4・奇跡の後遺症
私は今、服を着ていない。
袋の中にいた時から気付いてはいたが、誘拐された事や自身の身体の変化の方が重要だったからな。
今は自身が裸である事に考えられる余裕がある。
あるが、現状では改善は難しい。
それにしても誘拐された時に誘拐犯がわざわざ、私の服を脱がせたのだろうか。
ご苦労な事だ。
意識のない者の服を脱がすのは難しいと聞いた事があるが、そんな時間があるのならば、その分だけ早く私を誘拐できただろうに。
それだけ余裕があったという事だろうか?
なんと私の家はそこまで、防犯が緩かったのだろうか。
今になって心配になる。
さて、目の前の現実に戻ろう。
家の心配をしても私には解決はできない。
あれだけ静かに、そして騒がしかった部屋には私を含めても両手で数えるほどしか残っていない。
ウデナシとウデナシが抱きついてた者。
最初にクッションと思っていたから呼び名はクッションにしよう。
それと、火傷が目立つ者がピクリとも動かず横たわっている者が1人。
部屋の隅でうずくまり顔もあげない者が1人。
何故か私を凝視して固まっている者が1人。
あれだけ、狭苦しく感じていた部屋が広く感じてしまうほどに少なくなった。
他は、まぁ、簡単に言えば逃げた。
それはもう、私が目を奪われてしまうような方法で。
ある者は肉体が2、3倍に膨れ上がり扉を体当たりで壊して、その勢いのまま階段を駆け上がっていった。
腕が2本一対ではなく、4本2対の大男だ。
ブンブン動いているのは自分の意思で動いているのだろうか?
移植か奇形か…
私の奇跡の力で元の人の姿に戻らない所を見るに治せないものもあるという事か。
あの時の扉が壊れた音は金属がぶつかり合うような音だったが、人間はそこまで身体を鍛えられるのだろうか。
それに、瞬時に肉体を膨張させられるものなのか。
普通の人間には無理な芸当じゃないか?
大抵の者はその者について行くように階段を駆け上がって逃げた。
私も逃げれば良かったのだろうが、今の身体の大きさでは勢いに飲まれて踏みつぶされそうだと判断して階段を駆け上がる集団を避けた。
目が血走るほど、興奮した集団だ。
子供を押し倒したとしても、気付かないだろう。
誘拐されて集団セクハラされて圧殺されるなんて、私は嫌だ。
………裸の幼児体形の女の子を集団で触るなんて恐ろしい集団だな。
見た目も研究か病気か分からないけど人外みたいだからな。
獣の頭や鱗がある者など、身体の一部が別の生き物の特徴を持つ者。
岩や液体など、生物ではありえない特徴を持つ者。
怪我は治せても外見は変わっていない者が多かった。
中にはウデナシのように無くなった一部が新しく生えた者もいたが、人にはないものも生えた者も居た。
下手なパレードよりも迫力がありそうだな。
私の外見も戻らない所を思うに、私の奇跡の力は傷は癒せても遺伝子の病気や移植、薬の効果は消せないようだ。
もしかしたら、私自身にも奇跡の力を使えないかもしれない。
集団を避けた際に部屋の方を見ると、なんの前触れもなく一瞬で消えてしまう者。
青い炎に包まれて消し炭も残らずに燃え尽きる者。
床を砕いて地面を掘り返して逃げ出す者。
様々な方法で逃げ出していた。
奇跡の力を生み出す薬は他の者にも打たれたのだろうか?
普通の人ではまず無理だとしか思えない光景。
効果は違えど、力を得る過程は一緒なのか?
個人差で効果が変わるのか?
ならば、根底にあるものは一緒なのか?
グダグダ考えても仕方がないか。
せめて、私の奇跡の力を検証して効果を確かめるべきか。
「そこの君。
火傷が目立つ君、ヤケドと呼ばせてもらうぞ。
意識があるか、声が聞こえるか分からないが、触らせてもらうぞ。
火傷が治れば御の字と考えてくれ」
「………」
私がヤケドの元に向かおうとするとウデナシと目が合った。
口パクで何かを伝えようとするウデナシ。
そう言えば、傷が治るならば、声帯やらが治って声が出せてもおかしくはない。
長期間、声を出さないと声が出なくなるという話を聞いた事がある。
しかし、呻きや呼吸音、声にならない音は出るらしい。
しかし、それが聞こえない。
………奇跡の力の副作用かどうかは分からないが、どうやら私の方が変になったようだ。
人の声だけが聞こえない症状。
確かに、身体が幼児化したのだ。
身体に異変が起きても不思議ではない。
………コミュニケーションが取りにくいな。
他にも副作用があると考えて良いだろう。
病気の症状が1つだけという事はないからな。
風邪でさえ、熱や咳など複数の症状があるのだから。
さて、私の新しい特徴が分かった。
では、火傷を治せるか試すか。
動いていないが、生きているのか?
死んではないか。