになった。人の心には怒りと悲しみしかなくて。鎖に繋がれて台を上って行った先にいた大勢の人たちも悲しみに満ちていた。そう、だから私は。哀れに思う。父と勇者が討たれたこの世界には悲しみしかなかった。首にあてられた刃の感触も、静かな沈黙も。一層激しさを増す雨も私には関係ない。何をするにも、もう遅すぎて。私にできることはもうなにもない。だから祈ろう。この世界の安寧とそれ以上に悲しみが収まることを。
激痛と一瞬の浮遊感。黒く消えていく意識のなかで最後に映ったのは。父と母の幸せそうな顔。もし来世があるのなら、もう一度父と母の元に生まれたい。心からそう思う。
【公開処刑に関して皇室広報官による広報一部抜粋】
神聖歴534年水の月、魔王の娘レイの公開処刑が第2皇子により厳粛に執り行われる。かの者は人類の大恩人である勇者の殺害並びに第1皇子と第3皇子をも殺害。交戦した冒険者一人も犠牲となった。拘束した第2皇子の功績がなければ、人類が大きな被害を受けていたのは疑いようもない。かの者の死刑の執行で魔王の血族は絶えた。これからの人類の未来は明るく、希望に満ちたものとなるだろう。無念に散っていった勇者や王族たちのためにも、我々は残りの魔族を追撃し、殲滅しなければならない。我々の勝利は近い。
物語はやっぱりハッピーエンドが良いです。バッドエンドは、心が痛い。皆さんはどうでしょうか。
さて、感傷はここまでにして。途中まで読んでくださった方も、最後まで読んでくださった方もありがとうございました!昨日上げた文章に感想してくださった方も本当にありがとうございます。感想もすぐに返させていただきますので。もう少々お待ちください。
書いてると、やっぱりなろうで長編書いてる方はやっぱり凄いなぁと感じます。私もあの方たちほどの文才が少しでもあれば...苦笑。まあ、地道に頑張ります。
もしよければ感想・ご意見、こここうしたほうがいいよーってご指摘もよろしくお願いします。いつもありがたく拝見しています。ぜひ忌憚ない意見をお聞かせください!笑。