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17話『ピエレッタとレッタさん』





「よう! 初めまして、ピエレッタちゃん。お元気してた?ってのはちょいと違うかな」


《こんにちは、わたしの中の人。大丈夫よ、わたしは天国で幸せにしているわ》



 オレは呼び出した霊魂相手に、笑顔を作って話しかける。

 目の前に居る青白い半透明なオレ──っていうかピエレッタは、とてもオレが浮かべられそうにない優しい笑みでオレにそう返事をした。

 スキルポイントを15使って得たのは、[ガミジンの加護]。

 これは一度だけ死人を降霊して会話することができる使い切りの加護だった。

 そいつを使用してオレは、元の体の持ち主であるピエレッタを呼び出し、お話をすることにした。

 深夜の部屋なので囁くような声だけどな。


「あたら若いのに死んじまってご愁傷様だったな。ところで望んだわけじゃないんだけどよ、オレっちがあんたの体に入っちまった。

 正直、人様の体だってのに好き勝手にしちまってるんだが……何かご意見があるなら、今のうちに聞いておこうかと思ってな」


 貴重なポイントを消費してでも死人と会話することにしたのは、この体の持ち主と一度会話しておく必要があると思ったからだ。

 だってそうだろ? 自分の死後に体が他人に使われるなんてな。予め病院に検体として申し込んでて刻まれたならまだしも、別人が乗っ取るなんて気味が悪いと思っているんじゃあねえかって思ってたわけだ。

 別にオレが望んで憑依しちまったわけじゃないから、オレが悪いってわけじゃないんだけどよ。

 少なくとも、スカート丈は長くして過ごしてくれとか、ヒッピーと付き合うのは止めてくれとかそういう願い事なら叶えてやろうと思うさ。

 気持ちが悪くて今すぐ死んで出ていって欲しいとまで言われたら、まあ暫くのことだから諦めなって説得するがな。オレだって死にたいわけじゃないし、被害者みたいなもんだ。


「どうよ。未練とか不満とか要望はあるかい? ピエレッタ。悲しかったろう?」

《そんなことないわ、ピエレッタ。わたしが死んだのは運命だもの。仕方ないことだわ。それに、天国にはお父さんもお母さんもいて、とても幸せなの》


 そう告げるピエレッタの顔には陰りは無く、確かに幸せに感じているように思えた。

 カイムに聞いた限りじゃこの世界だと死ねば地獄か天国行き。ただし永遠にそこに居るのではなく、責め苦を食らうか平穏に癒されるかしてあの世で一生を終えたら魂が真っ白になって生まれ変わってくるんだとか。

 時々このピエレッタみたいに降霊術で地上に戻ってくるやつも居るらしいけどな。


「そうかい。オヤジさんとお袋さんも居るとはな。寂しくもねえか」


 ま、少なくとも平穏にあの世にいるって知れただけでもオレの心はスッキリするわけだ。可哀想にモチを食って孤独死した少女だもんな。気になっていたんだ。


《うん。わたし、生きていた頃はずっと寂しくて、声もよく出なくて、沢山泣いていたわ》


 確かにJFKの話では、殆どピエレッタは喋らない子供だったらしい。両親が死んだショックがあったんだろうな。だけど心まで閉ざしたわけじゃなく、いつでも悲しんでいたけどそれも伝えられなかったのか。

 なんというか、不憫だな。オレが近くに住んでたら児童相談所にご相談しちまうぞ。


「他に頼れる人は居なかったのか? JFK司祭とか」

《じぇーえふけー? 司祭様は『私が救うのではなく、主に祈って救いを求めなさい』って言ってくださっていたの。だからわたし、毎日お祈りをしていた》

「お祈りねえ」


 そう言えばオレろくすっぽ主にお祈りしてねえわ。会ったことも無い相手だからなあ。

 少し悲しそうな顔をしてピエレッタは言う。


《どうかわたしの寂しさを消してください。沢山お話ができるようにしてください。そうお祈りをしていたらある日おモチを喉に詰まらせて……》

「ゆっくりと、スープなんかと一緒に食わねえと」


 お祈りとモチ食って死ぬの関連性がゼロすぎて悲しすぎるだろ。


《でもその時に天使様がお迎えに来てくれたの》

「天使様?」

《うん。天使カイム様。わたし、ずっとカイム様にお祈りしていたの。カイム様は言葉の天使で、人だけじゃなくて動物とも草花とも川や土とだってお話ができる方だから、カイム様のご加護があれば……ってずっと》


