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第6話 とってもエロくてかわいらしいですね

 昼のリープの町は活気付いていて、店の軒下で色とりどりの果物を売っていたり、露店にいろんな種類のきれいなアクセサリーが並んでいたり、行商が牛乳瓶をたくさん積んだリアカーをがらがらと引いたりしている。

 行き交う老若男女はほとんど西洋人風のいでたちをしていた。といっても、もれなく全員が二次元のキャラなんだけれど。


 僕は昨日みたいな全裸マントの変態姿ではなく、今日はちゃんとしたメイド服の姿だ。なので、じろじろ見られるということはあんまりなかった。通行人がたまにちらっと振り返って僕のことを見てくるのは、たぶん僕がかわいくて美しいから? 自意識過剰かもしれないけどね。


 朝ベアトリスが話したように、僕ら一行は町のメインストリートにある、女性ものの下着を売っているお店に入った。


 扉を開けると、そこに付けられている鈴の音がからからと鳴った。


 店内を見渡すと、どこもかしこも下着だらけだ。当然のことだけれど。

 僕も男だし、女性のブラジャーとかパンツとか好きだよ? でもこうやってたくさん並べられているところにくると、ありがたみも薄れるというか、やっぱりかわいい女の子がつけているものってイメージがないとそれはただの布だよね……って、なに僕は気持ち悪いこと考えてるんだろ。


 たぶん、今からこの中のどれかを僕が実際につけないといけないっていう恥ずかしさから気をそらそうとして変なこと考えてるんだと思う。頭の中のもう一人の僕が、普段よりずっと饒舌になってる。


「いらっしゃいませ」

 出迎えてくれたのはソバージュヘアの女性だった。

 眼鏡屋の店員が全員眼鏡を掛けているように、ここの店員さんたちも全員ブラジャーを……って、当たり前じゃん。


「彼女の下着を購入したいのです。今は諸事情があって、きつい下着をつけていますから」

 と、ベアトリスが店員さんに言った。


「それならこちらへどうぞ。お胸の大きさを測りますから」

 店員さんが僕の手を取って、別室に連れていった。


 その部屋で僕は上半身裸になった。つまり、乳房を露出したというわけだ。ブラジャーを外した瞬間、ぼよんと弾けとんだ。

 ううっ、やっぱり恥ずかしい。どうせ女の子の姿でも、もっと小さな胸にしてくれたらよかったのに。


「あら、痕がついちゃってますね。さぞきつかったでしょう」


「まあ、はい」


 店員さんはメジャーを僕の胸にぐるりと巻いて、胸囲を測っていく。

「でも、これだけ大きなサイズ、うちにあるかしら」


「そんな特別なくらい大きいんですか……」


「そうですね……。ちょっと探してみますから、待っててください」


 僕はおっぱい丸出しにしながら、小部屋に放置された。

 やっぱりこのおっぱい大きいよねえ。二次絵とはいえ、すごく肉感的だ。


 そして、約10分後くらいして、

「合うサイズ、これしかなかったんですが」

 と、店員さんが申し訳なさそうに言った。


 どうして申し訳なさそうだったのかというと、レースで透けてるやつだったからだ。ブラジャーもパンツも透けている。これじゃあ隠せないじゃん。乳首もお股も見えちゃうでしょ。むしろ丸出しよりエロい感じがしてよけいに厄介かもしれない。


「な、何でこんなの置いてあるんですか」

 ここ、そういうグッズ置いてる店なの?


「これは娼婦のためのものです……。すみません、すぐに戻してきます」

 と、店員さんは戻りかけた。


 が――


 ベアトリスとアグネスが小部屋に入ってきた。

「あらあら、とても素敵ですね。ローザにぴったり」


「どこがですか!」


「アグネス、エロかわいい女の子は、エロかわいいものを身に着けないといけないですよね?」


「姫様、私に聞かないでください」


「店員さん、これ購入します」


「ちょっと待ってください。僕の意思は……」


「私はご主人様ですよ? 買って、ローザにつけさせると決めたんですから、従わなければいけませんよ」


「そ、そんなぁ……」


「下着姿を見るのは私たちくらいですから、気にしなくてもいいじゃありませんか、ねえ、アグネス?」


「えっと、まあ、そうですね……」


「ひ、ひどいです」


「それに、それしか合うものがないって言うじゃないですか。それなら選択肢はないはずです」


「もしかして、姫様が店員さんに『これしかない』って言わせたんじゃ……」


「そんなことないですよ。本当にそれしかないみたいですよ」


「ローザ、諦めろ」


「はぁ……」

 僕は大きくため息をついた。


「さあ、つけてみてください。あ、なんなら私が着けて差し上げますよ」


「け、けっこうです」


「遠慮なさらず」

 ベアトリスは僕に透けてる下着の上下を身に着けさせた。


 白のレースの間からピンク色の乳首がうっすらと覗いている。こんなの普段からつけてるとかもう本当に痴女じゃないか。

 もういいかげんにして欲しい。


「とってもエロくってかわいらしいですね」


「ううっ、恥ずかしいんですけど……」


「やっぱり恥ずかしがっているローザを見るのは格別ですね」

 ベアトリスがうきうきした様子で言う。


「ローザ、強く生きろ」

 と、アグネスが言って、僕の肩を叩いた。


 はぁ……。

 これからやっていける自信なんてないんですけど。


 この変態姫君にどうにかして恥ずかしい思いさせられないかな。

 でも、そんなことしたら何十倍になって返ってくるかわかんないね。

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