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薄命光線  作者: はしもと
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僕の彼女の名前


朝起きてスマホを確認すると、普段使わないフォルダに一通のメールを受信した。小難しい題名が付けられているそれを確認すると「余命宣告」の通知だった。

該当者の余命が残り一日になると、登録者に通知がいくシステムだ。そういえば親戚のおばちゃんが亡くなるときも似たようなものが来たな。誰だろうか。爺ちゃんもそういえばだいぶ歳をとっていたな。

硬い文章が並んだ画面をスクロールしていき、最後の行に記載されている名前を確認した。





「山本亜希」





僕の彼女の名前だった。





***


偶然にも今日は土曜日で、アキとは昼から遊ぶ約束をしていた。本人には通知が行くことはないが、大概は周りの扱いで本人は悟すらしい。アキもきっと家族の反応で気づくだろう。

「今日一時にいつもの公園に待ち合わせでいいのか」

家族と過ごしたいかもしれないという場合も考えてアキに確認の連絡をする。

「うん、いいよー」

……もしかして家族は隠しているのだろうか。こんな文字だけの連絡ではそういう機微を読み取ることが出来ない。アキと会って判断するしかない。



午後一時、駅近くの公園。

五分前に着いたのだが、アキの方が早く着いていた。

いつもと変わらない服装。いつもと変わらない表情。いつもと変わらず困ったように僕に微笑む。本当に何も知らないのかもしれない。



「じゃあ行こうか」

そういうといつもの繁華街に向かって歩きだした。

いつも通り買いたいものもないのに雑貨屋を巡る。一時間程辺りを散歩した。

「疲れたろ?どこかで休むか?」

「んー、じゃあ次にカフェを見つけたらそこに入ってもいい?」

「うん、いいよ」

一休みのために手頃なカフェに入り温かいココアと甘いケーキを食べる。それが僕らのいつものデートだった。今日もいつも通りだった。



日が暮れると急に寒くなる。アキに見られないように今日来ていた通知を確認する。確かにそこには「山本亜希」という名前が載っていた。

「そろそろ帰ろうか……、今日早めに帰ってこいってお母さんに言われちゃったの」

「あ……あぁ、家まで送るよ」

僕の方からアキの手を握った。いつもはアキの方から握ってくれていたから、よく考えると僕の方から手を繋いだのは今日が初めてかもしれない。

「えへへ、嬉しいなぁ」

「なにが?」

「初めてヒロくんから手を繋いでもらえたから……」

「あ、あぁ……なんかごめん」

「なんで謝るの?嬉しいからいいんだよ」

いつもより強く握り返される。




「ほんとはもっと……、ヒロくんと初めてをしたかったなぁ……」

アキは困ったような顔で笑った。そして僕に告げる。




「もう辛いでしょう……?今日で別れよう……」




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