 なんだ、カイムのやつ。レッタちゃんがファンだったのか。


《それで、天国に連れて行ってくれるまでの間に沢山カイム様とお話ができて、わたし嬉しかった。カイム様から、すまないけれど死後の体を借りたいって話も聞いていたし、わたしも頷いたの。天使様なのにずっとカイム様は申し訳なさそうにしていて……》


 そっちの交渉もカイム任せか……神働けよ神。


《わたしの方は何も心配いらないわ、ピエレッタ。あなたはあなたとして、好きに生きて》

「そうかい? ちょいとばかりオレってば礼儀知らずでお喋りな上に空気読まない方だからな、好き勝手にやったらピエレッタちゃんの評判も悪くなるかもしれねえけどよ」

《いいの。これからはあなたがピエレッタ。わたしのことは気にしないで。大丈夫よ、両親と一緒にあなたが幸せになるように祈っているわ》

「まったく。いい子ちゃんだな。生きてりゃディズニーランドにでも連れて行きたかったぐらいだぜ。そちらこそあの世でご両親と幸せにな」 

 

 どうやら、ピエレッタちゃんは天国で幸せらしいな。それが何よりだ。

 そしてオレが新たなピエレッタとして認められたわけだ。まあそうだな。清く貧しく美しくとはいかねえが、聖地でアーメングッバイする目的も含めて好きにやらせてもらうとするか。


「ありがとよ。元気そうな姿が見れてよかった。じゃあな」

《あ、そうだ。もしよければピエレッタ。カイム様の事をお願い》

「カイムの事を?」

《なんだか、とても申し訳なさそうだったから……あとカイム様に、ありがとうございました、会えて良かったですって伝えて。後はピエレッタが、沢山お話をしてあげてね》

「わかったよ。あいつとはオレお前(・・・・)の仲なんだ。精々仲良くやるさ」


 まったく、女の子にまで心配されやがってこの中間管理職め。オレは手元のウンともスンとも言わない鏡に視線を落とす。

 そして目的を果たしてガミジンの加護は消え、ピエレッタの魂は天に登っていった。部屋の中だったから空は見えねえけど、オレはハンカチを振って見送った。

 スマホを操作してカイムを呼び出す。


「ようカイム。終わったぜ」

『そうか』

「お前さんも話せば良かったのに。レッタちゃんはお前のこと大ファンだったみたいだぜ」

『……その必要は無い』


 どこか暗い声音だった。こいつ、さては気まずいんだな?

 ああそうだろうよ。上司からの命令だろうと、死んじまった少女に「お前の体に別の魂を入れる」なんて伝えたり、ぶっこんだ魂に「特に理由はないがこれからこの体で生きろ」なんて指示出したりするなんて正直嫌だろ。 

 神様が直接やりたがらねえわけだ。別に説明もしないでやるって方法もあったはずだけど、わざわざオレの話にも延々と付き合ってるあたり。


「お前は良い奴なんだけどよ、貧乏クジ引くタイプだな」

『余計なお世話だ。それより、貴重なスキルポイントを使った価値はあったのか』

「あったとも。オレがピエレッタってことが改めて受け入れられた感じだ。もうピエール田村なんて呼ぶんじゃねーぞ」

『誰が呼んだんだそんな名前……』


 ま、とにかくアイデンティティの確率ってのは思うより大事なもんだと思うぜ。

 生まれ変わったと思いつつオレの精神は前世のアメリカ系奈良県民であるマッチョハンサムナイスガイな田村さんに依存してたからな。

 しかしMHNGマッチョハンサムナイスガイの田村さんはもう日本で死んじまったんだ。家族に見送られてな。

 だから、ピエレッタはピエレッタとして生きねえとな。この性格は何度転生しようが治りそうもねえけど。 

 それに前のピエレッタちゃんに遠慮した行動もやらないで良いわけだ。何か遠慮してたか?って言われると困るが、とにかくオレはオレの責任で生きて、そしてもしかしたら死ぬだろうよ。熊に食われたりして。

