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第3話 リア充へのリベンジ

 アキヒロがようやく退院した。実はそれまでの間にも、いろいろと大変な騒ぎがあったのだが、それはまた別の機会に話すことにしよう。

 アキヒロは入院中に、リア充に対する憎悪の炎を燃やし続け、とくに天羽翔へのリベンジの計画を練り続けていたらしい。また何かバカなことをやらかさなければいいが、と思いながらキャンパスの中を歩いていると、アキヒロがニヤニヤしながらやってきた。

「おい、リア充にやつらに天誅を加えるための新技がついに完成したんだ。今からお披露目してやるから、よく見てろよ」

そういうとアキヒロは後ろ向きに歩き始めた。まだ膝が治っていないのだろうか。足を引きずるような妙な動きだ。これのどこが新技なのだろう。

「どうだ、すごいだろう」

得意そうな顔でアキヒロは言ったが、どこがすごいのか、おれにはさっぱりわからなかった。

「え、何が? 足を引きずってるようだが、まだ膝が痛いのか?」

「わからんのか。情けないやつだなあ。もう一回やってやるから、よく見てろ」

アキヒロはもう一度同じ動きをした。やっぱりただ足を引きずりながら後ろ向きに歩いているだけだ。だが、しばらく見ているうちに、ようやくおれはあることに思い至った。

「ま、まさかそれって、あのマイケル・ジャクソンのムーンウォークの真似じゃないだろうな?」

「なにがまさかだよ。それ以外の何だっていうんだ。どうだ、完璧だろ。ずいぶん練習したんだぜ。入院中もずっとイメージトレーニングしてたんだ。これで敵の真後ろまで気付かれずに接近し、くるっと回転して一瞬のうちに膝カックンをし、そのまま後ろに滑るように逃げ去るんだ。これで相手は真後ろに地面に倒れるというわけさ。どうだ、すげえだろ」

そんなバカげたことを実行する機会が訪れないことを、おれは神に祈った。ところが神はなんと残酷なことか。前方にあの天羽翔の後ろ姿が見えるではないか。

「おお、これこそ神がわれに与えたもうたチャンス。今こそリベンジのときだ」

アキヒロは勢い込んで、足を引きずりながら後ろ向きに歩く自称ムーンウォークで天羽の後ろに近づいていった。ところが足を引きずる音が聞こえたらしく、天羽は後ろを振り向いた。

「おう、アキヒロじゃないか。こんなとこで何やってんだ。もう膝は治ったのか?」

「お、おう、いやちょっとな、まだ膝が痛むんでな、こんな歩き方しかできないんだ。じゃあな」

アキヒロは気まずそうに言い訳して、悔しそうな顔をして戻ってきた。おれはほっと胸をなで下ろした。


「うーむ、今回は策に溺れてしまったのが失敗の原因だった。次はもっと正攻法でいくことにした」

アキヒロはそう言ったが、正攻法とは、いったい何を考えているのだろう。するとなんということか、また天羽翔が前方を歩いているではないか。

「いいか、今度こそリベンジだ」

アキヒロはなにやら白い紙を取り出した。まさか果たし状でも渡して、決闘を申し込むんじゃないだろうな。おれが心配していると、アキヒロは紙をもったまま天羽の後ろに近づいていった。そして紙を持った手で天羽の背中を叩き、「ようっ」と言って前へ通り過ぎた。天羽もアキヒロの方に向かって「よう」と手を挙げて返事をした。

 すると天羽の背中にはさっきの白い紙がくっついている。その紙には「バカ」と大きな文字で書かれていた。おれはそれを見て唖然とした。なんて低次元のイタズラだ。小学生か幼稚園児レベルではないか。天羽はそれに気づかず、「バカ」と書かれた紙を背中に付けたまま、授業のある建物の方へ向かって歩いていった。

 やがてアキヒロは満面の笑顔で戻ってきた。

「どうだ、うまくいっただろ。あのリア充ヤロウ、教室でみんなの笑いものになってるぜ。ざまあみろ、はっはっは。今日は道亭へ行って祝杯だ。さあ行こうぜ」

おれはもう情けなくて涙が出てきた。本当に、はやいとこ彼女をつくって童貞同盟を脱退しなければ、とおれは本気で思い始めていた。


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