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薄命光線  作者: はしもと
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余命宣告通知


余命宣告通知。

今の時代にはこんなに便利なものがある。体の中に埋め込まれたマイクロチップが感知し、本人以外の事前登録した者に余命一日前の宣告通知がいくのだ。

登録は本人と通知相手のサインと証明書があればすぐに処理される。


大切な人の死に目に会えないということがないように。

ただそれだけの願いがこうして形になってくれたのだ。

悪用する者も確かにいるが、それは言い始めたらキリがない。本来の使用目的とは違う使い方をする者は必ず出てくる。兵器以外でも人を殺すことは出来るのだから。



高校生の僕には付き合って三ヶ月の彼女がいる。奥手な僕はまだ手を繋ぐことが精一杯だった。彼女の名前は山本亜希。僕は彼女のことを「アキ」と呼んでいる。



***



―――アキは優しい。

背は小さい。気弱で、体調もすぐに崩す。困ったように笑う。

動物が好きで、野良猫とはすぐに仲良くなれる。野良猫に笑いかける表情を僕にくれたことはまだない。三ヶ月経っても僕たちの間にはどこか遠慮というものがあった。


「ヒロくん」

困ったような顔でアキが僕の名前を呼ぶ。

山本浩之。それが僕の名前。苗字が同じだからって、血縁関係があるわけではない。

ただの偶然。付き合う前まではお互い苗字呼びだったと思う。

思うというのも、僕たちはただのクラスメイトで、コミュニケーションが得意なわけでもない僕らは禄に話したことがなかったと思う。会話をした記憶も殆どなかった。

だから、アキに告白されたときは驚いた。

なんで僕なのだろうって思った。

付き合った僕らはお互い同じ名前で呼び合うのもおかしいからという理由で、下の名前で呼ぶことに決めた。だからまだ名前を呼ぶことでさえぎこちなさが残る。



「うん?どうした?」

身長差がある彼女は自然と会話をするときは上目遣いになる。

綺麗な目というものがどのようなものかは分からないが、好きな目だったから僕はいちいち緊張して目を逸らしてしまう。悪いとは思っているが、女子に慣れていない僕にはもう少し時間が必要だった。



「このあとどこか遊びに行かない……?」

付き合っている二人なら確認をする必要がないことですら、アキはどこか怯えながら提案する。断られるのが怖いのだろうか。断られたといって、嫌われたわけではないのに。

「ああ、そうだな。どこか行こう」



初めて付き合った僕にだってこの程度のことは分かる。僕たちはきっと長くは続かないのだろう。気が合わないというわけではない。ただ、お互いが遠慮をしてしまっているせいで気疲れするのだ。それは充分な別れの理由となる。

こんな僕といて楽しいのだろうか。もしかしてアキは僕にフラれることを待っているのではないだろうかと、そんなことを考えたこともある。


「幸せ?」と尋ねると「幸せだよ」と返事をするだろう。

「好き?」と尋ねると「好きだよ」と返事するだろう。

だから言葉で尋ねることは意味のないことだと考えていた。人は嘘をつける生き物だと、さすがに十七年も生きていれば知っている。





「手を繋いでもいいかな……?」

恥ずかしそうにアキは僕を求める。手を差し出し、そのまま指を絡ませる。柔らかくて温かかった。僕より一回りも二回りも小さな手だ。強く握ると潰れてしまいそうな、それほど儚い存在だった。

アキと目が合う。照れながらも幸せそうに小さく笑うその姿を見ると、僕も自然と微笑んでしまう。

そんな僕らの日々。


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