 未来なんてどうなるかわからないもんさ。だけど、大事な知人に借りた高級車を転がしているような気分からは開放されたと思うぜ。


「これで少なくとも夢見は良くなるだろうよ。毎晩ピエレッタがゾンビになって襲い掛かってくる夢を見てたからな、オレ」

『意外に繊細か』

「毎回ぶっ倒すのも罪悪感がな。毎回武器が違うんだけど昨日はデイジークリケットで血の煙にしちまった。あのメンインブラック1で出てきた強力デリンジャーで」

『魘されているのか爽快ゾンビ退治なのか』

「でもな、ピエレッタも悪いんだよ。ナチスの軍服着たゾンビ宇宙人になったりするから」


 そんなことをカイムと話して、それから暫くして灯りを消して眠ることにした。


 やっぱりその日から悪夢は見なくなった事を考えると、ちゃんと話し合って良かったと思うぜ。うん。



「カイム……ピエレッタが……お前に会えて良かったってさ……ぐう」

『……そうか。だが……』



 半分眠りながら伝えた言葉に、カイムがなんと言ったかは聞き取れなかった。





 *****




 さて、嬉しい報告がやってきた。

 この前の熊退治で熊からオヤツみたいにガブガブ噛まれてたけど、オレのびっくり治癒パワーで一命をとりとめた兵士が居たんだが、そいつが結婚することになったわけだ。

 「この賦役が終わったらおれ結婚するんだ……」と周りに吹聴していたらしい。うーん生きて帰れて良かったね。

 相手は同じ村の農家の娘。何の変哲もない結婚ではあるけど、死にかけたことで何となく特別感が出たらしく、盛大に祝われることになった。

 日付は11月11日。聖マルタンの記念日だ。同時にその年の農作業を終えて、冬がやってくる境目である収穫祭も行われる。


 そして何より、ようやくオレが結婚の秘跡を使う機会が訪れたってわけだ。


 聖マルタン記念日は夜に篝火を炊いて大宴会が開かれるので、昼間のうちに結婚式が執り行わられた。

 場所は教会の戸口先。大勢が集まり、オレが仰々しい格好をして皆の前に立っている。

 いつもの地味な薄黒い修道服ではなく、アルバという長いチェニックにダルマティカとかいう上着を羽織り、ストラっていう変な帯を下げて、マニプルスとかいう……なんだこれ。手に引っ掛ける布? よくわからん。脱いだら一発で忘れそうな名前の制服を着ていた。

 とにかく司祭サマの代理として結婚式をやるんだからと着せられた助祭だかの服だった。

 オレみたいな小娘がいきなり助祭だのの格好をして仕事をするのは煙たがられると思いきや、聖乙女な上にそのうち旅に出るんだからと今のうちにやっとけやっとけとばかりに、嬉々と進めてきた。着方のわからん服は凄い渋った顔をしたルシ公が着せてきたけどな。


「ファー……なんでこいつが……」

「仕方ねえだろ。結婚のアレやらないといつまでも聖術レベル上がらねえんだから」

「そーんなこと知らんファー。それに、聖術レベルなんて上がっても良いこと無いファー」

「……なんで?」

「教えなーい。でも雑魚レッタがレベル上がって調子乗るのがムカつくー」

「うっせえなあ。一応儀式でやるだけまともだろ。なんならお前にも婚礼(マリッジ)かけてやろうか」

「……誰と?」

「ディビッドくんと鳩どっちがいい?」

「どっちもお断りファー!!」


 完全装備をしたオレの隣でグチグチ言ってるルシ公とやり取りをしていると、新郎新婦が現れやがった。

 新郎のラザフォードは恐らく晴れ着な毛織物の一張羅を身に纏い、赤く染めた亜麻のチュニックを肩に巻いて、花冠を頭に巻いてやってきた。中々ステキな衣装じゃない。

 新婦であるルーシーも華やかなリネンのドレスを身に纏い、普段はカチーフの中に纏めてる長い髪の毛を腰まで伸ばして、顔を薄いヴェールで隠しつつも華やかな笑顔を浮かべてやってきた。

 

「日頃はひたすら地味ーな格好なんだが、やっぱ結婚式となるとバッチリ決めてるなあ」

『余程貧しい農民でなければ、あのような親から子に伝えられる豪華な一張羅を持っているのが普通だった』

「そんでまた結婚して子に伝えられていくわけか。いい話だな──ん? 一着しか無かったら長男長女にしか渡せなくね?」

『つまり……結婚をまともに出来るのは長男ぐらいだ』

「ワオ」

『農民が持つ土地の権利を持つのが長男だからな。次男と結婚したところで相手の旨味はほぼ無いようなものだ。次男以下は村に魔物が来た際に命を掛けて試練に立ち向かう役目になったり、都市部に夢を抱いて出ていったりする』


 日本でもちょいと昔までは農家の次男三男ってのは扱いが悪かったりしたらしいから、世界各国似たり寄ったりか。

 ともあれ新郎新婦が父母と友人を連れ、先頭には楽師のミッキマーが結婚式に相応しい明るくも厳かな音楽を竪琴で鳴らしつつ教会の前に集まり、位置につく。

 こんな時もミッキマーが出て来るわけだ。音楽が得意な種族の上に音楽の才能を得るアムドゥスキアスの加護まで持ってるから、一生音楽だけで食うに困らねえんだろうな。

 ちらっと鑑定してみたらかなりレベルは高く、34もあったぜミッキマー。弓技もレベル7まで覚えてたぜミッキマー。ステータスは敏捷以外低いけど。案外に魔物とかとこれまで戦ってきて苦労したのかもしれない。


 おっと! いつの間にかオレの目の前に二人が並び、コチラに注目が集まっている。

 咳払いをするとあたりが静まり、オレは誓いの言葉を二人に投げかける。ええと、確か文面は……しまった。うろ覚えだチクショウ。


「ラザフォードさん。あなたはルーシーを妻とし、神の導きによって夫婦になろうとしています。汝、健やかなるときも、病めるときも、富めるときも、貧しきときも──彼女を永遠に愛することを誓い、そしてその愛を生涯貫くと約束しますか?」

「約束します」


 あれ? 新郎と新婦って同じ文面でいいんだっけ? アレンジした方がいいんだっけ? ええい、昔に見た映画の誓いの言葉が浮かんでくるからとりあえずそれで行くか。


「ルーシーさん。あなたはラザフォードを夫とし、神の導きによって夫婦になろうとしています。汝はいつも優しく夫にハグをしてやり──強い忍耐力を持って、共に人生を愛すると誓い、言葉が必要な場合は話し、そうでない場合は沈黙し──その温かな心に一生住むと約束しますか?」

「はい……約束します」


 朗々と告げる。うん。どうやらギャラリーの反応も悪くない。ほうら親御さん涙ぐんでるじゃないの。

 よかったなあ。結婚ってのはいつの時代のどの国だろうが良いもんだ。それが好き合った同士なら尚更さ。オレも年か、少しばっかり涙ぐみそうだぜ。

 

「主と司祭によって与えられた権限により、今日ふたりを夫婦と認め──ここに祝福致します。[婚礼(マリッジ)]の聖なるかな──ハッピーになりなよ?」


 覚えていた定型句と共に聖術を発動させると、二人がライトアップされたように僅かに光輝き、聖術によって祝福をされた。

 単に認めるだけではなく、男女二人を多少病気に強くし、子供が元気に生まれるようになる効果があるらしい。ちなみに同性とか近親者とかだと発動不可らしい。

 二人は感激して抱き合い、集まった皆が麦粒などを投げて大いに祝福し盛り上がった。

 そして光の中で新郎は鉄の指輪を新婦の左手薬指につけて、二人は夫婦になった。


「チェストオオオオオオオ!!」

「そういう目をしたッッ!!」


 突然の叫びと同時に何故か集まっていた男二人がクロスカウンターで拳を重ねて血反吐を吐いてぶっ倒れた。

 オレも驚いてカイムに確認を取る。


「なに!? なんなのよ!?」

『立会人だな。お前の世界でも中世の頃結婚式の立会人は、二人が交わした誓いの言葉を忘れないように指輪交換の後で殴り合う習慣があった。痛みと傷を思い出す度に誓いも確かに思い出せる』

「もっと他に方法は無いのかよ……」


 なんだそのバイオレンスな結婚式。

 そんな理由だと治癒させるわけにもいかねーか。


 その後、集まった皆を教会に入れて特別なミサ……まあ披露宴だな。それをした。

 新郎新婦に聖別されたパンを与えるんだが……よし! さっきの婚礼で聖術レベルアップしたオレは[聖体(プロスフォラ)]の秘跡を使えるようになり、ワインとパンを聖別可能になっていた。

 ついでに参加者にも振る舞ったが、やっぱりパン旨くなってるってこれ。去年のワインも雑味が減ってる。凄い。便利。


 それから先祖の墓に連れていき報告をして、後はお祭り騒ぎだ。

 穀物の滓やらおが屑が花びら代わりに撒かれて、たっぷりの葡萄酒とパンが出される。オレは片っ端から聖別してやったぜ!

 お祭りになると領主たちもやってくる。肉やらワインやらを追加で持ってきてくれた。彼らも結婚を祝っているようだ。


『農民が結婚する場合、村の全員と領主も祝福するのは常識だった。ただし結婚の際に領主に税を支払わないといけないが、その税よりも領主が宴で提供する食事や贈り物の方が高額だから無いも同然なところが多い』

「そうなのか。よし! 今日はお祭りだしな! オレもいっちょ、羽目を外すか!」

『羽目は外すな。お前はなんというか……ガードが緩すぎる』

「ガード?」


 よくわからんが。心の壁的なものか? 確かにオレってば初対面でも馴れ馴れしく接する方だけどさ。

 結婚式からシームレスで聖マルタン記念日こと、収穫祭だ! ガチョウのローストが村人全員食えるぐらいに出されて、オレが祝福したパンとワインを腹いっぱい食べる。

 豪華な服を着ていることも忘れて酒を飲んだ。


「ロックなミュージックを頼むぜミッキー!」

「ハハッ! 任せて!」


 ミッキマーと肩を組んで歌を歌い、


「ういー! 飲んでるかルシ公!」

「なんで絡んでくるシファー! セクハラか!」


 ルシ公に絡んで柔道技を仕掛け、

 

「ホワイトスネークカモン!」

「シャー」

「ホワイトピジョンカモン!」

「……」

「あの、お肉いい感じに焼けたんで」

「くるっぽー」


 ディビットくんを操ったり、鳩を焼肉で懐柔したりして芸を見せた。


「いくぜ! オレの演奏を聞け! ジプシーキングスのメドレーで!」


 ミッキマーの竪琴をパクって演奏を始めたり、


「おいおいフォードくんよ、たかが的当てゲームでそんなに緊張するなよ。ほらお姉さんがまた後ろから手伝ってやるから」

「オパァーが背中にぃー!」


 余興で的当てを始めたフォードを後ろから弓の持ち手を取って指導したらなんか騒がれた。


「俺も指導してほしいであります!」

「オイどんも!」

「儂も!」

「ミーも!」

「なんだよ多いな……よし、ミッキマー。代わりに指導してやれよ」

「ハハッ! もォちろんだよォ」

「違う。そうじゃない……!」


 そんなこんなで、大騒ぎの楽しい祭りだった。

 宴もたけなわ。オレは篝火の近くでワインを飲みながら、一息ついて呟く。


「やれやれ。体を受け渡されたはいいけど、本当ならピエレッタともこうして遊びたかったところだぜ」

『もう気にしないのではなかったか?』

「後ろめたくないのと気にしないは別さ。それになんなら」


 と、カップをもう一つ取り出してテーブルに置いたスマホの前に差し出した。


「カイムとも飲みたかったところなんだがな」

『……気にするな。こっちで飲んでいる』

「マジかよ。業務中に? ヒュウ」

『いいだろう。たまには。天使ザガンが作ったワインが手に入ったのだから』

「美味しいの?」

『旨いが……加護で一樽手に入るからといって無駄遣いしようとするなよ』

「ちぇっ」


 まあとにかく、オレは何となくカイムとも飲んでいる気になって、楽しくその日を終えたのだった。









 今日の懺悔

村人「シスターピエレッタとシスタールシなんとかが二人共結婚式用ドレスを着て、いがみ合い睨み合って険悪なまま結婚式でお互いに不本意の愛を誓って半分キレたような表情でレズキスする妄想で至高りました」

司祭「ギルティ。[塩化]」

村人「──」

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